ですが、今日はわたしにとっては『特別な朝』になります
今日はわたしの15回目の誕生日、この村では15になると一人旅立つことが許されるという掟があるのです
昔から『外の世界』への憧れが強かったわたし、今日という日をどれだけ待ち望んだことでしょう
旅の支度は一ヶ月前からしてあります、村のみなさんに挨拶して早く『外の世界』へ……
あら……
「貴方は?」
光差す窓辺には小さな妖精さん、何でも妖精さん曰くわたしはいつか多くの人たちを導く『選ばれし者』だそう
生まれて15年 わたしは平凡極まりない毎日を過ごしてきて、自分が特別な何かだと思ったことなどありませんが……
何にせよ旅立ちの日に妖精さんに会うなんて、わたしはとても幸福者ですね
妖精さんはわたしの旅を祝福してくれました、妖精さんの加護があるわたしの旅は、きっと素晴らしいものとなるのでしょう
そう、この時は思っていたのです……
旅立つ前、わたしが『外の世界』に期待していたもの、輝かしき世界、素晴らしき笑顔、溢れんばかりの愛
それは何処を探してもありませんでした
『外の世界』でわたしが見たものは人の憎しみ、怒り、そして乾いた大地に只飲み込まれるいくつもの涙……
そこの人々は毎日隣の強国の兵士に虐げられ、辛い日々を送っていました
村の人たちは誰もが優しく、良い方ばかりです
この村に生まれた、ただそれだけで何故ここまで辛い目に合わなければならないのでしょうか? わたしには理解することが出来ませんでした
妖精さんはわたしのことを『選ばれし者』と言ってくれました
本当にわたしが『選ばれし者』なら……
周辺の町村を巡り、そこに僅かに眠る反乱の種火に火を付けました
それは一つではまさに風前の灯、小さいものだったでしょう しかし数が集まることによりそれは大きな"うねり"となり、その大火は大国をも飲み込むのです
わたしは革命の旗手となり、見事自由を勝ち取ることに成功したのです
この時わたしは思いました、わたしは『選ばれし者』だったのだ と
成し遂げた後わたしが見たものは、かつての強国が没落し虐げられる様でした
革命の灯はその役目を終えた後も消えること無く、人々の鬱憤、憎しみを糧により強く大きく燃え上がるのでした
かつて弱者だったはずの村人はその優しさを"痛み"を忘れ、笑顔のまま狂気を降り下ろします
またある日、わたしはこう呼ばれました『魔王』と
再び放浪の旅を始めたわたしは考えました、どうしてこうなってしまったのか と
わたしは間違っていなかったはずです、人々の切なる願いを聞き、『選ばれし者』としての使命を果たした…… そのはずなのに……
わたしがあの時したことは人々の『怒り』を煽っただけ、だからあのような悲劇が起きてしまったのです
愛無き世界に平和などあり得ません、愛こそが優しさであり幸せであり、唯一の真理だったのです
旅の途中、愛の無い者たちをごまんと見てきました
彼らに愛が無いのならわたしが愛を与えてあげたらいい
そう、なんて簡単だったのでしょう 世界を愛で満たすのなら、わたしが世界を愛せば良かったのです
わたしは再び立ち上がりました、世界を愛すため、そのために世界を統べる『魔王』となるために……
ここにはかつて『覇王』と呼ばれた方の覇道を導いた聖剣が眠るとあります
薄暗く、時折襲いかかる罠をくぐり抜け、わたしは最深部へと辿り着きました
そこには噂通り一本の剣が刺さっていました、おそらく『選ばれし者』のみがあの剣を引き抜くことが出来るのでしょう
わたしは『選ばれし者』なのです 迷い無く剣の元へと踏み出そうとすると…… 懐かしき方と再会しました
「あら…… 妖精さん」
「旅は順調かい?」
「ええ、妖精さんの加護がありましたからこうして無事、旅を続けていられてますよ~♪」
「ふふ、旅立ちの日とは見違えるようだ」
「そうですか~?」
「はい、この剣を手にした者は『覇王』となれるのでしょう?」
「君は知らないのかい? 『覇王』のその後を」
「もちろん、知っていますよ この世界の常識ですから~♪」
何でも覇王さんは妖精さんの祖と共にこの世界を創りましたが、この剣を取った瞬間に狂王と化し世界を自分ただ一人のものにしようとしたそう
妖精さんの祖は覇王さんのもとを去り、人々と手を取り協力して覇王と戦ったそう
世界の『全て』を敵に回したとしても抵抗を続ける覇王さんでしたが、流石に敵わず覇王さんは全身を焼かれ、五体を引き裂かれ滅んだそうです
そして滅びる直前、覇王さんは世界を『割った』 だからこの世界は今でも統一されず、小競り合いを続けている と
「はい、それしか道は無いですから~」
「その結果世界の『全て』を敵に回して身を引き裂かれようとも?」
「わたしは覇王さんのようになりませんよ~ 世界を『愛』で支配するつもりですから~♪」
「本気で言っているのかい?」
「当然ですよ~ わたしは『選ばれし者』ですから、この『愛』をもって世界中を『愛』で包み込むつもりです~」
「ふふっなんて傲慢だ、まるで『魔王』だ」
「よく言われます~」
いざ引き抜くとなると少し躊躇する気持ちもあります、もしあのお伽噺のようにわたしが狂王となってしまい、愛するもの達に憎しみの牙を向けられたら……
それでも、わたしはやらなければならないのです この世界に残された希望はわたししか居ないのですから
「はぁっ!」
剣はあっさりと抜け、わたしはそれを天へと掲げました
その時、薄暗い洞窟に天から一筋の光が差し、わたしを照らしました
「ど、どうしたんだい?」
「『声』が…… 聞こえて……」
「『声』……?」
なるほど…… そうだったのですね……
「消えなさい」
軽い…… まるでわたしの為に用意されたような剣
それを振るい、妖精さんを退けます
「と、朋花…… ?」
「今すぐわたしの目の前から消えなさい、そうしないのなら……」
「貴方のその美しい羽根をもぎ取り、可憐な四肢を引き裂き、骸を燃やし尽くします」
「…… どうやら本当に狂ってしまったようだね、『魔王』朋花」
「『狂った』……?」
「『目が覚めた』のですよ♪」
わたしは剣を突き、妖精さんの喉を貫きました
やはり、わたしはならなければならないようです 『覇王』…… いいえ『魔王』に
『選ばれし者』の宿命として……
今週のミリラジを聞いてパッと思いついて書きました。来週までには完結つもりです~。
そういえば朋花も15歳だったね
一旦乙です
>>18
魔王役 天空橋朋花(15) Vo
http://i.imgur.com/cM5XoLi.jpg
http://i.imgur.com/Zoo2awy.jpg
本編はコミカルな雰囲気だったけど期待してます
http://i.imgur.com/RTYfOVb.jpg
一旦乙
痩せ細った地には『奇跡』という名の『愛』を与え
紛争の起きる地には『救済』という名の『愛』を与え
順調に世界をわたしの手の中に収めていきました
もちろん、わたしは狂王になどなりません、誰一人傷付けず 全ての子豚ちゃんに平等に『愛』を与えます
骸の上にふんぞり返るつもりはありません、わたしがなりたいのは全てを統べる『魔王』なのですから~♪
全ての子豚ちゃん達を平等に扱い、恒常的な平和を与え、計画的に富を増やしていくのです
これでわたしの計画の第一段階は達成…… そう思われたのですが……
「せ、聖母さま! ご報告があります!」
「亜利沙さん…… わたしのことは聖母では無く『魔王』と呼ぶように…… 何度言わせれば気がすむのですか?」
「は、はい! 申し訳ありません!」
わたしは『魔王』 今のわたしが聖母なんて、ありえないですから……
「はい、北の地にて寒冷の影響により今期の作物の収穫量は前期比70%ほどと見込まれ、このままでは……」
「それなら本国の貯蓄を少し分け与えなさい」
「で、ですが他の地にも支援をしていますし、そんなことをすればありさ達の食べるものが……」
「亜利沙さん……」
「は、はい……」
「ええ…… 何処も資源の不足は問題となっていて……」
「亜利沙さんなら1日くらい何も食べなくても大丈夫ですよね?」
「えっ……」
「亜利沙さん、お返事は?」
「は、はいっ!」
『魔王』となり思い知ったこと、この世界には生きとし生ける全ての子豚ちゃんを満たすだけの富が存在していないということです
全ての興業が理想通りに進んでやっと十分に満たされる程度、もちろん現実はそう上手く行きません
貧富の差を無くそうとして、全ての人が貧しくなるなど なんて滑稽なのでしょう
「はい…… そちらも難航していまして…… みんな日々の労働で疲れきっています ……あまり言いたくはないですが、中には魔王さまへの不満を溢す者も居るとか居ないとか……」
「そうですか……」
「あ、ありさも正直止めた方がいいと思います! 『各地に眠っている過去の文献を集め帝都に送る』なんて…… 意味がわからないです!」
「亜利沙さん……」
「貴女はいつからわたしに命令出来るくらい偉くなったのですか?」
「ひっ……」
「は、はい……」
「それでは引き続きお仕事を続けてください♪」
「わ、わかりましたー! ありさ、全身全霊をもって魔王朋花さまに忠誠を誓いますー!」
「ありがとうございます~」
わたしは子豚ちゃんに圧政を強いるために『魔王』となったのでしょうか…… ?
このままではあの妖精さんに言われた通り、いつか愛する子豚ちゃん達にわたしは殺されてしまうかもしれません
そうなる前に使命を果たさなければ……
わたしの起こす『奇跡』は所詮一時凌ぎ、少し時間が立てばすぐに元に戻ってしまいます
それにわたしだって人の身、救えるのはせいぜい手の届くごく狭い範囲です
ですがわたしは救うことを諦めません、苦しんでいる子豚ちゃんは数え切れないほど居るのですから
「えーと、次の報告です 南の外れの地にて『勇者』を名乗る少女が現れたとのことです」
ついに来ましたか……
「恐らく反乱分子かと思われますので、まだ規模の小さい内に天空騎士団を派遣させ鎮圧を」
「必要ありません」
「えっ?」
「高々小娘一人に天空騎士団を派遣させる必要などありません、彼らには引き続き難民への支援をお願いします」
「は、はぁ……」
『勇者』ですか…… 『魔王』であるわたしに差し向けるには丁度いい駒、とでも言いましょうか?
ねぇ、妖精さん?
「と、朋花さま! 勇者ちゃん抹殺の命を! このままではこの城に辿り着くのも時間の問題で……」
「ふふふ、勇者さんが自らやってくるなんて探す手間が省けて楽じゃないですか」
「朋花さまぁ~……」
「ふふふ」
こんな台詞実に魔王らしいですね、魔王になったからには一度は言ってみたかったんですよ♪
「そうですか~ それなら明日はお城の人たちは全員お休み、ということにしましょう」
「へっ?」
「聞こえませんでしたか? 亜利沙さんも明日はゆっくり休んで大丈夫だと言ってるんですよ~」
「な、何考えてるんですかー! そんなことをしてもし万が一にでも朋花ちゃんに何かあったら……」
「ま、お、うさま ですよ?」
「ひぃっ!」
「そ、そんなことは……」
「だったら黙って休みなさい ちょうど皆さん疲れも貯まってきた頃でしょうし、ちょうどいいじゃないでしょう?」
「…… わかりました、お城の人たちにはそう伝えておきます」
「だけど、ありさは明日もここへ来ます ……お城大好きですから」
「……」
「魔王天空橋朋花! 各地で圧政に苦しむ人々の声は聞いてきました! 私が貴女を討って支配を終わらせてみせます!」
亜利沙さんの報告に違わず、勇者さんはわたしと同じくらいの年の女の子で、隣には妖精さんが一人居て
その手には明らかに異質な気を発する剣が握られていました、やはりあの剣は間違いなく……
「下がってなさい、亜利沙さん」
「えーっ!?」
「貴女の力では勇者さんに…… いいえ『あの剣』には敵いませんよ」
腰の剣をゆっくりと引き抜く、この剣を戦いに使うのも久しぶりですね~
「くっ!」
「来ます! 百合子さん!」
「さぁ行きますよ勇者さん、貴女の力がどれだけ矮小なものか…… 思い知らせてあげます!」
「ぐっ……」
「あらあら~ もう限界ですか~?」
「そんな…… 百合子さんの剣も魔法も一切通じないなんて……」
「と、朋花さま…… 強すぎデス……」
ものの数分で勇者さんは立つのもやっと、自慢の剣を杖代わりにする無様を晒しています
「ま、まだまだ!」
そう言うと勇者さんはアメを口に含み、何やら呪文の詠唱を始めました まぁ唱えきる前に潰してもいいのですが……
「亜利沙さん、伏せなさい」
「避けてて! 星梨花ちゃん! はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
勇者さんが剣を降り下ろすと凄まじい烈風が巻き起こり、そこかしこを巻き込み小さな台風となりました
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」
あらあら、仲間であるはずの妖精さんにまで被害が及んでいるじゃないですか、何て未完成で不完全な技なんでしょう
「はぁっ!」
剣に魔力を込め、一閃
「嘘…… 私の最強呪文が……」
さっきまでの烈風は何処へやら、部屋は静けさを取り戻しました
剣を構え、一突き それで終わりです
「がっ……」
防御魔法のかけられた鎧など紙切れ同然、わたしの突きは寸分の狂い無く勇者さんの急所を突きました
「本当は心臓を貫いて一撃 でも良かったんですけどね~」
「がっ、 げほっ…… あぁ……っ」
「ゆ、百合子さん! 百合子さん!」
地に倒れ伏す勇者さんでしたが、必死に治癒の魔法を自分に掛けているようです どうやら諦めの悪さなら評価してもいいみたいですね
「と、朋花さま……」
「ん、何ですか? 亜利沙さん」
「そ、そのくらいにしてもいいんじゃないかな~ って、勇者ちゃんもきっともう魔王討伐なんて諦めて反省してるでしょうし……」
「ふふっ、何を言っているんですか~?」
「この人間は妖精の息のかかった人間、生かしておいてはいけません、この場で確実に息の根を止めて始末する必要があるんです」
「ど、どうして……」
「朋花ちゃんはあんなにも優しくて…… 聖母のような人だったじゃないですか! 昔は剣を向けてきた敵にだって慈悲を与えていたのに!」
ふふっ、そんなこともありましたね…… でも
「何を言っているんですか? わたしは『魔王』ですよ? 歯向かうものは皆虐殺、それこそが『魔王』なんですよ~♪」
「くっ…… まだヒーリングが間に合わない……」
「ふふ、それが辞世の句ですか それでは…… さようなら~」
「やめてください!」
わたしが勇者さんに迫ろうとすると、彼女のお付きの妖精さんが間に入ってきました
「それ以上百合子さんに乱暴するのなら…… わたしが戦います!」
「ダメだよ! 下がってて星梨花ちゃん!」
「っ…… 黙れっ! 白々しいッ!」
「きゃぁっ!」
「星梨花ちゃん!」
いけない…… つい感情的になってしまいました
「っ! 魔王! どうして貴女はこんな凶行に出たの! 世界を我が物にするだなんて…… まるでお伽噺の覇王と同じです!」
「…… そうですね、何も知らずに死んでいくのは納得いかないでしょうし、貴女にも教えてあげますよ~」
「あのお伽噺の"真実"を……」
2回の更新で終わらせるつもりだったのですけど、ライブ感でどんどん設定が追加されて整合性が取れなくなってきて泣きそうです。
一旦乙です
>>27
四天王役 松田亜利沙(16) Vo
http://i.imgur.com/uEJSLF3.jpg
http://i.imgur.com/61vyZt7.jpg
>>39
勇者役 七尾百合子(15) Vi
http://i.imgur.com/PABrgaq.jpg
http://i.imgur.com/QweMLsF.jpg
妖精役 箱崎星梨花(13) Vo
http://i.imgur.com/GmcHaOj.jpg
http://i.imgur.com/tofxwtC.jpg
「ええ、この世界では誰もが一度は読んだあのお伽噺、覇王さんと妖精さんのお話」
「あれは史実をねじ曲げられた虚構のお話なのです」
「ねじ曲げられたって…… 誰が…… 」
「ふふっ、貴女の側に居る妖精さん達ですよ」
「えっ!?」
「そうですね、何から話しましょうか……」
「今わたしの持つ『覇王の剣』そして貴女の持つ『解放の剣』もまた伝説の剣なのですよ」
「えっ!? つまり伝説の剣は二本…… ?」
「いいえ、三本です 最後の一本はおそらく妖精さん達が所有しているのでしょう」
「貴女のその剣も妖精さんから与えられたのではないですか?」
「確かにそうですけど……」
「覇王さんが統治する前の時代、これらの剣を巡って終わらない争いが起きていたそうです」
「一本あれば国一つ、三本あればこの世の全てを治められると言われていました そしてそれを歴史上初めて三本集めたのが覇王さんなのです」
「そうして覇王さんにより世界は統一され、恒常的な平和が訪れる…… はずでした」
「妖精達が…… ?」
「はい、妖精さん達はかねてからこの剣の力を人間たちには過ぎた力と思っていたようです、下等で愚かな人間が高等で上位な存在である我々より大きな力を持つのは不遜である、と」
「ある時、妖精さん達は覇王さんを謀殺し剣を奪い取りました、そして野心ある人間に剣を与え再びこの世に戦乱をもたらしました」
「さらに妖精さんは当時存在したあらゆる書物を焼き、自分たちの存在を歴史にねじ込んだのです」
「その後も妖精さんは時折歴史に介入し、人間がある日突然強大な力を得て増長する様を楽しんでいたようです 『選ばれし者』などと吹き込んで、ね」
「下等な人間たちを争わせること、妖精さんにとってそれは戯びの一つだったのでしょう」
「この剣を初めて手に取った時、天から覇王さんの『声』が伝わってきたのです」
「それを聞いたわたしは三本の剣を集め今度こそ争いの無い、平和な世界を作ること」
「そして妖精さんの手を免れた当時の文献を集め、真実として公表することで、妖精さんのくだらない戯びを辞めさせることを誓いました」
「わたしが『魔王』を名乗り人間界を支配した、と言えば、妖精さんはそれを面白くないと思って剣を差し向けると思いましたが、予想通りでしたね~」
「結局、貴女の『冒険』は妖精さんの手のひらの上、わたしに剣を献上するためだけのものだったんですよ~」
「そんな……」
「少しお話が長くなってしまいましたね、それでは……」
勇者さんは既に傷も癒えているというのに、座り込んだまま呆然としています
その間の抜けた眉間にこの剣を一突き、それで終わるのです
……終わるのです
どうしたことでしょう、手が動きません……
まさか、今さら躊躇しているとでも言うのでしょうか
この人は人間とはいえ妖精さんの息のかかった者、わたしが討たなくてはならない敵のはずです
そんな相手に情を持つなど……
「…… 剣を置いて去りなさい」
「えっ?」
「気が変わりました、ここに剣を置いて今すぐわたしの目の届かない この世の果てで小さく暮らしていなさい」
「っ! 私は勇者です! 敵を前に退けだなんて!」
「……」
どうしても…… わたしは勇者さんの命を奪わないといけないのでしょうか……
「っ…… !」
燃え盛る雷の閃光がわたしの身を焼きました
「くっ…… っぁ……」
(この攻撃…… 勇者さんでは無いですね……)
勇者さんの属性は風のはず…… ならば誰が……?
攻撃が来た方向へ振り向くと、さっきまで誰も居なかった場所にひとり 年老いた妖精さんが浮遊していました
異質な気を放つ剣を携えて……
「えっ、誰!?」
「妖精王さま!」
「星梨花ちゃん知ってるの?」
「はい、あの方は妖精界の10人居る王様の一人で…… えっと、とっても偉い人です!」
「それじゃあ…… 味方?」
「はい! きっと苦戦しているわたし達を見て加勢しに来てくれたんです」
「でもさっきの朋花さんの話だと妖精たちは人間の敵だって……」
「そ、そんなはずはありません! パパもママも、妖精の里のみんなは優しくてそんな悪いことなんて……」
「そ、そうだよね……魔王は悪の根源で倒さなくちゃいけない敵、なんだよね!」
「魔王の言うことなぞ信じてはなりませんぞ! さぁ魔王が弱っている今のうちに!」
「はい…… ! はぁぁぁぁぁっ!」
「ぅあっ!」
先の奇襲により剣を落としてしまったわたしにそんなことは出来ず、防御魔法を自分にかけてダメージを減らすことが精一杯でした
勇者さんの一撃は強力で、直撃をもらったわたしは先ほどの勇者さんと同じく地に倒れ伏し無様な姿を晒しています
(このままでは…… 剣をとらなければ…… )
しかし、剣を取った所で相手はわたしの剣と同等の剣を持つ者が二人、わたしに勝ち目はあるのでしょうか……
駆け寄ってきた亜利沙さんの治癒魔法を受けながらわたしは一つ決断を下しました
「亜利沙さん…… 命令です、わたしの剣と玉座の後ろに隠してある書物を持って 逃げなさい」
「そんな! 朋花さまを見捨てて逃げるなんて」
「このままではわたしも亜利沙さんも助かりません…… 剣と書物さえあれば大丈夫です、貴女がわたしに代わり次の魔王になるのです……」
「む、無理です! ありさが朋花ちゃんの代わりなんて」
「早くしなさい!」
「うぅ…… わかりましたぁ~ !」
「はい……」
「わ、私たち…… 勝ったの……かな?」
「そ、そうです! わたし達の勝利ですよ!」
「でも…… 何かとっても後味の悪い…… 魔王を倒して世界を救うってこういう気持ちなの?」
「…… わからないです」
「えっ!? でも魔王はもう動けなくて……」
「だとしても! 悪の根は確実に絶たねばなりません! それが勇者の使命なのです!」
「そんな…… いくら魔王でもあの人は同じ人間! 命を奪うことなんて出来ません!」
「そのような甘い考えではいけませんぞ! こうしてる間にも魔王は再起の機会を虎視眈々と狙っているのです!」
「うぅ……」
「百合子さん……」
「手が震えてる…… 一体どうすればいいの…… ?」
「っ……」
「奴の手には剣と本が…… おそらくあの本こそ先ほど語られた偽りの歴史が語られた邪なる教典、あれをこの世に残してはおけませんぞ!」
「……」
「ここで逃がせば第二、第三の魔王が生まれるだけ、ここまでの苦労も全て水の泡! さぁ早く!」
「……」
「早くあやつを殺害し、剣を奪い、本を焼くのです!」
「出来ません!」
「何を……」
「私には…… そんなこと出来ません……」
「…… これだから人間は」
わたしも何とか立ち上がるくらいには体力が戻ってきました これなら肉壁として亜利沙さんの逃げる時間を少しは稼げるでしょう
しかし、立ち上がろうとしたその時 妖精さんは剣を振るい、燃え盛る豪炎が亜利沙さんに向け放たれました
「亜利沙さんっ! 後ろ!」
「えっ? ぎょえぇぇーっ!?」
あの炎を浴びれば折角集めた書物は全て灰塵に帰し、亜利沙さんも只では済みません
わたしには…… 愛する子豚ちゃん一人守る力も無かったのでしょうか……
「くっ…… 亜利沙さんっ!」
剣を持たないただの人であるわたしにはどうすることも出来ない事態を前に、わたしは思わず目を閉じ『神』などというあやふやなものへ祈った その時でした
足元をひとつ、風が通り過ぎました
「た、助かった…… ?」
火炎の奔流は竜巻の盾によって防がれ、亜利沙さんは火傷一つ負ってないようです
そして亜利沙さんの前に立ち塞がる、竜巻の盾を作った張本人 それは……
「本は歴史、作った人の思いをその先の時代まで残していく物」
「私たちは本を読むことで過去の人たちの思いを継ぎ、自分の生を全うして、また次の時代へ思いを残す」
「その思いを踏みにじり本を焼こうとするのなら……」
「貴方は私の敵です! 妖精王!」
あと1,2回の更新で完結出来ると思います。
はたして何が正しいのか・・・・
一旦乙です
つい先程まで剣を交え、命を奪おうとしていた勇者さんが亜利沙さんを救うとは……
「あ、ありがとうございます 勇者ちゃん!」
「あぁっ! 成り行き上仕方無いとはいえ、私勇者なのに魔王の従者を助けちゃったぁ……」
「勇者ちゃんお願いです! あいつを倒して朋花さまとありさを守ってください!」
「っ! わ、私はあくまで勇者です! 魔王の従者の言うことなんて聞きません、て言うか仮にも敵の私を頼るなんて貴女にはプライドってものが無いんですか!」
「な、仲間になってくれるんじゃ無いんですか~……」
「違います!」
「別にさっきの話を完全に信じた訳じゃありません、だけど貴方のことはもっと信じられません!」
「ほ、ほんとに戦うんですか…… 百合子さん…… ?」
「ごめんね、妖精王に刃を向けたら私はもう星梨花ちゃんの友達じゃ居られなくなっちゃうよね……」
「でも、星梨花ちゃんがくれたこの剣は誰かの命を奪うためじゃなくて、何かを守るために振るうってそう決めていたから…… それが私の思う勇者だから!」
「玩具としての役割も果たせず、あまつさえ斬りかかってくるとは、人間とはこうも愚かであるか!」
「まあいい、真相を知ったからにはどの道消す腹、手負いの人間一匹程度、軽く屠ってくれますぞ!」
「っ! やはりそれが貴方の本性ですか! 人間を見下して、世が乱れるのを楽しむなんて…… 許せない!」
「見下しているのは人間だけではありませんぞ、あの下級妖精も真実を知らぬ駒の一人よ!」
「そんな…… くっ!」
「あ、はい! 勇者ちゃんが守ってくれたお陰でこの通り、ありさピンピンしております!」
「良かった……」
「朋花さまも立てるくらい回復したんですね」
「はい、亜利沙さんが回復魔法をかけてくれたお陰ですよ~」
「それじゃあ勇者ちゃんとあの妖精が戦っている内に、ありさ達は逃げちゃいましょう!」
「いいえ、わたしは戦います 剣をください」
「そうそう、朋花さまはたたか…… えぇぇぇ!?」
「問題ないですよ~ もう全快しています」
「嘘つかないでください、ありさにはわかりますよ! 今だって立ってるのもやっとくらいですよね!?」
「…… それがどうしたんですか~?」
「えっ?」
「魔王であるこのわたしに弓引いたお礼、たぁ~ぷりと返してあげなくちゃいけないですよね~」
「ま、まさかあの妖精だけじゃなくて勇者ちゃんにも攻撃するつもりじゃ」
「亜利沙さん」
「は、はい!」
「早く剣を渡してもらえますか~♪」
「あ、え、えっと」
「わたしの剣、預かっていただき感謝しますよ~」
状況は急を要しています わたしは少々強引に亜利沙さんから剣を奪い取り、勇者さんと妖精さんの元へ向かいます
亜利沙さん、わたしの剣を一時的とはいえ預けた意味 理解してもらえますか?
「動きが悪いですぞ勇者よ、絶大なる『剣』を持っていても本人がこの程度ではまさに宝の持ち腐れ!」
「くっ…… もうスパドリもバトキャンも無いし…… やっぱり星梨花ちゃんのサポート無しだと……」
「やぁやぁ休んでる暇などありませんぞ!」
「ぐぁっ……」
「ふむ、仮にも剣に選ばれた者ならばもっと奮戦して欲しいところですが…… これで終わりですかな?」
「星梨花ちゃん!?」
「わたしも一緒に戦います!」
「で、でも私は星梨花ちゃん達の仲間と戦っていて……」
「それでもわたしは、友達の百合子さんを見捨てることなんて出来ません!」
「それに、もし本当にわたしたち妖精族が百合子さんたち人間に酷いことをしていたなら、悪いのわたし達だから……」
「星梨花ちゃん……」
「下級妖精よ! 貴様も我に背くか!」
「わたしはのお仕事は勇者様の冒険を助けることです! 勇者様が戦うのなら、たとえ相手が妖精王さまであっても一緒に戦うのがわたしの役目です!」
「行きましょう百合子さん!」
「…… うん! よろしくね星梨花ちゃん!」
劣勢なのは勇者さんの方、やはり勇者さんもわたしと同じく消耗しているのでしょうか
「はぁ…… はぁ……」
「だ、大丈夫ですか百合子さん!」
「まだ…… 倒れるわけには……」
わたしは勇者さんと妖精さんの剣劇へ割って入り、妖精さんを押し返します
「はぁっ!」
「えっ!?」
「先ほどは亜利沙さんを助けていただきありがとうございます、これはそのお礼ですよ~」
「あ、ありがとうございます……」
勇者さんはまた間の抜けた顔をしていますね、まぁさっき亜利沙さんを助けてもらった時のわたしも似たような顔をしていたのかもしれませんが
「そ、そうだね! 勇者と魔王が手を組んだならそれは最強! 不本意ですけど…… 一時的にでも共に戦いましょう」
「笑わせますぞ! いくら『剣』を持っているとはいえ、手負いの人間二人 我に敵うとでも?」
「何勘違いしてるんですか~♪」
「えっ?」
「わたしは『魔王』ですよ~? 妖精さんひとり片付けるくらい簡単に決まってるじゃないですか~♪」
ステップからの一突き、ただの突きとは段違いな速さの 『必殺の一撃』
「これがわたしの必殺技です 貴方に見えましたか?」
「ぐっ…… たかだか一撃与えただけで……」
「『必殺』技って言ったじゃないですか~」
「わたしの属性は『毒』この剣の切先から、今までわたしが診てきたあらゆる病毒を貴方に注ぎ込みました」
「がっ……」
「ふふ、そろそろ効いてきましたか~?」
「すぐには楽になりませんよ~ 四肢が痺れ、全身が焼けるように熱くなり、脳が激しく揺さぶられ、呼吸すら苦しくなって、その末に……」
『 』
足元に倒れる妖精さんから魔力を感じられなくなったのを確認したわたしは、その傍らに転がる剣を拾いあげます
これでわたしの手に『剣』が二本……
「さて、妖精さんは倒れましたが…… 貴女はまだ戦いますか? 勇者さん」
わたしは振り返り、未だ剣を収めない勇者さんへ問いかけます
「え! えっ!? ま、まだ戦うんですかぁ~? 黒幕?みたいな奴も倒しちゃったんだからもうみんな仲直りでいいじゃないですか~」
「さぁ~? それはどうでしょう?」
「…… わかりました」
勇者さんはやっと剣を収め、臨戦態勢を解きます
表向き平静を装いながら、わたしは内心安堵していました
わたしも勇者さんと同様に最早戦いを続けるのは不可能、ここで勇者さんが再び立ち向かって来たら……
「だけど、私は必ず貴女を討ちます、それは変わりません」
「どうして……」
「どうしてそこまで朋花さまを倒すことに拘るんですかぁ!」
「それは…… 魔王は領地下の臣民に圧政を強いて暮らしを圧迫して」
「ほんとに、ほんとにみんなの声を聞いたんですか!?」
「えっ……」
「みんな本当は……
亜利沙さんが次の言葉を話す前、急な目眩に襲われわたしの足は体を支えられず、崩れ落ちてしまいました
「と、朋花さまっ!?」
「限界…… ですかね~……」
「う~ん…… 多分無理ですね~」
「な、なんでですか?」
「わたしの肉体そのものが朽ちかけているのです…… だから生命力を活性化させる回復魔法じゃ無理ですよ~」
「そんな……」
「恐らく…… 短期間に『剣』の力を使いすぎた反動なのでしょうね…… やはり一介の人間にはこの『剣』の力は過ぎたものだったのかもしれません……」
折角…… 後少し、後すこしで悲願が結実して平和な世を作れるところなのに……
「ふふっ、大丈…… くっ……」
……ダメそうですね~
「朋花ちゃんっ!」
亜利沙さんは回復魔法をかけてくれますが、ほとんど効果は感じられません それにだんだん体に力が入らなくなってきました…… ね~
「っ…… ありさの魔力も限界です……」
「ゆ、勇者ちゃん! あと勇者ちゃんのお友だちの妖精ちゃん! 二人とも協力してください! このままじゃ……」
「なんで…… なんでそこまでするんですか…… ?」
「魔王は傲慢で暴虐な人なんですよね!? 貴女だって本当は魔王のことを嫌いで、居なくなって欲しいって思ってるんじゃないですか!?」
「魔王の領地下の中でも特に側近の人たちは辛い環境下で働かされ、毎日の食事すら満足に行えてないと聞きました……」
「それなのに、どうしてこの人に尽くそうとするんですか!?」
勇者さんの言っていることはもっともです
わたしは勇者さんの言葉を聞きながら、走馬灯のように今までの自分の行いを思い返していました
みんなが平和で暮らせる世の中を夢見て、争いを目の当たりにして、真実を知り世を変える力を手にして…… わたしは何をしてきたのでしょうか
圧政を強いてきたのも事実、わたしが愛していた子豚ちゃんたちに嫌われてしまったのも事実
果ては振りかざした力によってその身を滅ぼすとは、なんて滑稽で無価値な人生だったのでしょうか
所詮わたしはただの人、『魔王』でも『選ばれし者』の器でも無かったのですね……
「そんなの朋花ちゃんのことが好きだからに決まってるじゃないですか!」
「っ!?」
「確かにありさは前に休んだのは一ヶ月、あれ? 二ヶ月だっけ? えっと…… と、とにかく凄く前で、お仕事もすっごく忙しくて、朋花ちゃんは人事のこととか全然出来なくて漠然とした指示しかしないからそれを上手く伝えるのがありさのお仕事で、それなのにお給料はどんどん減っていくし……」
「でも! それでも朋花ちゃんに付いていこうって思えるのは、朋花ちゃんは自分のことを魔王って呼ばせてるけど、本当は聖母さまのように優しくて、世界中みんなを幸せにしてあげたいって本気で願って行動していて、そのためにありさ達の何十倍、何百倍も頑張っているから、それを少しでも手伝って楽にしてあげたいからなんです!」
「他のみんなだって同じです! 日々が辛くて時々不満を漏らしても、決してお仕事を投げ出したり、反乱を起こしたりしないのは朋花ちゃんのことを信じているから、好きだからなんですっ!」
「と、朋花ちゃん!? どうして泣いてるんですか? そ、そのありさが変なこと言ったから」
「嬉しい…… んですよ……」
「わたし…… 貴方たちのことみんな好きで、みんな幸せになって欲しくて頑張っていて……」
「それなのに、貴方たちを辛い目に合わせてばかりで、心が痛くて……」
「わたしが愛している子豚ちゃんたちから嫌われるのが怖くて、投げ出したくなることもあったけど……」
「みんな、わたしのことを好きで居てくれたんですか…… ?」
「あ、当たり前ですよぉ!!! だから…… 死んだりしないでください!」
「朋花ちゃん!」
「なんだか…… 少し安心したら眠くなってきました…… やはり睡眠不足と過労でしょうか~♪」
「そ、そんなこと言わないで!」
「勇者…… 百合子さん」
「は、はい」
「おめでとうございます、貴女の一撃が致命傷となって魔王 天空橋朋花は倒れました、貴女は晴れて魔王を倒し世界を救った勇者となったのです」
「っ、そんな!」
「だから、貴女の冒険はここで一旦おしまいです、次からは誰の掌の上でもない、貴女自身の冒険を楽しんでくださいね~」
「な、なんですか」
「さっきも言いましたがわたしの後を継ぐのは貴女です、わたしに代わり貴女がこの世を平和に導くんですよ」
「あ、ありさに朋花ちゃんの代わりなんて無理ですよ!」
「ふふ、わたしのようになんてならなくていいんですよ、わたしは皆に傲慢と暴虐の限りをつくした『魔王』ですから」
「亜利沙さんはわたしの真似などしないで、貴女の思う皆の幸せを与えてあげてくださいね」
「ふぅ…… これで遺言は終わりです」
「え、縁起でもないこと言わないでください!」
「…… 煩いですよ亜利沙さん、わたしは今から少し休むので静かにしていてください」
「嫌です! 嫌ですよ!」
「ふふ、おやすみなさい~」
誰かを愛する喜びは知っていましたが、誰かに愛されることがこんなにも嬉しく、少し気恥ずかしく、幸せだとは知りませんでした
こんな気持ちになりながら死ねるとは、わたしはなんて幸福者なのでしょう
長かったわたしの冒険も一つ、ここで区切りがつくのでしょうか
薄れゆく意識の中、最後にわたしは世界に向けて言葉を放ちます
「子豚ちゃん達、どうかお幸せに」
亜利沙さんは朋花さんの跡を継いで新しい王様になって、世界中皆が平和で幸せに暮らせるよう日々努力しているみたいです
なんでも『カガクギジュツ』? というものを使うと今までより遥かに豊かな暮らしが出来るそうです
そして、亜利沙さんはもう一つ 朋花さんが集めていた歴史の資料を公開し、真実を皆に伝えました
その情報は妖精たちにも伝わり、妖精界でもトップシークレットであったこの話が広まることで、妖精たちは現体制に対しての不満が募り 革命を起こそうという動きも起きているようです
もう勇者では無い私は、あの『剣』を亜利沙さんに渡し、自分の意思で自分の決めた方へ歩を進めています
今度の旅の目的は2つ
1つ目の目的は妖精と人間の中を取り持つこと
過去に妖精が行った悪行が知れわたることにより、一部の人たちは妖精族そのものに嫌悪感を抱いてしまい 一部では人間に友好的な妖精をも対象とした『妖精狩り』などということが行われているとも聞きました
だから私と星梨花ちゃんは『人間と妖精でも友達になれる』ことをこの身を持って証明していっているのです
勇者を辞めた私は今、昔からの夢である小説家になり、各地で色んな民話を聞いたり、綺麗な景色をこの目に収めています
剣をペンに持ち変えて、私は今自分自身のための冒険をしているのです!
「『今書いている旅の書紀も、私が大作家になったあかつきには』……」
「もう、百合子さん!」
「せ、星梨花ちゃん!?」
「嘘ついちゃダメですよ!」
「う、嘘って……」
「だ、大丈夫だよ! すぐに本当のことになるから!」
「そんなこと言って、まだ全然書けてないですよね?」
「えーっと…… ちゃ、ちゃんと構想は練ってるし……」
「本当ですかー?」
「ほ、ホントホント! これが完成したらきっと教科書にも載るくらいの名作になるから!」
「どんな話になる予定なんですか?」
「うーん、これはある女の子の一生を描いた話なの」
「その女の子は『魔王』って名乗って世界を支配してたけど、本当は聖母さまみたいに優しくて、世界中みんなを愛していたの」
「…… それって」
「でね、タイトルはもう決めちゃったんだ」
「『世界を愛する魔王さま』ってね」
おしまい
原作とは違って蟠りが残った感じか
最後にどうなるのかねぇ
1つ ややこしい書き方をしてしまったのですが、このSSの本編は >>93 で終わりです。次からはあくまでサイドストーリー、3次創作くらいに思ってください。
2つ 「ちょっと」と書きましたけどあんまりちょっとの文量じゃなくなってしまったので、複数に分けて更新します。
3つ 完全に私個人の都合なのですが、今バレンタインの季節モノSSを書いていますので、このサイドストーリーの完結は2月末くらいになりそうです。
土地が弱くて農作物は育たないし、近くに山も無ければ海も無い なーんにも無いところ
そしてありさの生まれた頃、村の間で伝染病が流行り沢山の人が亡くなってしまいました
ありさのお父さんもその一人、だからありさはお父さんの顔を知りません
でも村のみんなは富は貧しくても心は豊かで、母子家庭になったありさ達を色々助けてくれました
ありさは昔からお母さんを助けたくてどうすれば良いのか一生懸命考えていました
畑仕事を手伝おうとしたけど、お母さんは「そんなことより勉強しなさい」って言ってありさに決して手伝わせてくれませんでした
ありさはお母さんの言いつけを守って一生懸命、一生懸命お勉強しました
ありさは塾の先生曰く「とっても優秀な子」だそうで、いっぱい誉めてもらえました
人から誉められる経験なんてそれまでほとんど無かったから、誇らしくて勉強することはとっても好きになりました
ですが、読み書きと計算が出来たからといって何の役に立つのかその時のありさにはよくわかりませんでした
家に帰ったらお母さんのお手伝いをしたかったのに、やっぱりお母さんは「勉強しなさい」と言うばかり
その時のありさはこんな勉強をするより農作業を手伝いたいなぁと、思っていました
学校にはありさと違ってお金持ちの子ばかりだったので、少し肩身の狭い思いをしていました
だけどそんなありさにも一人友達が出来ました
「アリサ!」
「ロコちゃん!」
ロコちゃんはどうやら生まれがここよりかなーり遠くの国だったらしく、時々別の国の言葉を交えて話します
「ロコのダッドはとってもグレートなケミストでした、ですがロコはアヴァンギァルドなアートでグレートになるのがドリームなのです!」
時々…… ?
ありさはその時やっとお母さんの言っていた「勉強しなさい」という意味がわかりました
勉強をして、偉くなれば『お金』が沢山もらえるんです!
ありさの村では『お金』を使うことがあまり無いので知らなかったのですが、『お金』が沢山あれば自分で育てなくても食べ物が手に入るし、衣服も『買える』らしいです!
それを知ったありさは今まで以上に頑張って勉強を続けました
毎日2時間以上かかる道を通って学校へ行き、帰ってからも勉強、また自主的にロコちゃんに他の国の言葉も教えてもらいました
そこへ行けばもーっと色んなことを学べて、もーっと偉くなって、きっともっとお金がもらえる仕事が出来るんだと思いました
しかし問題が2つあって、1つはお金が無いこと
これは村の人たちや同じく大学校に行くロコちゃんの両親が貸してくれるそうなので、何とかなりそうでした
ですがもうひとつは…… 大学校は遠すぎて家から出なくてはいけないということです……
大学校のある街は今まで行っていた学校のある町より更に遠く、ありさは学校の近くに一人で住まなくてはいけないのです
ありさはお母さんのその言葉に背中を押され、遠くの大学校へ行くことにしました
大学校での勉強は今までとは比べ物にならないくらい難しく、そして興味深いものでした
先生曰く魔法学を究めれば植物を育てるのも容易いということで、これさえあればお母さんを休ませてありさが沢山お米や麦を作ることが出来る!
と、息巻いたのは初めの内だけで、実際に魔法学を習ってみるとそのような大魔術を会得するためには何年も修練を続けなければいけないらしく、時間が掛かりすぎるため魔法を勉強するのは辞めました
ありさは出来るならすぐに勉強を終えて、お金を沢山貰える仕事をしたいんです
そもそも魔法を究めてもありさだけしか得をしなくて、村のみんなを助けることが出来ないっていうのがありさ的にマイナスでした
ただ、魔法を練習している内に偶然にも『棒を七色に光らせる』魔法を編み出して、それで先生たちからとっても誉められ、少しですがお金を貰えたので魔法を勉強したこと自体は後悔しませんでした
…… この魔法って何の役に立つんですかね?
何でも『科学』はしっかり研究すれば誰でも使えるものらしく、正しくありさの求めていた物がそこにありました
『科学』では『飲むだけで病気を治せる薬』や『寒冷にも干ばつにも負けない苗』などの研究も行っていて、病気のサンプルの中には昔ありさの村で流行った伝染病もあり、これも将来的には簡単に治せる病気になるそうです!
『科学』を知った日からありさは昼夜問わず、今まで以上に勉強を続けました
村とは違い街にはロコちゃん以外知り合いが居らず、ロコちゃんとも学校の中ではあまり会えないのでありさはあまり口を開かなくなりました
家に帰った時に迎えてくれる人が居ないというのは思った以上に辛いもので、ロコちゃんがくれた 人生で初めて食べたパンは味のしない、とてもまずいものでした
科学は最初の印象と違って、とても難しく中々結果の出ないもので、時々むしゃくしゃして物に当たることもありました、学校なんて辞めて村に帰ろうと思うこともありました
だけどその度にお金を貸してくれた村の人たち、お母さんの「勉強しなさい」という言葉を思い出して頑張りました
この街には可愛い女の子が多く、その子の名前と顔、行動パターンなどを暗記するのです
もちろん話しかけたりなんてしません、ただ見ているだけです
可愛い女の子を眺めると殺風景な毎日が少し色づく、そんな気がしました
その手紙には「お母さんが病気で倒れた」と書いてありました
ありさは学校をお休みして急いで村へと帰りました
村に着いた時、お母さんは既にもう助からないと言われるほど弱っていました
村の人たち曰く、お母さんはちょっと前から病気がちになっていたけど、ありさに心配をかけたくなくてわざと手紙では元気だと伝えていたそうです
「…… ありさ?」
お母さんは痩せ細って、見るからに具合が悪そうで、今にも……
「ありさ…… 学校でしっかりお勉強してる?」
「してる! してるよ!」
「そう……」
「ねぇお母さん! お母さん居なくなったりしないよね!?」
「ありさ、私が昔から『勉強しなさい』って言ってたのは貴女に幸せになって欲しかったからなの」
幸せって…… そんな……
「いっぱいお勉強して、偉い人になって、自分だけじゃなくてみんなを幸せにしてあげられる人になってね……」
「お母さん!? お母さん! おかあさぁんっ!!!」
その日の夜、お母さんは静かに眠りにつきました
ありさはお母さんに楽をさせて、幸せにしてあげたかったから今まで頑張っていたんです
なのに…… なのにお母さんが死んじゃったら……
ありさが勉強なんてしないでお母さんのお手伝いをしていたらお母さんは病気で倒れることも無かったかもしれません
ありさがもっと一生懸命勉強してどんな病気でも治せる薬を作ることが出来ていたら
結局、勉強したって何の役にも立たなかったんです
こんなことならもっとお母さんの側に居たかった! 一緒にご飯を食べて! お母さんの作業を手伝って!
ひとりぼっちじゃ…… 幸せになんてなれない……
>>100
アリサの友達役 ロコ(15) Vi
http://i.imgur.com/CVaad8V.jpg
http://i.imgur.com/YX2IWzv.jpg
もし楽しみにしていた方がいたら、申し訳ないです。
ミリマスファンタジーで完結したものはないから期待してたのに
次の作品が出来上がったら楽しく読ませていただく
最後の方はかなり雑で自己満足レベルですがご了承ください。
その時、ふと学校のことを思い出しました
学校なんてもうどうでも良かったんですが、お母さんは「勉強しなさい」とそう言っていたので、取り敢えず街に戻ることにしました
街に戻るとロコちゃんに何処に行っていたのかと追求されました ……そう言えば誰にも何も言わずに村に帰っていたんでした
ロコちゃんはありさの様子を見て察したようで、心配してくれていましたが、その時ありさの心はグチャグチャになっていて、ロコちゃんを冷たく突っぱねてしまいました
そこからは前にも増してひたすら勉強、勉強の日々
他の何にも目もくれず、ひたすら研究を続けました そうすることがお母さんの望んだことだと思ったから……
そしてありさが学校を卒業する頃には色んな人から「お金を払うから研究をしてくれ」と言われるほどになりました
今まではお金を払って研究させてもらうことが当たり前だと思っていたので少し驚きましたが、ありさはようやくお金持ちになることが出来ました
でも、もう遅いんです…… 今さらお金を貰えたって……
まずはお世話になったロコちゃんに少しでも恩を返そう、そう思ってロコちゃんのところへ向かいました
しかしロコちゃんが前に住んでいた家は空き家となっていました
なんでもロコちゃんは大学校を卒業した後、芸術家としてのセンスを磨くために旅に出たらしいです ありさには何も伝えずに
そう言えばありさもロコちゃんには何も言わずに消えたことがありました、所詮ありさとロコちゃんの仲はその程度のものだったのかもしれません
…… たった一人の、大切な友達だと思ってたのはありさだけだったのかもしれません
村に帰るとみんなが「おかえり」と迎え入れてくれました
なんでも貧乏で何も無い家庭から必死で勉強して、学者になったありさは村の『英雄』のような扱いらしく、今ではどこの家でも「ありさちゃんのように勉強しなさい」と言われているそう
昔お世話になった村の人たちに「大きくなったね」「立派になったね」って言ってもらえるのはとても嬉しいことで、ずっと沈んでいたありさの心が救われた気持ちになりました
その後ありさは持ち帰った強い品種の苗や勉強した効率的な耕作法を村に広め、空いた時間でかつてのありさのように学校へ行けない子ども達に読み書きを教えました
村は相変わらず貧しいままでしたが、少しだけど収穫も増えて、ありさは村中の人たちに感謝されました
感謝されるなんて経験は今までほとんど無くてとても照れ臭くて、それでもみんなが嬉しそうにしている姿を見て、その時初めて本当に『勉強を続けて良かった』と思えました
今の生活にお母さんは居ないけど、それでもありさは周りの人たちに幸せを与えられる、そんな生活を送ることが出来るようになったんです
「きゅう~」
帰り道に一人、女の子が倒れていました
「だ、大丈夫ですか!?」
「はい~ だいじょう…… がくっ……」
「全然大丈夫じゃないじゃないですかー!」
「ありがとうございます~ 2日ほど何も口にしていなかったもので~」
「はぁ……」
見たところ旅の人なんだろうけど、無計画過ぎでは……
「申し遅れました、わたし『天空橋朋花』というものです」
「あ、はい 『松田亜利沙』です」
「はい~」
「若いのに偉いですね」
朋花ちゃんは見たところありさより年上? みたいに思えるけど、それでも大して年は変わらなそう そんな女の子が一人旅なんて……
「わたしは『選ばれた者』なのです、ですから『魔王』として世界を征するために旅をしてるのですよ~♪」
「はい…… ?」
魔王? 世界征服? こんな可愛い女の子が?
「?」
思わず笑ったありさでしたが、朋花ちゃんは何故笑われるのかと言わんばかりのきょとんとした顔をしています
「ご、ごめんなさい…… でも世界征服なんて現実的に考えて無理ですよ」
「そうでしょうか~?」
「だって朋花ちゃん、見るからに可憐で、か弱そうで、とても『魔王』って感じじゃあ……」
「意外と強いかもしれませんよ?」
「ふふっ、そうですね」
「わたしは『選ばれた』から、世界中の子豚ちゃんを幸せにしたいから、ですかね~」
「無理ですよ」
「?」
「あっ、ごめんなさい」
今までは朋花ちゃんの突拍子も無い話を聞いても笑うだけでしたが、何故か今回は笑うより先に否定をしてしまいました
世界中を幸せに? それが本当に出来るなら……
「ありさ、こう見えても学者さんなんです」
「そうなんですか~」
けど……
「でもそれが限界です、人間一人じゃ手の届く範囲の人たちを幸せにするので手一杯なんです」
「それでもやるんです わたしは『選ばれた者』なのですから」
朋花ちゃんの目は真っ直ぐ強く輝いていて、ありさは視線をそらして話題もそらしました
「今日はもう遅いし泊まっていってください」
「いえそこまでは……」
「こんな可愛い女の子が野宿なんてダメです! 輩に襲われたらどうするんですか!」
「でも……」
「ダメです~」
「…… それではお言葉に甘えて」
「…… あれ? 朋花ちゃん?」
気付くと朋花ちゃんは家のどこにも居なくて、戸を開けて外へ出ると
「…… なにこれ」
村はありさの知ってる『村』ではありませんでした
村の家々には火がつけられ、村のみんなは武器を持った人に暴力を振るわれています
武器を持った人たちは貯蓄してあった食料や資材を運び出しています
賊です、賊が村に襲ってきたのです
しばらく呆然として、その場を動けませんでした
『村を襲う賊』存在自体は知っていましたが、この村はとても貧乏でわざわざ襲う価値も無い ずっとそう思っていました
しかし、よく考えてみたら違ったのです ありさが持ち込んだ技術により村の暮らしはそれまでより遥かに豊かになり、この村は『襲う価値のある村』になったのです
「あっ、あああ…… ああああああ!」
状況を飲み込んだ後、ありさはすぐに家に戻り、刃物を手に駆け出しました
許せない、許せない、許せない!
どうして…… なんでみんなの幸せを奪うの?
どうして! どうして! どうして! ありさから奪うの!?
もう子どもじゃない、ただ奪われるだけじゃない
奪われるくらいなら…… あなたから奪ってやる…… !
「朋花ちゃん!? 何してるんですか」
「ん~ お散歩でしょうか~?」
「何のんきなことを! 危険だから早く逃げないと!」
「危険、ですか……」
「それなら貴女の持っているそれも危険なんじゃないですか~?」
「それは……」
「まさかそれで戦うつもりじゃないですよね~ そんな果物ナイフじゃ人は切れませんよ~」
「…… そんなの関係無い」
「?」
「だから強く掴むんです、この手で強く強く握って、壊れるくらい!」
ナイフを持つ手に更なる力が入り、頭の中を凄いスピードで血が巡ります
「…… て言うかそもそもおかしいですよね? なんで貴女は逃げないんですか?」
「そもそも一人で旅をしているってところから不審だった、腰にそんな立派な剣を持っていることだって」
「…… 何がいいたいんですか?」
「貴女は賊の斥候で、先に一人村に入って襲撃のタイミングを伝えたんじゃないか、そう言ってるんです」
「少し落ち着いて
「何も聞きたくないッ!」
「…… はぁ」
朋花ちゃんがひとつため息をついたそう思った時、手元が強く揺さぶられ持っていたナイフが遠く弾けとびました
「…… !?」
「わたしは魔王さまですよ~ そんな果物ナイフじゃかすり傷だってつけられないです~♪」
朋花ちゃんの剣を収める動作を見て、ナイフが剣の一振りで弾かれたことにやっと気付きました、ありさには抜刀の瞬間すら見えませんでした
「うっ…… くぅ……」
掴むものも握りしめるものも無くなったありさはただ地面にへたりこむことしか出来ませんでした
「辛いですか? 悲しいですか? 悔しいですか? 怒っていますか?」
「…… わかんないです」
「ありさ、ずっと頑張って、頑張って、頑張って来たけど、頑張る度に大きな力に全てを否定されるんです」
「……」
「わたしは旅を続けて、貴女のような人を沢山見てきました、大きな力にただ流され、嘆き苦しむ人たちを」
「だから『魔王』としてこの世を支配するんです、全ての子豚ちゃんたちを幸せにするために」
「少し待っててくださいね、すぐ終わらせますから」
「え……」
そう言って朋花ちゃんはものの数分で村を襲った賊を全員縛り上げてしまいました
「はい、あの人たちにはよ~く聞かせたので」
「でもうちの村を襲わなくても別の場所を……」
「そうですね、それにこの村だって別の悪い人たちに襲われるかもしれません」
「それじゃあ!」
「だからこそ、支配する必要があるんです」
「奪うのは満ち足りていないから、全ての人を満たせたなら、もう誰かから奪う必要なんてありませんよね~」
「そんなの無理です! 」
「そうでしょうか~?」
「だって……」
「では、まずは手始めにボロボロになったこの村を満たしてあげましょうか」
そう言うと朋花ちゃんは地に剣を突き立て、何やら念じました
すると地が光りだし、荒れた地が『蘇りました』
「敢えて言うなら…… 『奇跡』ですかね~」
「『奇跡』?」
「大地に大きく魔力を注ぎ込むことで、豊かな大地を作る魔法です」
「そ、そんなこと出来るんですか…… ?」
だって、そんな無茶苦茶な魔法 学校でも見たことなかったのに……
「はい、出来ますよ~ 『わたし』なら」
「お世話になりました~」
「待ってください朋花ちゃん!」
「なんですか~?」
「えっと、ありさも朋花ちゃんの旅 連れていってください!」
朋花ちゃんのやりたいことは理想ばっかりで、とても非現実的で、いくら朋花ちゃんが人智を越えた『奇跡』を起こせるとしても絶対無理だと思います
だけど、もし そんな絶対無理を乗り越えて『奇跡』を起こしてくれるなら、ありさはその可能性を信じたくなりました
いくら朋花ちゃんが凄い人だからって一人で全部出来るわけないし、実際お腹が空いて倒れることだってあるんだからありさが力になれることがあるはず
「お断りします~」
「えぇ!? なんですかぁ!」
「そ、そんな! 一人だけでやりとげるなんて絶対無理ですよ!」
「わたしの力を目の当たりにして、亜利沙さんは何か役に立てると思いますか?」
「むむむ……」
た、確かに…… ありさは誰かと戦うなんて絶対無理だし……
「えっと、ありさ結構お金持ちですよ!」
「必要無いです」
「棒を光らせる魔法が使えます!」
「何に使うんですか?」
ありさもこの魔法は使い道がわからないです……
ありさは頭をフル回転させて何とか朋花ちゃんの役に立つ方法を考え、考えて一つの特技を思い出しました
「ありさ、人の顔を覚えるのが得意です!」
可愛い女の子限定だけど
「朋花ちゃんがいつか世界中を支配した時、誰が誰だか覚えてないとダメですよね? その時はありさがサポートします!」
「なるほど……」
「あ! あとそれにありさ外国の言葉を話せます!」
「…… そうですね」
「はい! 絶対世界中のみんなを幸せにしましょう! 朋花ちゃん!」
「亜利沙さん」
「なんですか、朋花ちゃん?」
「朋花『さま』ですよ」
「へ、何で?」
「わたしは魔王さまだから、わたし達の関係は対等では無いんですよ~」
「えっ、でも」
「亜利沙さ~ん♪」
「ヒィッ! わ、わかりました 朋花さまー!」
「そう、それでいいんですよ~」
グダった挙句プロット投げて終了という酷い有様ですが見てくれた方ありがとうございます。
次からはちゃんと終わりのメドが立ってから投稿するようにします。
0 件のコメント :
コメントを投稿