パチパチパチパチパチパチ
伊織「ますますのお運び、まことに有難う存じ上げます」
伊織「どうか一席、ほんの1万とちょっとの字数お付き合い願いたいと存じます」
伊織「えー、落語の世界には良く食べ物が出てまいります」
伊織「それこそ今のように食に関して裕福な時代じゃあございません」
伊織「今の人たちには驚かれると思いますがね?」
伊織「昔、それも私共の言う古典落語の時代なんて言うのは江戸から新しいのだと大正、そこいら時分ですよ」
伊織「その時食べていたもの」
伊織「お客様驚きますよ」
伊織「なんとですね、ほっっっっとんどがですね」
伊織「和食」
伊織「…………」
伊織「あまり、驚かれている方がいらっしゃらないようなんですが」
伊織「と、まぁ、当然のように、ハンバーグ、スパゲティ、グラタンなんてぇのは…………」
伊織「え~~、シャリアピンステーキ、子羊のグリル、バーニャカウダなんてもんは」
伊織「すみません、会場のお客様のレベルに合わせておしゃべりさせて頂かないとですな」
伊織「まぁ、無かったわけで、米、味噌汁、野菜、まぁ漬物ですな、それこそ白い米なんて食べられたら上等だったようです」
伊織「明治大正なんてのは少し豪勢になったようですが」
伊織「それでも今と比べたらずいぶんと慎ましい食事だったようです」
伊織「まぁ、昔の話はとりあえずおいておきまして」
伊織「とりわけ、食の中には麺類と言うのがございますな」
伊織「良いですね、麺類、この時期なんて言うと素麺なんかね、ツォルツォルっと進みますよ」
伊織「家の連中もですね、この前、流し素麺なんてのをやりまして」
伊織「若年層だけ集められましてね、御存じかはわかりませんが、亜美、真美、やよい、わたくし、美希、なんて順番で並びまして」
伊織「竹を流れてくる素麺をすすったもんですよ」
伊織「風流なものですが、なかなか難しい物でしてね、こう、割と早いんですよ」
伊織「いや、そりゃあ水流や竹の傾斜かげんだろと言う話もありますが、不慣れなものでしてどうもどうも」
伊織「その点利巧ですね、あの金髪は」
伊織「竹の終着点にですね、麺が無駄にならないように笊が置いてあるんですがね」
伊織「そこにこぼれたのを食べてましたからね」
伊織「一番最初にご馳走様なんて言ってましたよ「お腹いっ杯なの~~」とか言いながらさっさとソファーにゴロンですよ」
伊織「最初はね、なにくそ! とね、流れる麺を必死につかもうとしてましたがね」
伊織「最後はみんな笊を囲んで食べてましたからね」
伊織「かけ流し素麺ですよ、ありゃあ」
伊織「まぁまぁ、麺類と言うのはいつだっておいしいものです」
伊織「話を戻しますと」
伊織「昔の日本にあった麺類と言うのは、蕎麦、うどん、これくらいのものだったそうですな」
伊織「今のように多種多様な麺があったわけじゃあございません」
伊織「蕎麦屋さんってのもあったようですが、話に出てくるような蕎麦屋はちゃんとした店舗と言うのはほとんど出てきません」
伊織「こう今でいう屋台ですな、店主が店ごと引っ張って歩いていたアレです、アレのような物だったらしいです」
伊織「まぁ簡易なものだったらしくてですね、箱に屋根くっつけて屋号の入った行灯ぶら下げ、風鈴がちょんとぶら下げてあったらしいですな」
伊織「お客様も聞き覚えのある言葉だと思いますが、その当時こういった蕎麦屋を【二八蕎麦】と言いまして」
伊織「深夜の街中を聞き触りのある声では支障でますので「そ~~ば~~♪ぅ~~♪そ~~ば~~♪」と言った具合で回ってたようです」
伊織「この「二八」の部分については色々説があるんでございますが」
伊織「おそらくお客様のほとんど、うどん粉、まぁ小麦粉ですな、が2、そば粉が、8、の割合で作られているから二八蕎麦と言う説を信じていらっしゃると思います」
伊織「もう一つ説がございまして」
伊織「その当時この屋台の蕎麦の1杯の勘定、所謂お会計が決まって16文だったらしく」
伊織「そこから2×8の16、解りますか? お客様の中で掛け算がわからない方は後で楽屋の方に来ていただければ」
伊織「家の眼鏡のプロデューサーがそれはもう恐ろしく丁寧に教えてくれますので是非どうぞ」
伊織「まぁその28の16から二八蕎麦と言われた説があるようですな」
伊織「この説はもう真っ向真っ二つに割れておりまして」
伊織「今のきのこたけのこかと言った具合で大舌戦が行われているようです」
伊織「私共の事務所だけで、ですが」
伊織「ところで皆さん、こういった落語で出てくるこの【文】と言う通貨単位、現在のいくらくらいだと思います?」
伊織「庶民がフラッと寄った屋台蕎麦が16文です、私はね、立ち食いソバなんてのはあまり頂かないんですが」
伊織「駅にある、あの立ち食いソバですな、あの感覚と照らし合わせてみるってーとですね」
伊織「おそらく20円いかないかな? くらいの物だったと思いますよ、二八蕎麦一杯で300円くらいのものだったんじゃないかなと」
伊織「まぁまぁ、そんな二八蕎麦を使った話……は有名な「時そば」なんですが」
伊織「勘定のさなかに刻を聞いて勘定ごまかすお馴染みのアレですな」
伊織「それを少し現代風にしたお話をひとつ」
伊織「今回はおしゃべりさせてもらおうかと思っております」
伊織「ある日、麺類の屋台立ち並ぶ地方のイベントに『貴音』と言うたいそうな麺好きな者がおりました」
伊織「イベントの方々を回り、お腹もそこそこに満足、最後の一杯をと見まわしていると一つのラーメン屋に目が行きました」
伊織『とんこつらぁめんですか、良いですね、最後にこの店に……邪魔しますよ』
伊織『へいらっしゃい!!』
伊織『威勢が良いですねぇ、このいべんと一の威勢の良さ、気に入りましたよ、えっと品書きは……』
伊織『すいませんお客さん、家はね、チャーシューとんこつ一本なんでさぁ』
伊織『チャーシューとんこつ一本』
伊織『いえね? こういうイベントでしょ? 普段の店でしたらいくつがバリエーションってのがありますがね、安定した美味さをお届けするため、すみませんが一種類でやらせてもらってますんで』
伊織『良いではないですか、心意気が伝わりますよ、じゃあ一杯お願いしますよ』
伊織『へい! とんこつチャーシューはいります!!』
伊織『時に店主、どうですか? 景気の程は』
伊織『へい、まぁ……お客さんも知っての通り、今この業界は生き馬の目を抜く勢いでしょう? 良いとは言えないですが吹き飛ばされないようなんとかしがみついてますよ』
伊織『そうですね、多種多様ならぁめんが世の中にはありますものね、ですがね店主』
伊織『へい!』
伊織『景気は持ち回りと言います、我慢して、しがみついていればいつか上向きになるものです、飽きずに精進すべきですよ商いは飽きないように、ですからね』
伊織『はは! こりゃあ一本とられた! お客さん流石ですねぇ』
伊織『えっと、ここの屋号は……』
伊織『九州ラーメンとんとんって言います!』
伊織『とんとん、随分とかわいらしい、店主、とんとん拍子にうまく行くと良いですね』
伊織『はは!! お客さんにはかなわねぇな!! へい! とんこつチャーシューお待ち!』
伊織『いや、早い、早いですね店主、嬉しいじゃあないですか』
伊織『らぁめんなんぞ、とは口が裂けても言えませんがね? だとしても時間をかけて作ってほしいモノでもないですよらぁめんって物は』
伊織『こうして少しおしゃべりしているだけでパッと出てくる、なんとも嬉しいじゃあないですか』
伊織『それに、コレ、店主、割りばしですね?』
伊織『いや、昨今エコぶーむ、この世の中洗い箸ではなく割り箸、嬉しいですね、いや、洗い箸は少々苦手でしてね』
伊織『汚いとは言いませんが他人様の食べる顔がどうしても浮かんできてしまう性質でして、いや治さねばならぬ性質ではあるのですが』
伊織『周りの屋台のほとんどがその洗い箸の中、割り箸って言うのはこれはこれは豪儀で嬉しいじゃあないですか』
伊織『それにこの器、店主、正直ね、この催しものの中、ちゃんとしたセトモノの器を出す店はそうあったもんじゃないですよ?』
伊織『ものは器で食わせる、何て言いますがね、いや、もちろん味も期待しておりますよ?』
伊織『ですが、この気配り心配りがありがたいじゃあないですか』
伊織『それに』クンッ
伊織『…………ふぅ~~とんこつのスープは大抵臭みを出すものですが、このスープの香り澄んでてまた良い、食欲をそそりますね』
伊織『わたくし、らぁめんと名の付くものに関しては自信ありですが、こういう香りを出すスープにはなかなかどうして』
伊織『まずは、このスープを……』
伊織『……っ』ズズッ
伊織『……ほぅ、深いとんこつのうまみただ濃いだけではない、深みがありますよ、それにこの純白の色のどうでしょう!』
伊織『とんこつらぁめんの見本と言った感じですね』
伊織『それに、見て下さいこの麺。細打ちのすとれーと麺、店主解ってますねぇ流石ですよ』
伊織『濃いスープには細打ちすとれーと、麺を食べさせると言う、全方面への気配りが感じられるじゃないですか』
伊織『では……』
伊織『……っ』ズズッズズズズッズズッ!!
伊織『…………っぷふぁ』
伊織『極楽はここですか?』
伊織『しっかり芯の通った固ゆで、そうですよ、これこそがとんこつらぁめん、わたくしは「こなおとし」でも良いくらいですからこの歯ごたえは嬉しいですね』
伊織『たまにあるんですよ、スープは合格なのに肝心の麺の選択を間違ってしまう所が、アレは悲しいものですね』
伊織『そこへ来るって言うとこのらぁめんは完璧ですね、非の打ちどころがない』
伊織『それにですね…………見て下さいよこのチャーシューの見事な事』
伊織『余計な心配ですが、コレだけのものを出して採算取れるのか不安になってしまいますよ』
伊織『分厚くって……あむっ……ほふっ、肉の、厚み……あふれ出る肉汁とスープの波……堪りませんね』
伊織『……っっ……っっ』ズズッズズズッッ
伊織『ふぁ……美味しい』
伊織『たまにですね、こう、鶏肉をチャーシューとして名前をつけて出すところがあるんですが』
伊織『チャーシューは焼き豚と書いてのチャーシューがわたくしの信条でして……あむっ……鳥でチャーシューをあまり名乗ってほしくないんですよね』
伊織『それに薬味、たっぷりの紅ショウガに、高菜なんてのは嬉しいじゃあないですか』
伊織『口の中で面白い触感のきくらげも堪りませんね……いつまでも……ズズッ……飽きずに……あむっ』
伊織『……っ……っ…………っっ』ズズッズズズズッ
伊織『ぷふぁ…………あむっ…………』ズズッズズズズッズズッ
伊織『…………』
伊織『ふふぁ…………』
伊織『…………いや、いまだ夢見心地です、一度に食べきってしまいましたよ』
伊織『……今の腹具合じゃあなければもう一杯と行きたいところなんですが、あいにくともう他店で16杯は頂いているので』
伊織『今回はこの1杯で許してもらおうと思います』
伊織『へい! ありがとうございます!!』
伊織『で、この素晴らしいらぁめん、いくらでしょうか?』
伊織『へい! ちょうど1000円でございます!!』
伊織『安いですねぇ、あいやすみません、御釣りを出させるのが嫌な性質なので細かいのしかないんですが、よろしいですか?』
伊織『いや、そりゃもちろん!』
伊織『じゃあ手を出して、全て100円ですのでよく見ててくださいね、行きますよ?』
伊織『1、2、3、4、5、6、7、8……』
伊織『店主、確認なのですが、そういえばお店、何州らぁめん屋でしたか?』
伊織『へぇ、九です』
伊織『10っと、それではご馳走様でした』
伊織『へい!! ありがとうございました!!!!』
伊織「そんな勘定を済ませますと、スッといなくなってしまう」
伊織「さて、そんな一部始終を休憩スペースで見守っていたのが、沖縄娘の響と言うもの」
伊織「面白くないと言った表情でその様子をみておりました」
伊織『何だったんだ? 今の客』
伊織『たかがラーメン1杯食べるのに喋り過ぎだぞ』
伊織『食事はもっとお行儀よく黙って食べるべきだぞ!』
伊織『店主を褒めるために来たのかラーメン食べるために来たのかわからないな』
伊織『いろ~んな事言ってた』
伊織『メニューが少ないのが良い! 心意気が伝わる!』
伊織『沢山メニュー出してる方が頑張ってるんじゃないのか?』
伊織『景気はどうだ? 商いは飽きないだぞ! だって』
伊織『……まぁ、それはちょっと、うん、上手いなって思ったけども、うん』
伊織『屋号が「とんとん」でかわいらしい! とんとん拍子にうまく行くぞ!! って』
伊織『…………まぁ、それも、うん、ちょっと上手いなって思ったけども』
伊織『出てくるのが早い! ラーメンって言うのはパッと出てくるのが良い!』
伊織『そういうのは言わずに目で「あざーす!」ってやるもんだぞ!! わざわざ言う事でも無い!! ……と思うけど』
伊織『割り箸を褒めるのは流石にやり過ぎだぞ~! どこだってそれくらいやってるもんだ!』
伊織『それには飽き足らず器まで褒めて、出来たんだから早く食べればいいのに!!』
伊織『スープは純白で麺は細打ちストレート固湯でで、チャーシューは豚に限る! だなんて』
伊織『当然の事を褒めるのは嫌味ったらしく聞こえるぞ!! まったく!!』
伊織『最後の極めつけは「この素晴らしいラーメンはいくらですか?」だって?』
伊織『外の看板に一品だけ1000円ってのがデカデカと載ってたんだぞ!!』
伊織『なぁんでわざとらしく聞くかな~~??』
伊織『で、会計は一枚1000円札だせば良いのに、わざわざ100円玉で!』
伊織『1、2、3、4、5、6、7、8……』
伊織『それでここで!!』
伊織『店主、そういえばお店、何州らぁめん屋でしたか?』
伊織『なんて聞いてたぞ!!』
伊織『今聞く!? それ今じゃなきゃダメ!!?? 世の中に九州以外の州ある? あ、本州か、いやいや、店主もバカ正直に』
伊織『へぇ、九です!』
伊織『だなんて言っちゃって、それで十って払って行っちゃっ…………ん????』
伊織『…………………………ん?』
伊織『あれ?? んん????』
伊織『何かがおかしいぞ?』
伊織『ちょっと指折り数えてみよ』
伊織『1、2、3、4、5、6、7、8……』
伊織『店主、そういえばお店、何州らぁめん屋でしたか?』
伊織『へぇ、九です!』
伊織『10、とご馳走様でした』
伊織『…………9じゃない?』
伊織『あれ?』
伊織『1、2、3、4、5、6、7、8……』
伊織『店主、そういえばお店、何州らぁめん屋でしたか?』
伊織『へぇ、九です!』
伊織『10、とご馳走様でした』
伊織『あ! これ! 9だぞ!! 900円しか払ってない!!!!』
伊織『はぁ~~…………』
伊織『上手くやったもんだぞ……たぶんコレ、店主かえってから半端な額出てビックリするんじゃないか?』
伊織『すごいなぁ、コレはちょっと尊敬だ』
伊織『……』
伊織『いや……これ、もしかしたら自分にもできるんじゃないか?』
伊織『い、いやいや、100円に困ってるわけじゃ無いけど、後でお金を返しに行くとしても、ちょっとコレはやってみたいぞ』
伊織『えっと、どっか適当なお店は』
伊織「よせばいいのに、この響、貴音のやってみせた芸当を自分でもやってみようなんて気になりまして」
伊織「ゲームセンターで間違って崩しちゃった5000円分の100円玉もあるってわけでいてもたってもいられず駆け込んだ一件の屋台」
伊織『失礼するぞー!!』
伊織『はい、いらっしゃいませ』
伊織『えっと、空いてる?』
伊織『見ての通り』
伊織『あ、自分一人、そっか、あんまり繁盛してないみたいだな』
伊織『全部予約席です』
伊織『効率悪くない!? もっと時間を有効に生かそう!! 一人くらいパパッと作れるでしょ!?』
伊織『まぁ、次の予約のお客様が夜の部なので』
伊織『商売っ気もうちょっと出した方が良いぞ!? でえっと、メニューはっと』
伊織『無いんですよ、家はね、一品だけでやらせてもらってますから』
伊織『お! いいね! そういう店を探してたんだぞ!』
伊織『はい?』
伊織『あ、いやいや、こっちの話、気にしないで』
伊織『じゃあ、お願いするぞ』
伊織『へい、少々お待ちを』
伊織『…………時におやじさん、景気の方はどう?』
伊織『予約席で一杯って言ったでしょ? 好調ですよ』
伊織『いや、この場合店をただ単に遊ばせてるだけな気がするけど……で、でもね? 景気は持ち回りって言うぞ』
伊織『いつか上向きの商売もいつかは下向きになるかもしれない、そういう時こそ飽きずにやるべきだぞ! おやじさん!』
伊織『へぇ、商いは飽きないと言いますからね』
伊織『そう、商いは飽きな……あ、うん、そうだね、その通りだね、うん、あ、知ってた? 結構有名なの? このフレーズ』
伊織『えっと、このお店の名前って? 屋号』
伊織『そこに書いてあるでしょ「おや2」って言うんですよ』
伊織『へぇ「おやつー」って言うのかな? オヤツとかけてるのか? なかなか洒落てるな』
伊織『いいえ、私ね? 二人の親から生まれたんでね? 「おやおや」って呼ぶんですけどね』
伊織『屋号に「おやおや」ってつけちゃう勇気がもう凄まじいと思うし、今の所人類ほとんど全部が二人の親から生まれるもんだと思うぞ?』
伊織『ま、まぁ、お、面白いな、そういう洒落っけがあるの好きだぞ』
伊織『…………』
伊織『おや2でおやおやね、うん』
伊織『…………』
伊織『こうね、名づけのセンスがね、うん』
伊織『…………』
伊織『…………』
伊織『…………』
伊織『…………』
伊織『…………』
伊織『…………』
伊織『まだ?』
伊織『すみませんね、午前の営業は予約がいっぱいだから入れられなかったモノで、鍋の火をつけるところからなので』
伊織『うん、それだったらむしろ午前中休みにしてほしかったかな? 入らなかったから、そうしたら』
伊織『特別ですよ? これだけ遅いのも、全部見れちゃう、下ごしらえから全部』
伊織『その特別感全く要らなかったな~自分実はもうお腹ペコペコなんだけどな~~』
伊織『まぁ、もう少々お待ちを』
伊織『…………』
伊織『…………』
伊織『…………』
伊織『…………』
伊織『…………』
伊織『…………』
伊織『……………………おまちどう様でした』
伊織『ちょっと遅いに過ぎるレベル、って急に来たぞ!?』
伊織『まぁまぁ、自分だけのためだけに作ってくれたって思うと嬉しい物だな♪』
伊織『やっぱりね、こう席に置いてあるのが割り箸って言うのが嬉しいぞ! 自分、どうも人の使ったかもしれない洗い箸は…………ってあれ?』
伊織『あのおやじさん、箸入ってないんだけど?』
伊織『あ、すみません、午前中の仕事無いと思ってたもんで、あっしの菜箸でよろしかったら』
伊織『ああ、これはこれはすみませんって冗談じゃないぞ!! ちゃんとした箸が……あ、洗い箸ね、うん、知ってた知ってた、エコだしな、コッチの方が良いよな』
伊織『お! おやじさん! これは良い器だな!』
伊織『わかります!?』
伊織『もちろんだぞ! ものは器で食わすって言うけどってえ!? この器溶けてない!?』
伊織『アイスクリームのコーン生地で作ってありますので』
伊織『いや!! 器で食わすってそう言う意味じゃないぞ!? 熱っ!! え!? 何!? この速度が要求される食べ物!!??』
伊織『い、いやぁ、このスープのまた純白な事! と言うか……まぁ透き通ってるというか……白湯と言うか…………』
伊織『や、やっぱりね! スープは香りだぞ! …………』スンスンッ
伊織『え””””ん”””””!!!!!!!!』ガクッ
伊織『え!!?? ゴホッ!? え!!?? 何!!?? 臭???? 何この独特臭!!!! 臭いか臭くないのかいまいちわからないけど刺激は強いコレ何!!??』
伊織『ま、まぁね、味、味だぞ! 味が全てなんだから、ラーメンのスープなんてのは』ズズッ
伊織『スッッッッッッパッッッッッッ!!!!!!』ビクンッ!!
伊織『は!!?? 何!? え!? 何これ!!?? え???? 口の中にレモン突っ込まれて頭と顎をゴーンッ!! ってされたようなこの酸っぱさ何!!??』
伊織『え? 嘘だー?』ズズッ
伊織『スッッッッッッパッッッッッッ!!!!!! 本当だった!!!!!! 全然本当だった!!!!!! 酸っぱい!!!!!!』
伊織『水!! 水っ!!!!』ゴクゴクゴクゴク
伊織『ぷふぁー…………』
伊織『い、いやね? 自分ラーメン食べに来たんだから、主役は麺でしょ、やっぱりね、これだけの特徴あるスープだったら、細麺ストレートの固湯でのね』
伊織『…………』スッ
伊織『…………うん、太麺縮れ麺だな! うん! いやいや、固いならばもうこの形でも、やっぱり大事なのツォルッと入る程よい固さだぞ』
伊織『…………』ゾボ……ゾボボ……ゾボボボボ
伊織『…………うん、モッチモチだな、これ、もう、なんか、湯で過ぎとか通りこしてモッチモチしてる、すごい、マロニーよりモッチモチ』
伊織『…………あ! そうそうチャーシュー!! 自分ね!? 焼き豚と書いてチャーシューと読むのに鶏の肉出す店が許せなくてね! その点この店のは~! うん! 鶏ハムだよ! うん、知ってる、自分も良く作るぞ』
伊織『多様化の時代だもんな! ありあり、うん、食べなれた味だぞ! おふくろと言うか自作の味がまさか外で食べられるとは嬉しいね』
伊織『薬味もね、うん、草? 香草かな? うん、独特、凄く独特、うん、ストレートに薬味でびっくりした、まぁ、不味くは無いよ、うん、驚いただけで、うん…………』
伊織『……』ゾボボ……ゾボボボ
伊織『……あむっ』
伊織『……』ゾボ…………
伊織『あ、あーー!! お腹いっぱいだぞ!! おやじさん、あの、お勘定……お願いします……本当、お願いします、はい』
伊織『はい、1000円になります!』
伊織『ふっふっふ……コレが楽しみでここに来たんだぞ……』
伊織『全部100円になっちゃうけどごめんね、手出してもらえる?』
伊織『はい、こうですか?』
伊織『コレは見事な爪の色……逆!! お金貰うのに手の甲出す!!?? 手のひらの方!!!!』
伊織『あい、すいません、こうですか?』
伊織『じゃあ今から置いていくからね、数えるからね?』
伊織『1、2、3、4、5、6、7、8』
伊織『あーおやじさん、この店、何屋さん?』
伊織『へぇ、フォーのお店です』
伊織『ファイブ、シックス、セブン、エイト、ナイ………………うーーーーがーーーーーーーー!!!!!!!!』
伊織「所変われば麺変わる、古典落語「時そば」を現代風にしました「国そば」でございました」
パチパチパチパチパチパチ
何だこれ。
落語でした。
じゅげむに続き有名落語の時そば
「今何時だい?」のフレーズが有名ですが
後半のしくじる方の人の方が面白い落語ですね。
もし、落語全体を知らない人がいたら是非ご覧になって下さい
落語家の演技の部分が凄く見える面白い演目です。
文章として書くのはまだまだ力不足でしたが、楽しく書けました。
見ていただけた方、お粗末様でございました。
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