どうした、琴葉?
ランドセル!これでわたしもしょうがくせいだよ!
おおーよく似合ってるな
おにいちゃんとおなじがっこうにいくのたのしみ!やすみじかんとか、おにいちゃんのところにいっていい?
別に構わないけど、その前にクラスで友達を作ってからな
うん!わかった!
兄さん?
はい、私も中学生になったのでいつまでもお兄ちゃんと呼ぶのは子供っぽいかなと思って…変、ですか?
いや、変じゃないよ、いきなり変わったから驚いただけ
それなら良かったです
そうか中学生か…よし、それなら中学に上がった記念にアイスでも食べに行くか!
良いの!?ありがとうお兄ちゃん!…あっ
はは、兄さん呼びが定着するのはまだまだ先っぽいな
うう…恥ずかしい…
ありがとうございます、兄さん!
琴葉なら大丈夫だって分かってたけど、やっぱり少し心配だったからな
私は自信ありました、だって兄さんが家庭教師をしてくれましたから
ん、それなら良かったよ…ところでなんで琴葉は俺の通ってた高校にしたんだ?琴葉ならもっと上の高校だって目指せたと思うんだけど
そ、それはその!…ひ、秘密です!
そ、そうか
お、どうした琴葉?随分上機嫌だな
ふふ、実は今日友達に言われたんです、この前の休みの日に一緒にいた人は彼氏?って
私達、カップルみたいに見えたそうです♪
カップルねえ…傍から見たらそう見える可能性もあるんだな
まあでも琴葉は俺にとっては妹みたいなものだからな、ちゃんとただの近所の知り合いだって訂正しておいたほうが良いぞ
…そうですね
あれ?琴葉、何で怒ってるんだ?琴葉?おーい
おめでとうございます兄さん!どんなお仕事なんですか?
芸能事務所でさ、アイドルのプロデューサーをやるんだ
プロデューサー…アイドルは男性ですか?
いや、女性アイドルだそうだ
…女性アイドルのプロデューサー、ですか…その、事務所の名前は何というんですか?
765プロって言うらしい
765プロ…聞いたこと無いですね
まだまだ新しい事務所みたいでさ
なるほど…765プロ …後で調べないと
ま、就職も決まったし、いつまでも親の世話になるわけにも行かないからそろそろ独立かな
一応住む場所の目星もつけてあるし、大学卒業したら家を出るつもりなんだ
その…兄さん、ここから通勤するのは不可能なんでしょうか
出来なくはないよ、たださっきも言った通りいつまでも親の世話になるわけにはいかないからさ
一人で生活出来るようにしておかないと
…でも兄さん、料理できないじゃないですか
帰りにスーパーで総菜でも買うさ
駄目です、兄さんはそういうところは手を抜きますから栄養が偏って倒れちゃいます!
私が…
うん?
私がご飯を作りに行きます!
え?
それなら私も心配しなくて済みますし、兄さんが倒れることもありませんよね?
いやいや…いやいやいや、今みたいに家が近いわけでも無いのに駄目だそんなことは
でも…
琴葉の気持ちは嬉しい、だけど無理して俺のために何かしようなんて思わなくて良い
…
たまには帰ってくるからさ、その時に何か作って貰うよ
…わかり、ました
ずっと一緒にいた、幼なじみの女の子の夢
もっとも少し前までは毎日のように顔を合わせていたのだが
P「準備するか」
伸びをして身支度を整える
一人暮らしにも慣れてきた
仕事も大変だが楽しいし、色んな経験を積むことが出来る
この仕事にして良かった
P「…よし、行くか」
扉を開け、俺は仕事へ向かった
事務所に入り、挨拶をする
「おはようございます、プロデューサーさん」
P「おはようございます、音無さん」
俺に挨拶を返してくれたのは事務員の音無小鳥さん
仕事が出来る人で、俺やアイドル達のサポートをしてくれている
たまにその日のデータを丸々消してしまい泣いたりしているが、バックアップは取らないそうだ
已然バックアップを取らない理由を聞いてみたのだが
小鳥「…女も人生もバックアップは取れないから…」
と返された
P「おかげさまで、毎日が充実してますよ」
小鳥「ふふ、それは良いことですね」
「あらプロデューサー、こっちだったのね」
声が聞こえたからか、小さな人が事務所の奥から出て来た
P「おはようございます、このみさん」
このみ「おはようプロデューサー」
この人は馬場このみさん、765プロのアイドルの一人だ
見た目はかなり小柄で、まるで小学生のようだがなんと成人しており、俺よりも年上だそうだ
世界は広いなぁ…
P「ははは、まさかぁ」
このみ「はあ…まあ良いけど」
P「ところでこのみさん、俺を探していたみたいですけど」
このみ「おっと忘れるところだったわ」
このみさんが思い出したように手を叩く
このみ「シアターの方につい最近アイドルになるのが決まった子が来てるから、顔合わせをして欲しいのよ」
P「新人の子ですね、わかりました」
このみ「もしかしたらプロデュースすることになるかもしれないから、よろしくね」
P「はい」
その途中
「あ、プロデューサーじゃん、おはよー」
P「ん?ああ、おはよう恵美」
俺に声をかけてきたのは所恵美
俺が765プロに入社した翌日に入ってきた子だ
アイドルとプロデューサーという立場の違いはあれど俺と恵美は同期のようなもので、割と良く話したりしている
そして俺がプロデュースしているアイドルでもある
P「ああ、シアターの応接室だよ」
恵美「応接室?ってことは新人の子でも来たの?」
P「ああ」
恵美「へー…興味あるし、アタシも着いていって良い?」
P「悪いがそれは駄目だ」
恵美「ちぇー」
P「後で皆の前で紹介するから楽しみにしててくれよ」
恵美「オッケー、期待してるかんねー」
P「さて…と」
気を取り直して
P「…恵美、隠れてもバレてるからな」
後ろを向かず声をかけた
恵美「あっちゃーバレてたかー…なんでわかったの?」
P「俺がプロデューサーだからかな」
恵美「いや意味分かんないから」
P「ほらほら、いったいった」
恵美「はーい」
…
応接室の扉をノックする
「はい」
P「…ん?」
何やら聞き覚えのある声がしたような…
扉を開き、中に入る
P「初めまして、君が…なっ!?」
応接室の中にいたのは
琴葉「兄さん…」
予想もしていなかった人物だった
3作連動大変そうだけど、応援してるよ
琴葉「それは…もちろん、アイドルになるためです」
P「…」
琴葉が僅かに目を逸らす
琴葉は昔から嘘をついている時や何かを隠している時は目を逸らす癖がある
だから俺には内容はともかく、琴葉が何かを隠しているのがわかる
琴葉「私は別に…な、何も隠してなんかいません」
再び琴葉が目を逸らす
…こっちは嘘をついてるときの反応だな
P「嘘を吐かなくて良い、何年お前を見てきたと思ってるんだ?」
P「嘘を吐いてまでアイドルになりたい理由はなんだ」
琴葉「…兄さんは、私がアイドルになるのは嫌ですか?」
P「嫌とかそういう問題じゃない、琴葉は確かに頭が良くて優秀な子だ」
琴葉「に、兄さん、そんなに誉めなくても」
俺の言葉に何故か赤くなる琴葉
琴葉「あれは…その…」
中学の時、琴葉は皆のためにと張り切って生徒会長、クラス委員を兼任し、自分一人で抱え込んだ結果体調を崩して倒れたことがあった
P「あの時の出来事がある以上俺はアイドルと学業を兼任出来るとは思えないし、させたくない」
P「もしアイドル活動中や学校で倒れてしまったら琴葉のおじさんとおばさんに顔向け出来ない」
少しきつい言い方になってしまったが、琴葉なら分かってくれるはずだ
…しかし琴葉を見ると顔を伏せていて反応がない
…まずい、もしかして泣かせたか?
琴葉「…それなら」
P「ん?」
琴葉「それなら兄さんが、私が倒れないようにしっかり見ていてくれませんか!?」
琴葉「兄さんが見ていてくれるなら兄さんも安心ですし、私も兄さんのそばにいられ…ごほん、アイドル活動と学業の兼任も出来るはずです!」
確かに俺がしっかり見ていれば琴葉に無理をさせることは無いかも知れない
しかし…
P「だけど家からここまで通うのか?結構距離があるけど」
琴葉「それについては大丈夫です、私、引っ越しましたから」
P「引っ越し?どこに?というか一人暮らしなのか?」
琴葉「はい、一人暮らしです、住所は…秘密です」
P「ふむ…」
琴葉が一人暮らしか…何だかんだで無防備なところがあるから割と心配ではあるのだが…
P「おじさんとおばさんは何て?」
琴葉「私のこと、応援してくれています、ちゃんと手に入れてきなさいって」
P「ふむ…」
意外だな、おじさんとおばさんはそういうことに興味が無いと思っていたんだが
P「…わかった」
琴葉「それじゃあ…」
P「琴葉が決めて、両親の承諾が取れてるなら俺が反対するわけにはいかない」
P「これからよろしく頼むよ、琴葉」
琴葉「はい!兄さん!」
P「職場で兄さんは駄目だぞ」
琴葉「あ、ごめんなさい…えっと…プ、プロデューサー」
P「ん、それで良い」
公私はきっちり分けないとな
P「アイドルとプライベートで会うって好ましく無いんだが…まあ、良いよ」
琴葉「やった!ありがとうございます、プロデューサー!」
琴葉が笑顔を見せる
その笑顔は高校生になっても変わらず、昔俺をお兄ちゃんお兄ちゃんと追い回していた頃と同じ可愛らしい笑顔だった
P「…変わらないな、琴葉は」
琴葉「?何か言いましたか?」
P「ん、琴葉がどのくらいでプロデューサー呼びに慣れるかなーって」
P「確かお兄ちゃんから兄さんに変えたときも結構かかったよなー」
琴葉「も、もう!今はあの時とは違いますから、意地悪しないでください!」
P「ははは、悪い悪い」
P「それじゃあみんなに紹介するから、着いてきてくれ」
琴葉「はい」
不定期更新の予定
ちゃんと手に入れてきなさいってもちろんアイドルとしての栄光だよね?(すっとぼけ
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