テレビの中のアイドル「明日も笑って〜会えますように〜♪」
この前のライブ映像が発売する予定らしくって、私は家のリビングで映像チェックをしてる。
ホントは自分の映像だけをチェックすればいいんだけど、ついつい他の仲間の映像も見てしまう。
うん、みんなすごいパフォーマンス。
今見てるのは風花さんのステージ。あぁ、風花さんすごいなぁ、ホントすごい...。
ステージに見惚れていると後ろから声がした。
姉「おー、これってこの前のライブ?」
私はその声にハッとする。あれ!?これって商品になる前のやつだから、見せちゃダメなんじゃ!?
海美「だだだだだだだめだよ!お姉ちゃん!見ちゃダメ!まだ売ってないんだからこれっ!」
お姉ちゃんが画面を見れないようにテレビの前でブンブンと体を動かす。ディーフェンス!ディーフェンス!って感じ!
お姉ちゃんはそんな私を見てケラケラ笑って言った。
姉「まぁまぁ、いーじゃんいーじゃん!ほらほら、あんまり体動かすと女子力が逃げちゃうよ」
海美「逃げないもん!もー!」
仕方がないので、お姉ちゃんにも映像を見せてあげることにした。
姉「はぁ...風花さんってホント綺麗だよね。お嫁さんにしたい...」
映像を見ながらお姉ちゃんが訳のわからないことを言う。
気持ちはわかるけど、お姉ちゃんも風花さんも女の子だよね...?
姉「女子力の塊だよね。あんたとは正反対なんじゃい?」
うっ...お姉ちゃんの言葉がグサッと刺さる。
風花さんの映像を見ながら『いいなーいいなー』って思ってたから。
いつもなら『もー!お姉ちゃんなんでそんなこと言うの!?私だって女子力アップのためにランニングの距離増やしたもん!』なんて反対するんだけど...。
うん、今はなんかまっすぐ心にグサッと刺さった。
海美「うん...そうだよね...反対だ...」
そんな私を見てお姉ちゃんは何かを感じ取ったのか、後ろからギュッと抱きしめてきて髪をワシャワシャしながら明るく言った。
姉「あはははは、でもそんな海美がお姉ちゃんは1番好きだよ」
少し元気になったけど、髪ワシャワシャするとぐちゃぐちゃになっちゃうからやめてよー。
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夜
海美の自室
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最近、なんか変なんだ。
授業を受けてる時に『今頃、お仕事してるのかな?』とか、
お昼ご飯を食べてる時に『今日は何食べたのかなって?』とか、
休み時間にはしゃぐ男子を見て『昔のあの人もあんなだったのかな?』とか、
事あるごとに同じ人の顔が浮かんできちゃう。
その理由、流石の私でもよくわかる。
それは、私たちがいろんな曲で簡単に歌っている気持ち。
私はその気持ち、ふわっとしててあったかいものだと思ってた。
でも、本当はそんなポジティブなものばかりじゃなかった。
他の子と楽しそうに笑ってると心がチクチクして、
忙しくて会えないときは心にポッカリ穴が開いちゃって、
いろんな子の中で私が一番素敵にならなきゃってソワソワして、
初めて、自分の中にそんないやーな気持ちたちが生まれちゃって。
でも、私頑張りたい!この気持ちは誰にも負けないもん!女子力アップして、絶対に一番になる!
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翌朝
海美の家、洗面台
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海美「もー!!!!!なんなのもー!!!!」
気合を入れた翌朝、気合を入れすぎたのか寝坊をしちゃった。
朝起きると窓の外はどよーんとした曇り空。ジトジトした湿気に気持ちが重くなる。
この季節はさらに気持ちが重くなることがある。髪がブワッとしちゃってセットするのに時間がかかるんだ...。
海美「せっかく頑張ろって思ったのに...うぅー!!梅雨なんて大キライ!!!!」
わーって叫んで見たけど、結局どうにもならなくって途中のまま家を飛び出した。
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朝
事務所
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海美「おはよーございます!!」
時間はギリギリ、ダッシュダッシュでなんとか間に合った。
環「うみみ、おはよー!おー今日はなんかふわふわだね!」
環が私の髪を見てはしゃぐ。うー、そこにはあんま触れないで欲しいかなぁ。
ミリP「おー、おはよう。海美」
ドキンと胸が跳ねる。顔がキューっと熱くなる。
思わず頭を両手で隠して、『見ないで』って繰り返す。
ミリP「どうしたそんなに縮こまって...あぁ、なるほど。大丈夫だよ、現場にはきちんとスタイリストさんがいるから」
うぅ、そうじゃない、そうじゃないの。
プロデューサーはどんな顔してるんだろ?呆れてるかなぁ?怒ってるかなぁ?
恥ずかしくて顔が見られないからわかんないよー。
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仕事の後
事務所
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テンションは低かったけど、なんとかお仕事はやりきった。
なんか今日は余計に疲れちゃった。ソファーでぐでーってしていると優しい声がした。
美奈子「海美ちゃん!どうやらお疲れみたいだね!そんなときはカロリーですよ、カロリー!ご飯作ってあげるからちょっと待ってて!!」
ピコン!?と頭の中で音がなる!
そうだ!今朝落ちちゃった女子力を上げる方法はこれだっ!
思いついたら体が動いて、気がついたら頭を下げていた。
海美「美奈子先生!!お料理教えてください!!」
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給湯室
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美奈子「はい、それではお料理教室始めちゃうね。よろしくお願いします」
エプロン姿でおたまを片手に元気よく話す美奈子先生。うん、さすがの女子力だ!
美奈子「男性は肉じゃがって言うけどあれは迷信!油と塩コショウこそ旦那さんのハートを掴むのに大切だよ!カロリーもあげられて一石二鳥!」
美奈子「というわけで唐揚げを作ります」
海美「はい!お願いします!!」
さっさっさっと手際よくお料理を作る美奈子先生。
1つ1つの動きが慣れたダンスの振りみたいに綺麗で思わず見とれてしまう。
美奈子「はい、じゃあここまで海美ちゃんやってみて!」
そう促されて私も料理を始める。
大きく切ったもも肉を袋に入れて、美奈子先生特製調味料を混ぜてモミモミする。
モミモミしているのがなんだか握力を鍛えてるみたいでついつい力を入れてしまっていると、美奈子先生から注意の声が飛ぶ。
美奈子「ちょちょちょ、強くもんじゃうと崩れちゃうから優しくね、優しく」
うー、ついついエクササイズ魂が出ちゃった。反省、反省。
続いて、油の中に鶏肉を入れる。ドボンとお肉を入れると、油が跳ねちゃった。
海美「おわぁ、アッツ!」
美奈子「ダメだよゆっくり入れなきゃ!大丈夫!?氷水作るから待ってて」
海美「大丈夫だよ、ちょっと跳ねただけだから」
美奈子「ダメ!?今は大丈夫でも、だんだん大変になっちゃうから冷やさなきゃ!」
慌てて私の手をとって氷水の中に入れる美奈子先生。
なんだかお母さんみたいだって思っちゃった。
うーん、お母さんは女子力高いのかなぁ?そもそも女子力って何の力なんだろう?
まぁ、なんでもいいか。とりあえず、美奈子先生は素敵だ!
そんなこんなで唐揚げは完成した!って一応完成はしたんだけど、ちょっと揚げすぎたのかパリパリになっちゃってた。
海美「ごめんね…せっかく美奈子先生に教えてもらったのに…」
美奈子先生は何でもなって感じで優しく言葉を返す。
美奈子「ううん、失敗じゃないよ」
そう言って美奈子先生はひとつ唐揚げをつまんで口に入れる。
美奈子「ほは、ほいひひひょ!(ほら、おいしいよ」
ゴクンと飲み込んで美奈子先生はさらに言葉をつづける。
美奈子「それに、料理を続けてたらもっともっと上手くなるよ。エクササイズと一緒!継続は力なりだからね」
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事務所 メインルーム前
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廊下からそーっと部屋の中を覗く。プロデューサーがPCの前でカタカタしているのが見える。
私の手にはお皿に乗った唐揚げ。出来立てが美味しいから早く渡さないとなんだけど、うーん。なかなか勇気が出ない。
美奈子先生に一緒に渡してもらおうかと思ったけど、お願いする前に一方的に断られた。
美奈子「私がお手伝いできるのはそこまで。あとは一人で頑張りなさい!」
美奈子「でも、味方してるわけじゃないからね。私も負けないから!」
美奈子先生には全部お見通しで、でも私のために手を貸してくれた。
うん、やっぱり美奈子先生は素敵だなって思う。
そう思うと私も負けてらんない!ぎゅーんって走りださなきゃ!
部屋の前でこそこそ眺めてるだけじゃ、勝負にもならない!
決意して、私は扉を開けた。
ミリP「おぉ、海美か?お疲れ」
海美「お疲れ様!もうこんな時間だよ、お腹すいてない?」
ドキドキ高鳴る心臓の声が大きくて、なんだかプロ―デューサーの返事もよく聞こえなさそう…お願いだからもう少し静かにしてよね。
私の言葉が変なスイッチになったのか、キリッと仕事をしていたプロデューサーがへにゃっとした顔になって言った。
ミリP「あぁ、そういやお腹すいたなぁ。晩飯でも食いに行くか?」
それはすごくうれしいお誘いなんだけど、それはまた今度お願いね。なんて心の中で思いながら、言葉を返す。
海美「えへへ、お腹すいてると思ったから、唐揚げ作ったんだ!食べてよ!!」
すっとお皿を差し出すと、プロデューサーは驚いた顔をした。
ミリP「これを?海美が?」
信じられないみたいな表情と声。
むー、私のキャラじゃないっていうのは自覚してるけど、そう口に出されるとちょっとショックかな。
頬をぷくーっと膨らませる私に気がついたプロデューサーは笑いながら言った。
ミリP「冗談だよ。ありがとう、いただくよ」
給湯室に移動して晩御飯にする。
唐揚げだけじゃご飯にならないって、美奈子先生が用意してくれたご飯とサラダを二人分机に並べる。
ミリP・海美「「いただきまーす!!」」
へへへ、なんかこういうのすっごくイイね。
なんて照れていると、早速プロデューサーが唐揚げに箸を伸ばす。
私はドキドキしてついついそれをじーっと眺めてしまう。
ミリP「あのさ、海美?」
海美「はっ!はいっ!?」
ミリP「あんまり見られると、その食べにくい・・・」
海美「えっ!そっ!そうだよね!?いやーごめんごめん、料理は自信ないからさ、ちょっと不安になっちゃって」
指摘されるとさらに恥ずかしくなって、早口で取り繕う。
手を振ってあわててると、その隙にプロデューサーは唐揚げを食べてしまっていた。
ミリP「うん、美味しいよ」
へ?不意を突かれた感じになって、キョトンとする。美味しい・・・美味しいって言った?
ミリP「ありがとな、後の仕事もやりきる元気が出るよ」
そう言ってニッコリ笑うプロデューサー。その顔をみると私も嬉しくなって元気になるよ。
ミリP「海美が料理もできるなんてな。新しい魅力発見だ」
私はプロデューサーのその言葉の向こう側に耳をすませる。
多分、魅力って言葉は『アイドルとしての魅力』なんだって思う。
そう考えると、私の走ってるこの道の先はまだまだ長いなぁってちょっとため息をつきたくなる。
でも、私は走るんだもん!たどり着きたいから!
もぐもぐご飯を食べるプロデューサーの顔を眺めながら、そうやって私は一人で心の中で宣言をする。
今はまだ口に出しては言えないけどね
大スキ!
E N D
恋愛ロードランナー
瞳の中のシリウス
オレンジの空の下
終わりだよ~(○・▽・○)
うみみの日ということで、衝動的に書いてしまいました。読んでくださった方ありがとうございます。
乙です
>>1
高坂海美(16) Da/Pr
http://i.imgur.com/ihVHjPp.jpg
http://i.imgur.com/CWoUc4t.jpg
>>6
大神環(12) Da/An
http://i.imgur.com/NsXaoYl.jpg
http://i.imgur.com/Jjfr66V.jpg
>>7
佐竹美奈子(18) Da/Pr
http://i.imgur.com/cAz2avv.jpg
http://i.imgur.com/7L2eJqW.jpg
>>16
恋愛ロードランナー
http://youtu.be/6XsfV2JHp2w?t=103
瞳の中のシリウス
http://www.youtube.com/watch?v=gYqafFcSHkU
オレンジの空の下
http://www.youtube.com/watch?v=U-97bxAmHEE
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