前スレ
FILE-1:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417956697/
FILE-4:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418402068/
FILE-5:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1427292928/
前回の告知とは違いますが、FILE-3を投下します。
最初の投下から一年以上、三話目から9ヶ月も経っていますが、続きを投下させて頂きます。
続編ですので、FILE-1,4,5を読んでからお読みいただくと幸いです。
よろしくお願いします。
P「おー、おはよー」
律子「今日何かありました?」
P「ん?誰かから聞いたのか?」
律子「いえ、先ほどあずささん達とすれ違ったんですが、何かざわついていたので……」
P「ああ、実はな……」
────
──…
─…
…
P「他の全員にも、今後は一人で行動しないようには言っておいたぞ」
律子「ありがとうございます。これからは私も送り迎えしないとなぁ」
P「基本的に車は俺が使ってるから、大多数は俺が送るよ。近所の連中は律子が送ってやってくれ」
律子「はい、ありがとうございます」
P「ん。それじゃ、レッスンに行っている子たちを送ってくるな」
律子「はい。私はもう少しここにいますが、直帰されますか?」
P「車を置きに来なくちゃ行けないし、一回はここに寄るよ。律子も無理しないようになー」
律子「いえいえ。では」
P「おう。いってきます」ガチャ
律子「……さて、私もオーディションに向けて、対策をまとめなきゃ」カタカタ
────
──…
─…
…
──夜、事務所
律子「……」カタカタ
P「戻りましたーっと、律子まだいたのか。お疲れ様」ガチャ
律子「お疲れ様ですプロデューサー。こんな時間まで送り迎えは大変ですね……」
P「なに、俺の担当アイドルのことだからな。それより律子も頑張ってるじゃないか」
律子「三週間後のオーディションは絶対に合格したいですからね」
P「伊織のテレビドラマ主演のオーディションか……今まで主演レベルのチャンスは無かったからな」
律子「油断してるわけじゃないですが、今回は行けますよ。何より伊織自身のやる気が半端じゃないですし」
P「あいつは自分で自分を追い込める人間だからな。だが、無理だけはさせないように頼むぞ」
P「それと、お前自身も無理しないようにな」
律子「大丈夫ですよ。さて、もう一仕事頑張りましょう!!」
──6日後、朝
律子「おはようございます……ってあれ、プロデューサー殿。今日は朝早いですね」
P「ん、ああ……。いきなりで申し訳ないんだが、今日はちょっと頼まれごとをしてくれないか?」
律子「え、それは内容にもよりますが……深刻な顔をしてどうされたんです?」
P「……昨日、雪歩がまた記者に嫌がらせを受けてな」
律子「!」
P「その時は真もいたから、大事にはならなかったんだが……。さすがにこれは警察に行っておいたほうがいいと思ってな」
律子「そうだったんですか……」
P「俺は今からアイドル達の親御さんに連絡と、社長に頼んで再犯防止に努めようと思ってる。
申し訳ないんだが、律子は警察に事情を説明しに行ってくれないか?」
律子「分かりました。そういうことでしたら、今すぐに行ってきます。
警察に細かく説明するためにも、昨日のことの詳細を話して頂けますか?」
P「ああ。俺も昨日雪歩から聞いたばかりの話なんだが……」
────
──…
─…
…
律子「……という訳なんですが、警察として何か手を打っていただけないでしょうか?」
警察「了解致しました。とりあえず、犯人の特徴などから、過去の事件との関係性が無いか確かめてみますね。
最近はマスコミも無茶ばかりしますからね……。少々お待ち下さい」
律子「はい、お願いします」
律子(伊織のオーディションまであまり時間が無いというのに、本当に物騒ね……)
律子(と言っても、被害に合っているのが雪歩なだけに、気を付けないと本当に活動休止する事態になっちゃう)
律子(早めに事件が解決出来たらいいんだけど……)
警察「えっと……秋月さん。おまたせ致しました」
律子「あ、はい」
警察「先ほどの件ですが……昨晩、ということで間違いなかったですよね?」
律子「は、はい……それが何か?」
警察「実は……昨日深夜、一人の男が、萩原雪歩に関連する供述をしながら、自首してきている模様です」
律子「……え?」
どうも、先ほどの秋月さんの話とも、統合性が取れているようで……」
律子「犯人が、自分から……?」
警察「ええ。そのようです」
律子「そ、そうだったんですね。これで一安心……なんですかね」
警察「そうですね……今後、二、三度お話を聞きに伺うかもしれませんが、この男は余罪も含めて、立件という形になりそうです」
律子「そうですか……」
警察「ただ、秋月さん……その」
律子「?」
警察「……いえ、何でもありません。この件についてはまた後日お話するとしましょう。本日は、ご協力頂き、ありがとうございました」
律子「……?はい、こちらこそ、ありがとうございました……」ペコッ
スタスタ
警察(犯人の男が自供した時に言ったらしい、『殺される前に早く逮捕してくれ……』の台詞……。これはまだ765プロさんには言わないほうが良かっただろうな……)
律子「ただ今戻りました」ガチャ
P「お、噂をすればだな。お疲れ様」
雪歩「あ、ありがとうございました!!」
律子「あー……えっと。プロデューサー殿」
律子「例の犯人ですが……」
律子「昨日の深夜の時点で、自首し、既に逮捕されているそうです……」
P「昨日の深夜の時点だと……?」
律子「はい。雪歩や真の証言と一致する事実を述べ、自ら出頭してきたようです」
律子「他にも盗撮や違法行為を色々行っていたようで、それも全て認めているそうです……」
P「そ、そうか……とりあえず、良かったな、雪歩」
雪歩「はい!!逮捕されて良かったですぅ!!」ピョンピョン
P「!?」
雪歩「すっごく嬉しいですぅ!!」ピョンピョン
P「……ま、まぁ不安が無くなってくれたのは何よりだ」
律子「そうですね」
雪歩「それじゃあ真ちゃんとのレッスンに行ってきますね!!」ガチャ
律子「あんなはしゃぎ方をする雪歩は初めて見ましたね……」
P「それも、誰かが逮捕されて喜ぶっていうのは……なんとなく、おかしい気が……」
律子「それだけ雪歩にとっては事件だったのかも知れないですね」
P「そうだな……今後の仕事にも影響出ないように、しっかり心のケアはしていこう」
律子「はい。プロデューサーさんには話せないようなこともあるでしょうから、私や他のアイドルにも頼んでみますね」
P「すまんな。よろしく頼むよ」
律子「それじゃ、私も行ってきますね」
P「ああ、いってらっしゃい」
律子「ほら伊織、行くわよー」
伊織「はいはい、今行くわよ」
────
──…
─…
…
伊織「……なんか今日、雪歩の調子変じゃなかった?」
律子「……やっぱりそう思う?昨日の事件の話はもうプロデューサー殿に聞いた?」
伊織「ええ。それにしても、なんというか……」
律子「雪歩は最初は一人の時を狙われてたみたいだし、やっぱり私達が思っている以上に精神的にきつかったのかもしれないわね」
伊織「……分かったわよ、今度時間が被ったりしたら、話は聞いておいてあげるわ」
律子「話が早くて助かるわ。でも、あなたも今は大切な時期なんだから、無理はしないようにね」
伊織「無理なんてしないわよ。私は全力を尽くして、主演を絶対に取る。それだけよ」
律子「……さすが伊織ね。ほら、レッスン場着いたわよ」
伊織「ありがとう。それじゃ、今日も張り切って行くわよ!!」
律子(伊織に負担は掛けたくないけど……今の伊織は絶好調だし、このまま行けばオーディションも確実に主演よね!)
────
──…
─…
…
伊織「……おはよう」ガチャ
P「お、おはよう伊織」
伊織「ああ、あんたもいたのね」
律子「どうしたの、伊織。全然元気がないじゃない」
律子(最近、伊織の元気がみるみる無くなっていっている)
律子(理由を聞いても、『大丈夫』の一点張り)
律子(確かに、何かに落ち込んでいるというよりは、不安がっているような印象を受ける)
律子(……あの子でも、当然緊張するわよね。ここはしっかり、あの子を支えてあげなくちゃ!)
伊織「……なんでもないわよ」
律子「そんなんじゃ、来週のオーディション受からないわよ。絶対主演取るんだ、って意気込んでたじゃない」
伊織「主演……」ビクッ
P「……」
伊織「そう…そうよね!!この伊織ちゃんとしたことが、ちょっと元気がなかったみたい!!」
伊織「さぁ律子!!早くレッスン場に行くわよ!!絶対に主演をもぎ取ってやるんだから!!にひひっ!!」
律子「そっちの笑顔の方が伊織らしいわよ」ニコッ
律子「でも、もし体調が悪いんだったら、今日は無理しなくていいわ。
一週間前に風邪引いたりしたら、そっちの方が大事なんだから」
伊織「大丈夫よ!!私としたことがガラにも無く疲れてたみたい!!」
律子「……そうね!!それじゃ、早速レッスン場に行きましょう」
伊織「にひひっ!!もし私が主演とったら、あんたも大忙しなんだから、覚悟しときなさいよね!!」
P「ははっ、楽しみにして待っとくよ。律子も言っていたが、無理はしないようにな」
律子「それじゃ、行ってきますね」ガチャ
P「おお、いってらっしゃい」
────
──…
─…
…
律子「……」カタカタ
律子(いよいよ明日はオーディション当日!)カタカタ
律子(伊織は相変わらず不安になったり、元気になったりを繰り返しているようだけど……)カタカタ
律子(明日ももし元気が無いようだったら、一発気合を入れてあげないとね)カタカタ
律子(普段通りの伊織なら、絶対に合格出来るんだから!!)カタカタ
律子(……さて、最近あんまり寝てないせいか……大分眠くなってきたな……)
律子(明日遅刻する訳にも行かないし……一度家に戻って、今日は事務所に泊まろうかしら)
律子(……そうね。それじゃ、善は急げってことで!)
ガチャ
────
──…
─…
…
チュンチュン…
律子「……ん……?」
律子(ん……もうこんな時間か……。事務所に泊まってて正解だったわ……)
律子「んーっ!支度支度っと!」
ガチャ
小鳥「おはようございます!!あれ、律子さん早いですね」
小鳥「あ!!今日は伊織ちゃんのオーディションの日ですもんね!!」
小鳥「さすが律子さん、気合バッチリだなぁ!!」
律子「あ、小鳥さん。おはようございます」
律子「今日は絶対に遅れるわけにはいけませんからね」
小鳥「そうですね。期待のほどはどうですか?敏腕プロデューサーさん♪」
律子「ふふっ。何ですかそれ。大丈夫ですよ。普段の伊織なら、絶対に合格出来ます!!」
小鳥「その発言が聞けて良かったです!!最近伊織ちゃん、ちょっと元気無いように見えたので……」
律子「あの子も、人並みに緊張するってことですよ。大丈夫、そこはあの子のやる気と根性に任せましょう」
小鳥「そうですね……!!ここまで来たら、もう信じるしか無いですもんね!!」
──…
─…
…
伊織「おはよう……」ガチャ
春香「おはよう伊織ー!!」
やよい「おはよう伊織ちゃん!!」
律子「おはよう、伊織。どう、調子は?」
伊織「調子……」
律子「もーう!そこまで緊張するなんて、伊織らしくないじゃない!!しっかりしなさい」
伊織「え、えぇ……」
律子「いい?今日のオーディションは一度きり。チャンスは一回なの。
他の事を考えたりしているようじゃ、絶対にこのチャンスは掴めないわ」
伊織「……」
律子「元気を出しなさい!!伊織!!あなたは絶対に主演を取るんでしょう!!」
伊織「そう……ね」
律子「まったく……。よし、それじゃあ少し早いけど、もう移動しちゃいましょう。
オーディション会場の雰囲気を感じれば、少しはやる気も出るでしょう」
伊織「……えぇ」
律子「それじゃ、そういう訳で、行ってきます!!」
春香「伊織、頑張ってね!!」
やよい「頑張ってね!!伊織ちゃん!!」
──オーディション当日、昼、オーディション会場前
律子「さて、大分早い時間に会場に着いちゃったわけだけど……調子はどう?伊織?」
伊織「……大丈夫よ」
律子「お、さっきよりは元気が出てきたじゃない。その調子よその調子!!」
伊織「……」
律子「……まぁいいわ。まだまだ時間はゆっくりあるし、オーディションに向けてしっかり集中しなさい」
伊織「……えぇ……」
律子(うーん、もっと叱ったほうがいいのかな……?)
律子(いや、それは逆効果か。ここまで来たら、もう伊織を信じるしかないわよね)
律子(本当に頼むわよ伊織ー!!)
────
──…
─…
…
──オーディション直前
律子「さて、そろそろ時間よ。準備はいい?」
伊織「ええ。大丈夫……」
律子「……信じてるわよ、伊織」
伊織「……」
律子「オーディション中は私は中には入れない。ここであなたの合格を祈りながら待っておくから、しっかりやり切って来なさい」
伊織「えぇ……」
律子「……よし!!もう言うことはないわ!!ほら、行って来なさい!!」
伊織「……」スタスタ
律子(本当にしっかりしてよね、伊織……!!一体どうしちゃったのよ!!)
────
──…
─…
…
伊織「……」スタスタ
律子「!! 伊織!!」
伊織「律子……」
律子「お疲れ様!!結果発表はこの後、アナウンスで行われるそうよ」
伊織「律子……ごめんなさい」
律子「えっ?」
伊織「私、落ちたわ。もう、分かるの」
律子「ちょ、ちょっと……何言ってるのよ……?」
伊織「もう、ここまで来たら、落ちるって分かるわよ……」
律子「伊織!?ねぇ、伊織ったら!?」
伊織「……」
『それでは、結果発表です』
律子「!!!」
律子(主演は……!?絶対に……!!)
『今回のドラマの主演は、───さんにお願いしたいと思います』
律子「………」
律子(え……?伊織が落ちて……?ここは……事務所……?)
小鳥「おはようございます!!あれ、律子さん早いですね」
小鳥「あ!!今日は伊織ちゃんのオーディションの日ですもんね!!」
小鳥「さすが律子さん、気合バッチリだなぁ!!」
律子(……え?朝?なんで?というか、この台詞、聞いたことある気が……)
律子「……小鳥さん、今日は何月何日ですか?」
小鳥「え、そりゃあ伊織ちゃんのオーディションの日だから……」ピヨピヨ
律子(え?)
律子(携帯電話を見ても……確かに、オーディションの日の朝だ……)
律子(どうして……って……そんなことはどうでもいい……!!)
律子「……分かりました!!ありがとうございます!!」
小鳥「ぴよっ!?ど、どういたしまして……」
律子(今までのが夢だったのかも知れない。ひょっとしたら、神様がくれた二度目のチャンスなのかもしれない!!)
律子「おかしいのは百も承知だけど……」
律子「やるしかない!!」
小鳥「ぴよぉ……?」
律子「ふふっ。何ですかそれ。今回は、絶対に負けませんよ!!」
小鳥「(今回は……?)その発言が聞けて良かったです!!最近伊織ちゃん、ちょっと元気無いように見えたので……」
律子「そうですね……無理にプレッシャーを与えるんじゃなくて、もっと伊織の気が楽になるようにしてみようと思います」
小鳥「そうですね。伊織ちゃん、プレッシャーを全部受け止めちゃうタイプですからね」
律子「はい。今日は伊織の背中を押すんじゃなくて、隣で一緒の速度で歩いてみようと思います」
小鳥「……ふふっ、さすが敏腕プロデューサーさんですね♪頑張って下さいね!」
──…
─…
…
伊織「おはよう……」ガチャ
春香「おはよう伊織ー!!」
やよい「おはよう伊織ちゃん!!」
律子「おはよう、伊織。どう、調子は?」
伊織「調子……」
律子(前回は、ここで伊織のプレッシャーを煽ってしまった。
この子がここまで気負ってるんだから、ここは優しく包み込むべきね)
律子「そうね……誰だって、緊張くらいするわよね」
伊織「律子……?」
律子「初めての主演をかけたオーディション。そりゃ緊張しないほうが難しいわよね」
律子「だから、緊張してるなら、緊張してるままでもいい。誰だって緊張するんだから、無理にほぐそうとしなくたっていいわ」
律子「時間もまだまだたっぷりあることだし、ほら。やよいや春香たちとお喋りでもしてきなさい」
春香「おおー!!今日の律子さんはいつもに増して大人びて見える!!」
やよい「うっうー!!律子さんかっこいいですー!!」
律子(話しやすい春香とやよいが相手なら、少しは気もほぐれるはずよね)
律子「そういえば、二人の今日の予定は?」
春香「私は今日は昼過ぎから、真と雪歩と一緒にダンスレッスンです!!」
律子「そういえば、今日はレッスンのコーチがいらっしゃらないから、プロデューサーが直々に見に行くって言ってたわね」
春香「はいっ!!今日は頑張りますよ―!!」
律子「やよいは?」
やよい「今日はお昼ごろから千早さんとボーカルレッスンですー!!」
春香「……」
律子(そういえば、小鳥さんが『千早の様子が変だ』って言ってたわね。春香を避けてるんだとかなんだとか……)
律子(って、今は千早のことよりも伊織のこと!)
律子「ってことは二人共午後からなのに、こんなに朝早くから来てるのね」
春香「はい!!暇だったので!!」
やよい「はい!!伊織ちゃんを応援しようと思って!!」
春香「……」
春香「はい!!」
やよい「うっうー!!もちろんですー!!」
律子(これで伊織の緊張もほぐれてくれればいいんだけど……。駄目なら車の中で色々聞いてみるしか無いわね)
────
──…
─…
…
伊織「ええ、律子。すぐに準備するわ」
律子(やった!伊織が明らかに元気になってきている!これは貰ったわ!)
やよい「伊織ちゃん、頑張ってねー!!」
春香「伊織なら大丈夫!!」
伊織「ありがとう、やよい。精一杯やってくるわね」
春香「えっ!?私は!?」
雪歩「おはようございますぅ〜」ガチャ
律子「あら、雪歩、おはよう」
雪歩「おはようございますぅ!!あ、伊織ちゃん、今からオーディションなんですか?」
伊織「えぇ。最近はレッスン中に迷惑かけて悪かったわ。今日はしっかり挽回してくるから」
雪歩「……」
雪歩「はい。頑張ってね、伊織ちゃん!!」
伊織「……っ!!え、えぇ……」
────
──…
─…
…
律子「さて、着いたわよ伊織。準備はいい?」
伊織「……大丈夫、大丈夫……」
律子「……ちょっと、顔色悪いわよ?本当に大丈夫……?」
伊織「さっきまではあんなに……なんで……」
律子(会場についた途端にまた緊張が……?どうしようかしら……)
律子「伊織、大丈夫よ。まだ時間はあるわ。少しずつでいいから、落ち着きましょう」
伊織「え、ええ……ありがとう律子……。大丈夫、やれるから……」
律子「そう……。あなたはいつも張り切ってくれてるからね……。私と二人きりの時くらい、甘えたって良いのよ?」
伊織「ばっ……!!そんなんじゃないわよ!!」
律子(元気はある……けど、不安が拭えていない感じね……)
律子「……正直、伊織がここまで頑張ってくれるとは思わなかったわ」
伊織「ど、どうしたのよ急に……」
律子「それでもあなたは、毎日毎日、元気を取り戻して、必死に練習してた」
律子「落ち込む時、緊張する時は誰にでもある。でも、それを自分で挽回出来るっていうのは、実は凄いことなのよ」
律子「あなたはその凄いことを、毎日やってきた」
伊織「……」
律子「それは本当に尊敬出来る……でもね、たまには、私にだって甘えていいのよ?」
伊織「……」
律子「悩み事があるなら、私に相談しなさい。私に出来る範囲なら、何でもするわよ」
伊織「……いや、なんでもないわ」
律子「……そう……」
伊織「……でも、ありがとう、律子。少しだけ元気が出たわ」
伊織「……精一杯、やってみる。頑張るわね」
────
──…
─…
…
律子(結局、伊織は私に悩み事は相談してくれなかった)
律子(相談さえしてくれれば、気持も大分楽になるはずなんだけど……)
律子(それでも、一回目よりは全然やる気も出てた!!)
律子(きっと、今回こそは……!!もう三度目なんかないんだろうから、今回こそ……!!)
伊織「……あ、律子」スタスタ
律子「おかえり、伊織」
律子「……調子は、どうだった?」
伊織「………まだ、分からない……」
律子「え?」
伊織「……結果を待ちましょう」
『それでは、結果発表です』
律子(きた!!今回こそは……お願い!!)
『今回のドラマの主演は、───さんにお願いしたいと思います』
チュンチュン…
律子「………」
律子「……なんでよ」
律子「……なんで私は、またここにいるの?」
小鳥「おはようございます!!あれ、律子さん早いですね」
小鳥「あ!!今日は伊織ちゃんのオーディションの日ですもんね!!」
小鳥「さすが律子さん、気合バッチリだなぁ!!」
律子(何が悪かったの?私はどうすればよかったの?)
律子(というより……ひょっとして私は……)
律子(合格するまで、これを繰り返す羽目になるの……?)
小鳥「?律子さーん?」
律子「あ、小鳥さん……こんに……おはようございます」
小鳥「おはようございます。相当お疲れのようですね。アイドルの子達が来るまで寝ててもいいですよ?」
律子「いえ……少し、考え事をしたいので……」
小鳥「そうですか……。今日が伊織ちゃんのオーディションの日ですけど、あまり無理はしないで下さいね」
律子(どうすれば伊織を、いつも通りの元気な状態に出来るの?)
律子(そもそも、元気にしたからと言って、本当に合格出来るの?)
律子(なんで、伊織はあんなに元気がないの?)
律子(なんで、伊織は何も言ってくれないの……?)
律子(次は……伊織の悩みの原因が探る……しか出来ないよね……)
────
──…
─…
…
────
──…
─…
…
『今回のドラマの主演は、───さんにお願いしたいと思います』
────
──…
─…
…
チュンチュン…
────
──…
─…
…
────
──…
─…
…
『今回のドラマの主演は、───さんにお願いしたいと思います』
────
──…
─…
…
チュンチュン…
────
──…
─…
…
『今回のドラマの主演は、───さんにお願いしたいと思います』
チュンチュン…
『それでは、結果発表です』
『今回のドラマの主演は、───さんにお願いしたいと思います』
チュンチュン…
『それでは、結果発表です』
『今回のドラマの主演は、───さんにお願いしたいと思います』
チュンチュン…
『それでは、結果発表です』
『今回のドラマの主演は、───さんにお願いしたいと思います』
────
──…
─…
…
チュンチュン…
律子「……」
律子(何度やっても)
律子(何をやっても)
律子(伊織は、悩み事を私に言ってくれない)
律子(やよい達と話すと、一時期元気になるけれど)
律子(会場につく頃……いや、事務所を出たら元気が無くなってる)
律子(なんで、私に、悩み事を言ってくれないの?)
律子(なんで、このループから抜け出せないの?)
律子(どうしたらいいの?)
律子(もう……何も分からない……)
小鳥「あ!!今日は伊織ちゃんのオーディションの日ですもんね!!」
小鳥「さすが律子さん、気合バッチリだなぁ!!」
律子「おはようございます」
小鳥「おっ、オーディション当日だというのに、敏腕プロデューサーさんは落ち着いてますねー」
律子「もう、私に出来る事なんてありませんから」
小鳥「ふふっ。確かに、当日になっちゃうと、律子さんに出来ることはほとんど無いかもしれませんね」
小鳥「でも、知ってますよ。律子さんが毎晩遅くまで、伊織ちゃんのレッスンメニューや、今後の活動方針、今回のオーディション対策をまとめていること」
律子「…………」
小鳥「伊織ちゃんも頑張ってる。律子さんも頑張ってる。これなら、絶対に合格出来ますね!!」
律子「……」
────
──…
─…
…
────
──…
─…
…
───オーディション当日、朝、事務所
伊織「おはよう……」ガチャ
律子「おはよう伊織。早速だけど、もう移動するわよ」
律子(とにかく、早く、伊織に理由を聞きたい。悩みを聞きたい。どうしたらいいのか教えてほしい)
伊織「え、えぇ……」
春香「伊織、頑張ってね!!」
やよい「頑張ってね!!伊織ちゃん!!」
伊織「……」ガチャ
律子「伊織、調子はどう?」
伊織「…………」
律子(今回も、いつもと同じ。やる気も自信もない、抜け殻の伊織)
律子「ねぇ、なんでそんなにやる気が無いのか、教えてくれる?」
伊織「…………」
律子(理由は教えてくれない。ひょっとしたら、理由なんて、無いのかもしれない)
律子「ねぇ、お願いだから、教えてよ」
伊織「…………」
律子(私には、何も、出来ることはない)
律子「……なんで、いつも、黙ってるのよ!!」
伊織「」ビクッ
律子「いつもの伊織はどうしたのよ!!やる気があって、常に努力してて、自信に満ち溢れている伊織は!!」グスッ
伊織「……ごめんなさい、律子」ダッ
タッタッタ
律子「伊織……」
律子「お願いだから……いつもの伊織に戻ってよ……」グスッ
律子「うぅ……違うのに……」グスッ
律子(私はただ八つ当たりをしているだけ。伊織の気持ちを、今まで蔑ろにしていたツケ)
律子(きっと、今までに、もっと伊織と話して、もっと伊織の事を知っていれば)
律子(こんな事にはならなかった。リミットは一日なんかじゃなかった)
律子「あの人なら、こんな事には、ならなかったのかな……」
律子(プロデューサー殿。数多くのアイドルを担当しながら、多くのアイドルに慕われる彼)
律子(彼なら、どうしただろうか?この状況……いや、もっと前から、伊織の異変に気付けただろうか?)
律子「……そうだ、伊織……」
律子(伊織を探さなければ。一体あの子はどこに行ってしまったのか)
律子「それすら見当もつかないなんて、ほんとプロデューサー失格よね……」
律子(私はプロデューサー失格だ。失格だけど……)
律子「あの子には、助けが与えられる権利……義務があるわよね……」
ピッ
Prrrr....
律子「あの子……伊織が……」グスッ
P『伊織?伊織がどうかしたのか?二人共大丈夫か?』
律子「あの子が……会場を抜け出しました……」グスッ
P『……!!了解、伊織を探せばいいんだな?』
律子「はい……」グスッ
P『律子は大丈夫か?一度そっちに俺も向か──』
律子「あの子の……あの子の、側にいてあげて下さい。私より……あの子を……」グスッ
P『……分かった。律子は少し休んでろ』ピッ
律子(……私も、伊織を探さなくちゃ……)ダッ
タッタッタ…
P「……分かった。律子は少し休んでろ」ピッ
春香「プロデューサーさーん!!お電話終わりましたかー!?」
真「ほら、早速レッスンはじめましょうよ!」
雪歩「ですですぅ♪」
P「あー。すまん、ちょっと今日のスケジュールは変更になった」
春香「ヴァイ!?」
P「すまんが急用でな。お前たちは自主練習を頼む!!後は頼んだ!!」ダッ
真「あっ、プロデューサー!!!」
タッタッタ…
Prrrr.....
ガチャ
P「あ、小鳥さんですか!?実は伊織が会場を抜けだしたんです!!律子の様子もおかしかったし、とりあえずスケジュール変更して伊織の捜索を行います!!何かじょうほ──」
『はい、こちら765プロですー!!』
P「……小鳥さん?」
やよい『えっと……小鳥さんは今買い物に出ていて……』
P「やよい、今のは」
やよい『私も探してきます。見つけたら、すぐに連絡しますね』
P(くっそ!!なんでやよいに電話番なんかさせてるんだよ!!ただでさえ最近物騒なのに……!!)
P(だけど……やよいなら……!!)
P「……ああ、頼む。やよいのレッスンはもう少しあとからだったよな?千早には連絡しておくから、今日のレッスンは伊織が見つかるまで延期ってことで」
やよい『はい!!それじゃあ、すぐに出発しますね!!』ガチャ
────
──…
─…
…
律子(……駄目、ここでも無い……)
律子(ほんと……私、伊織のこと何も知らない……)
律子(本当に、プロデューサー失格だ……)
律子(……次は、あの公園……)
Prrr....
律子(プロデューサー殿!!)ピッ
律子「も、もしもし!!」
P『伊織は無事に見つけたよ。オーディション会場まで、タクシーで行ってくれた』
律子「本当ですか!?……で、でもあの子、オーディションは……」
P『やる気満々で行ってくれたぞ。それで律子、今どこにいるんだ?』
律子「わ、私ですか……?私は今会場近くの水族館付近ですが……」
P『おっ、じゃあすぐにそこに行くから、一旦合流しよう』
律子「えっ、でも今すぐ伊織のところに……」
P『伊織にお前のこと任されたんだよ。伊織はもうオーディション会場に着いている頃だろうし、俺達も一緒に会場に行こう』
P「お疲れ様、律子」
律子「……プロデューサー殿……」
P「伊織のことは心配いらない。もう立ち直って、きっちりオーディションを受けてくれてるぞ」
律子「そう……ですか」
P「そう落ち込むな。何があったのかは知らないが、誰にだって失敗や喧嘩はある。お前が落ち込んだままじゃ、伊織も帰ってき辛いぞ」
律子「……失敗が一回だったら、まだ頑張れたかもしれません……でも……」
P「……?」
律子「何度やったって、私は伊織を元気づけることは出来なかったんです。それを、プロデューサー殿は……」
P「……実を言うと、伊織を見つけたのも、元気づけてくれたのも、やよいだったんだけどな」
律子「……!!」
P「やよいの前でめちゃくちゃ泣いたっぽかったぞ。お前の前じゃ、どうしても泣けなかったんだろう」
律子「……私は、プロデューサー失格ですから……」
P「伊織は、お前の頑張りを知っていたんだよ」
P「誰よりも遅くまで頑張って、誰よりも伊織を応援して、誰よりも期待してくれてるって」
P「だから、お前の前じゃ弱音を吐きたくなかったんだと思う」
律子「……そんな……」
P「俺に会ったらすぐに、『律子は大丈夫?』なんて聞いてきたんだぞ。お前ら本当に似た者同士だな」
律子「……!!」
P「伊織は立ち直った。なら律子がどうすればいいかは……決まってるよな」
律子「……はい!!」
P「よしっ。さすが律子だ」
律子「例え今回がまたループしたとしても……伊織を信じることだけは、絶対にやめません!!」
P「へ?」
律子「あ」
──…
─…
…
P「なるほど……タイムリープか……」
律子「なるほどって……やけにあっさり信じるんですね」
P「ん、こういう超能力に関しては、ちょっと人より慣れているんでな……」
律子「慣れてるって……!!」
P「かくいう俺も超能力者だ。『超能力をプロデュースする能力』って感じのやつだな」
律子「」
P「ま、百聞は一見に如かずだな。とりあえず、律子もレッスンするぞ」
律子「へ?へ?」
P「それじゃ……」
P「『特別レッスン』を始める」
律子(え?え?なにこれ……頭がぐるぐるする……)
P「『ステップ2』チャンスは一回だからこそ、必死になれるし、相手の気持も考えられる。無限大になってしまうと、嫌な部分がどんどん出てきてしまうだろ」
律子(今までの『今日』が次々と浮かんできて……)
P「『ステップ3』未来でも、過去でもなくて、今日を生きるように。今を、生きていけるようにしよう」
律子(複数の『今日』が……一つになった……)
P「『特別レッスン』一回目、終了……っと。いきなりですまなかったな」
律子「え、いや、あ……今のは……」
P「今のが俺の能力だ。今はまだ一回しかしていないが、複数回行うことで、ある程度はその能力を律子が扱うことができるようになる」
律子「タイムリープを……私が」
P「すまん、正直、タイムリープのタイムリミットが来る前に終わらせたかったからな。割りと急ピッチでさせてもらった。
これでもう、『今日』がループされることは無いだろう」
P「いや、正直、律子の能力はタイムリープの中でも『今日』に特化した能力だったっぽいからな」
P「今は、ほぼ無理矢理、俺の能力で押さえつけてる状態だ。また使いたい時は、もう一度プロデュースし直す必要がある」
律子「私は、もう……」
P「……正直、タイムリープが律子で良かった。他の奴がこの能力なんかを持つと、かなり厄介になるからな」
律子「他のやつ……?」
P「……ものの例えだよ。例えば律子がこの能力を悪用したいと思ったら、いくらでも悪用出来るわけだろ?
そうなる前に、ある程度プロデュース出来て良かったってことだよ」
律子「他にも、超能力を持つ子がいるんですか?」
P「イナイヨ」
律子「……ふふっ。まぁそれは聞かないであげておきます。それより、早く会場に行きましょう。伊織が一人で結果を聞くことになりますよ」
P「それよりって……。ま、そうだな。俺は春香達のところに行かなくちゃいけないから、律子が一人で行ってくれ」
律子「……はい」
P「それじゃ、俺はここらへんで──」
律子「プロデューサー殿!!」
P「?」
律子「その……本当に、ありがとうございました」モジモジ
──…
─…
…
──レッスン場
P(くくっ、律子のやつもかわいいとこあるよなー)
P(めちゃくちゃ顔赤くしながら……)
P(だけど、本当にタイムリープの能力が律子で良かった)
P(あれは能力の中でもかなり影響力があるからな……)
P(俺が以前見た奴は、それこそ稀代の大悪党みたいな奴だったし……)
P(律子なら大丈夫だと思うが……先に無理矢理制限を掛ける形になっちまったな)
P(それにしても、最近は春香といい、響きといい、貴音といい、超能力が一気に発現してるな……)
P(あとは伊織が怪しいくらいか……。ま、さすがにこれ以上は無いだろ)
P(ましてや、タイムリープ以上に恐ろしい能力は無いだろう)
P(よーっし、それじゃあいっちょ、プロデューサーらしいかっこいいとこ見せますか!)
P(あいつらほっといて出てきてしまったからな……)
ガチャ
P「おっす、お疲れ様ー」
これで本編は終了です。
以降二レスほどおまけが続きます。
『時間遡行(タイムループ)』 - 秋月律子
任意の時間に自分自身の記憶を残して戻る能力。
しかし、律子の能力は『伊織のオーディション当日』に特化しており、それ以外ではほとんど効果を発揮しない。
しかしそれ故に、自動的に発動し、伊織のオーディションの合格発表を鍵として、何度も時間を繰り返した。
プロデュース後は、律子が強く願うことにより、数秒〜数十秒のみ時間を戻すことが出来る。
しかし、プロデュースにより制限がかけられており、使用するには再び『特別レッスン』を受ける必要がある。
春香「ふぅー。ちょっと休憩しよっか」
真「そうだね。それにしても急に予定変更だなんてびっくりしたよ」
雪歩「うふふっ♪私は真ちゃんと一緒にいれて幸せだよ♪」
真「急なスケジュール変更のせいで、プロデューサーもレッスンの先生もいないから自主練習だなんてさ……。
まぁ好きにダンスの練習出来たから良かったけど」
雪歩「真ちゃんは本当にダンスが好きなんだね?うふふっ♪」
真「……今日の雪歩、どうしちゃったんだろう?」ヒソヒソ
春香「さぁ……?なんか浮かれているというか、ずっと喜んでると言うか……」ヒソヒソ
雪歩「うふふっ♪」ケラケラ
過去の話と繋がっている部分も多いため、意味が分からなくなってる方もいらっしゃるかと思います……。
何か質問等あれば、答えられる範囲で答えますので、ぜひどうぞ。
次回はFILE-8を投下予定です。
数話は書き溜めていますので、近いうちに投下予定です。
是非よろしくお願いします。
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