※地の文多め
―プロデューサー、享年〇〇―
理解したくない現実が私を襲う。
私が今いるのはプロデューサーさんの家で、いつもなら嬉しいはずなのにちっともそんな気分じゃない。
喪服姿で立ち尽くす私の目の前にあるプロデューサーさんの遺影はなにも語りかけてくれない。私は見下ろすようにプロデューサーさんの入った棺を覗いた。
棺の中で眠るプロデューサーさんの顔はとても綺麗で、死んでいるとは思えないほど整ってた。
「まだ若かったのにねえ」
「お仕事が大変だったんじゃない?1人で沢山のアイドルの世話してたって話だし」
私の後ろからは葬式に参加している他の人たちの話し声が聞こえてきた。
業界人で、それなりの人脈も持っていたのでかなりの数の人が葬式に参加していた。
そうだ、あんなに元気だったのに。
「いや、それが過労死とかじゃないんだってさ」
じゃあなんで……。
「なんでもさ―」
「食べ過ぎだってさ」
「うん。なんだったかな、非アルコー性―まあそこはいいや、とりあえずギャル〇根かってくらいの量をほぼ毎日食べてたとか」
「毎日!?そりゃあ死んでもおかしくないぞ」
後ろの会話を聞いている私の心臓はバクバクと周りに聞こえそうなくらい脈打っている。
食べ過ぎ―。
私のせいだ。
そう思ってしまうと体の震えが止まらなくなる。
胸の鼓動はどんどん速くなって顔から血の気が引いていくのがわかる。
きっと私は今誰が見てもアイドル失格な顔をしていると思う。
「私が…プロデューサーさんを…?」
もう1度プロデューサーさんが眠る棺を覗く。
さっきと変わらない姿でプロデューサーさんは寝ていて、死という現実を改めて突きつけられる。
私が、私が作った料理を、私が食べさせていたせいでプロデューサーさんは―。
「ごめ…んなさい…」
今更誰に謝ってるんだろう。
物言わぬ棺の前で私は謝罪の言葉を重ねていた。
「え…?」
気がつくとあたりは黒一色に染まっていて私とプロデューサーさんの入った棺以外はなにもなかもが無くなっていた。
『お前のせいだ…』
たくさんの声が私の頭の中に直接響くように聞こえる。
少しづつ聞こえる声が大きくなってくる。
まるで後ろから―。
「……!」
振り返るとそこには私と同じ喪服姿のみんなが―765プロのみんなが立っていた。
『お前のせいだ』
「いや…」
『お前のせいだ』
「許して…」
『お前のせいだ』
堪らず私はみんなの前にへたり込んでしまう。
『お前のせいだ』
『お前のせいだ』
『お前のせいだ』
耳を塞いでもみんなの声が聞こえる。
私に罪を刻みつけるようにその声は止まらない。
『お前のせいだ』
「やめて…」
『お前のせいだ』
「おねがい…」
みんなの責め立てる声に耐えきれず私は意識を手放しそうになる。薄れる意識の中でも声は頭に響く。
『お前のせいだ』
『お前のせいだ』
『お前のせいだ』
『お前の―』
―ピピピピピピピピ!!!
目覚まし時計のアラームがけたたましく鳴り響く。
けれど私にはスイッチを切るだけの気力もありません。
その日の私―佐竹美奈子の朝は控えめに言っても最悪なものでした。
続きは明日か明後日にでも
関係ないですけどPヘッドの遺影ってシュールですね
爆死したPの数だけPヘッドの遺影が
ほんとだ......、一旦乙です
今日続きあげます
続き楽しみにしてます
>>9
佐竹美奈子(18) Da/Pr
http://i.imgur.com/uXPwvOk.jpg
http://i.imgur.com/H8nI7OX.jpg
私はいつもどおり765プロに顔を出した。
たとえ悪い夢を見たとしても仕事は仕事、がんばらないと。
あまり気分が乗らないのも事実ですけどね。
「おはよう美奈子」
「プロデューサーさん!おはようございます」
事務所に入るといつもどおりプロデューサーさんが出迎えてくれた
そんな普段なら当たり前なことに心の中で安心して、プロデューサーさんに挨拶する。
今日の予定は午後からのレッスンだけで仕事も特にないので午前中は事務所で過ごす。
大体事務所には誰かがいるから飽きることもありませんからね。
事務所でみんなとおしゃべりしたり、私たちの載ってる雑誌を見ながら時間を潰して丁度お昼ぐらいの時間になった頃、思い出したかのようにプロデューサーさんが言った。
そういえばほぼ毎日プロデューサーさんのために作っていた差し入れの料理を今日は作ってきてなかった。
まあ、あんな夢を見て作ってこれるわけないですよね。
「最近は毎日美奈子の差し入れで昼は済ませるのが当たり前になってたからな。昼飯持ってきてないんだよなあ」
それって少なからずプロデューサーさんも期待してくれてたってことでいいのかな。
でもそれでプロデューサーさんがいなくなってしまったら…。
「すいません…。今日寝坊しちゃって作ってこれなかったんです」
もちろん嘘だ。私の目覚まし時計は今日もいつも通りの時間に音を鳴らして私を起こしてくれている。
それでも、私のせいでプロデューサーさんが死んだ夢を見たからなんて言えるはずもなく、ドラマやお芝居の台詞で言ったことがあるようなありきたりな嘘で誤魔化す以外のことはできなかった。
「私が好きでやってるんですから問題ないですよっ♪明日はしっかりと作って来ますので楽しみにしててくださいね!」
「ああ、楽しみにしてるよ」
「ではでは、明日は今日の分も合わせてた~っぷり作ってきますから!楽しみにしていてくださいね!」
「ははは…。お手柔らかにな…。とりあえず今日はしたで食べてくるか。音無さん、たるき亭に行ってきます」
「あ、プロデューサーさん。じゃあご一緒してもいいですか?私も丁度お腹が空いてきたので」
「ええどうぞ。美奈子、悪いけど留守番まかせていいか?」
「はい!いってらっしゃいプロデューサーさん」
小鳥さんと二人きりでお昼ということに胸の奥に少しだけ、ほんとに少しだけイラッとした感情が芽生えたのは今は置いておく。
「じゃあ小鳥さんにも作ってきましょうか?栄養満点ですよ!」
出張佐竹厨房の味はいつでもどこでも誰にでも保証します。
「本当!じゃあお願いしちゃおうかしら」
「音無さん。体重とんでもないことになりますけど大丈夫ですか?」
「うっ…」
ぱあっと輝いていた小鳥さんの表情は一変、現実に叩き落とされたような表情になった。
「ピヨヨ…。そうよ、我慢よ小鳥。女は我慢も大事なんだから。ごめんなさい美奈子ちゃん。気持ちだけ受けとるわ…」
小鳥さんももっと食べても大丈夫だと思うんですけどね。
「いってらっしゃいプロデューサーさん」
「美奈子は確か午後からレッスンだったよな。食べてきたら車出すから留守番ついでに準備しててくれ」
「ありがとうございます!」
今日のレッスンは私だけだから移動の間はプロデューサーさんと二人きりということになる。わっほ~い。
プロデューサーさんと小鳥さんがお昼を食べに行って事務所のなかは私一人になった。
誰もいないことをいいことに私はドサッとソファーにだらしなく座る。少し疲れがでた。
プロデューサーさんと話している間中、あの夢が私の脳裏をよぎって離れなかった。
上手く普段通り装えたかな。
2人ともなにも言ってこなかったから大丈夫だと思うけど。
正直料理の話をしている間は棺の中で眠るプロデューサーさんやあのみんなの責める声までが聞こえてきて、心にトゲが刺さったみたいにチクチクとした。
でもプロデューサーさんと話していて、少しづつそのトゲが抜かれていくように、頭からあの事が消えていくようにチクチクとした痛みが和らいでいったのも事実。
夢は夢。現実は現実。
明日には忘れて元どおり。そう自分に言い聞かせてこの件はもう終わりにしよう。
「……///」
今私しかいないこの事務所で誰のお腹の音が鳴るんだろう。私しかいない。
気を抜いたらお腹が鳴ったみたいだ。
誰もいないから良かったものの、プロデューサーさんにでも聞かれていたら恥ずかしすぎる。
さて、私もお昼にしよっ……と。
ここで私は今更自分のお昼ご飯もないことに気づく。
事務所の冷蔵庫に食材残ってたかな…やっぱり残ってない。
いまからたるき亭にいくのもあんまり仕方なく今日のお昼は近くのコンビニで済ませることにする。
とりあえず万が一誰か来た時のためにコンビニに言ったことと留守番を伝える置き手紙を書いておく。
コンビニまでの距離はそう遠くはないから誰も来ないと思うけど
私は急いでビルの階段を駆け下りた。
口調とか大丈夫ですかねえ
レッスンはいつもと特に変わらなかったので割愛。
レッスンが終わる頃を見計らって来てくれたプロデューサーさんと一緒に今度は私の家へ向かう。今日は直帰なので事務所には戻らない。
車の中は行きと同じく他愛もない話に花を咲かせていた。
その頃にはあの夢のこともすっかり忘れていてこの時間がずっと続けばいいのにとさえ思っていた。
「はい!明日は差し入れ楽しみにしていてくださいね!」
「お手柔らかにな」
家のまえでプロデューサーさんと別れる。
一応レッスンスタジオでも浴びてきたけどもう1度家でシャワーを浴びて、浴室から上がると、私のスマホにメールが届いていた。
プロデューサーさんからだった。
『ごめん、午後に決まって帰り話忘れ
てたけど料理番組のゲスト出演が決まったぞ。詳しいことは明日事務所で話すから』
プロデューサーさんがお仕事、それも料理番組のを取ってきてくれたみたい。
わっほ~い。明日の差し入れはいつもより気合を入れて作らないとね。
プロデューサーさんのためにたっぷり作らないと。
食材とにらめっこしながら何を作るか決め、お気に入りのエプロンを身につけ私は台所に立つ。
今日はプロデューサーさんと二人きりで帰れたり新しいお仕事が決まったりであの悪夢が霞むくらいいい1日だった。
だからきっといつもよりいい料理ができると思ってた。
だけどいざ台所に立つと、胸のあたりがドクンッと跳ね上がる感じがした。
「……」
なんで私はこんなに緊張しているんだろう。心臓のバクバクが止まらない。
「大丈夫。大丈夫」
材料を切るために包丁を持ったその時―。
『お前のせいだ!』
「…ッ!」
みんなの責め立てる声がフラッシュバックし、私は思わず手に持った包丁を落としてしまった。
幸いなことに、落としたのがまな板の上だったので怪我はなかった。
そう自分に言い聞かせてバクバクと音を立てる心臓を気にせずもう1度包丁を持った。
『――』
「いやぁ!」
今度は棺に入って何も言わなくなったプロデューサーさんが頭の中を駆け巡り、私はしゃがみこんでしまった。
両肩を掴む手から伝わるように、全身が震え始める。
―料理ができない。
それは私が絶望するには十分すぎた。
もし明日、私の料理を食べたプロデューサーさんが死んでしまったら?
考えれば考えるほど、最悪の光景が浮かび上がってくる。
胸の鼓動はどんどん速くなって私の心は恐怖と絶望で埋め尽くされた。
目を閉じてもプロデューサーさんの遺体が見えるし、耳を塞いでもみんなの責め立てる声がなり止むことはなく、どこまでも私を追いかけてくるようだ。
―怖い、怖い、怖い
途端にこの部屋にいること自体に恐怖を覚えはじめた私は逃げるように部屋から出ていき、気がつくと私は自分のベッドに倒れていた。
思ったより長引きそう
こりゃ重症だな・・・
待ってる人がいたらの話ですけど纏まっ手かける時間がないのでもう少しお待ちください
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