前作
【ミリマス】ファーストキスは突然に【みななお】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495543562/
の続編的位置づけとなりますが、
みななおがなんやかんやでちゅっちゅした
ってことだけ覚えておけば問題ないと思います。
キャラ崩壊等含まれる恐れがありますので、百合的描写含め、そういったものが苦手な方は回れ右をお願いいたします。
大阪から東京に出てきて一人暮らしを始め、元々母親から家事全般に関しては教わっていたこともあり、特に不都合はなく暮らしていた。
それでも劇場に仕事にレッスンと、奈緒の体力をもってしてもヘトヘトになるような日々を送っていれば、まあ多少家事が滞るのも致し方ないことといえるだろう。
事実、オフの日にはまとめて部屋を片付けたりだとか、作り置きの料理を作ったりだとか、なんとも主婦スキルの高い行動はしていたのだから。
そんな彼女の暮らしが一変してから、はやくも一ヶ月が過ぎようとしていた。
「奈緒ちゃんおはよー!」
時刻は朝の7時きっかり。奈緒の部屋に元気な声が響くのと同時、未だうつらうつらとまどろみから抜け切らない奈緒の体から、布団が勢いよく引き剥がされる。
美奈子の手によって開け放たれていた窓からは、朝のまだ涼しげな空気が流れ込んでいて、その外気に触れれば否が応にも奈緒の意識は現実世界へと浮上せざるを得ない。
それが奈緒にとって好ましいかどうかは、また別問題ではあるのだが。
「ダメだよー、ちゃんと朝ごはんいっぱい食べて、元気出さないと!」
「わかった、起きる。起きるから先に用意しとって~」
そう言いながらふらふらと寝ぼけ眼で洗面所へと向かう奈緒を見届けてから、美奈子はキッチンへと戻る。
奈緒を起こしに来た時点でほとんどの調理は完了している。あとは仕上げと、盛り付けだけだ。
美奈子がまた少しずれた方向に決意を固めたことは、今は本人しか知るよしもないことであった。
「「いただきます!」」
白い湯気の中に煌く中華粥。鶏がらスープの香りが漂い、散らされたネギの緑色が鮮やかだ。さらにザーサイと白髪ネギが添えられ、この粥一つとっても食感で飽きることはないように工夫されている。
見るからに熱々だと分かる小龍包。蒸しあげられたぷりぷりの生地を一度噛めば、中からは肉汁の旨みがふんだんに染み出た熱々のスープが口内を満たすだろう。
さらに焼き餃子。パリッと焼き上げられた表面は絶妙な焼き加減の焦げ目に彩られ、見ただけでその美味しさが伝わるかのようだ。
加えてテーブルに彩りを添えるのはクラゲとキュウリの和え物。瑞々しいキュウリの緑色が目に眩しいばかりでなく、口の中に入れればキュウリのシャキシャキ感とクラゲのコリコリ感が合わさって舌を楽しませようことは想像に難くない。
テーブルに乗り切らなかったため横に置かれている、エビチリと、ホイコーローと、卵とキクラゲの中華炒めを見なければ、であるが。
「ごちそうさまでした!」
「うん、お粗末様!」
しかしこれが普通に全て空になるのが、この横山家の日常でもあるのだった。
もちろんそれには美奈子によってバランスを考えられた味付けであったり、普段から体力を使う二人の仕事内容によるものだったり、様々な理由があるわけなので、よい子はまねしてはいけない。
「美奈子ありがとな~、今日もこんな早くから来てもろて」
「大丈夫だよ~! お店の仕込みで元々朝は早いし、何より奈緒ちゃんのためだし!」
「こそばいからやめぇや~、そういう言い方」
そういう奈緒ではあるが、声色も表情も、全くもって嫌そうな欠片もない。
それは今日のように朝早くであったり、仕事の合間であったり、仕事が終わったあとの夜であったりと時間は様々だが、とにかく奈緒の部屋に寄ってご飯を作り、時にはゴミをまとめ、食器を洗い、なくなりそうな日用品を買い足している。
その様子を聞いた事務所一のセクシーアイドル(自称)、馬場このみさんはこう評したという。
『それ……ただの通い妻じゃない』
そう、今や美奈子は自他共に認める奈緒の通い妻状態であった。
「奈~緒ちゃん」
「ん、なんや? 美奈子ー」
「私、今日のご褒美が欲しいな~」
体重を預けるように奈緒の肩に頭を乗せながら、美奈子はいつもの声色とは少し違う、甘えたような声でそうつぶやいた。
「んー、せやったらなんか買い物にでもいこか。ちょうどほら、新しくオープンした雑貨屋さんがあるんやて」
「むぅ~、意地悪……」
美奈子の甘えたおねだりをさらりと流すように、手元の雑誌に掲載された雑貨屋の記事を指差す奈緒の顔は、なんとも悪戯っぽく、意地の悪い笑みであった。
その笑みを見て奈緒の思うところを悟った美奈子は不満そうに唇を尖らせて、身体を預けている奈緒の腕をぐいぐいと引っ張っている。
「なーんてな。ちゃんと分かっとるから、そんな顔せんで?」
言葉とは裏腹に、存分に美奈子の不満顔を堪能してから、奈緒は雑誌を一度閉じて美奈子の方へと視線を移す。
その細められた瞳は、一瞬美奈子の脳裏にあの夜の奈緒を想起させた。
ピクン、と微かに肩を震わせる美奈子の顎先を指で軽く上向かせ、真っ直ぐに瞳を見つめながら、奈緒は美奈子の唇に自分の唇をゆっくりと重ねた。
「ん……これでええんやろ?」
一瞬のキスの後唇を離した奈緒は、満足そうな表情でそう美奈子に問いかける。
正確には、問いではなく確認であるのだが。
「奈緒ちゃんって、こういうときだけ意地悪だよね」
頬を赤く染めながらもまだ少し不満げな表情の美奈子だったが、その表情がネガティブなものでないことは、奈緒もわかっている。
結果として奈緒の手玉に取られたような形になっているのが、嬉しいようで悔しいようで、なんともいえない表情になっているだけだ、と。
「なんでなんかな~、美奈子にはなんでか意地悪したくなんねん」
そんな表情をされるから、意地悪したくなるんやけどな。
と心の中で付け足しながら、意地悪のお詫びに何かプレゼントでもしたろかな、とこれからさっきの雑貨屋へと向かう算段を立て始める奈緒であった。
今回ちょっと続き物にチャレンジしてみるつもりなので、今回はここまで。
とりあえずみななおがラブラブしてるところを不定期更新で書いていくつもりです。
お読みいただきありがとうございます。
願わくば、今後も宜しくお願いいたします。
乙です
>>2
横山奈緒(17)Da
http://i.imgur.com/mvnrTYO.jpg
http://i.imgur.com/Zlk6U7u.jpg
>>3
佐竹美奈子(18)Da
http://i.imgur.com/H8nI7OX.jpg
http://i.imgur.com/BRnMwhQ.jpg
ありがとうございます。
奈緒が美奈子に少しだけ意地悪な口づけをしてからしばらくして、奈緒は改めて雑誌のページを開いて美奈子に向けて掲げた。
そのページには奈緒の部屋から少し歩いたあたりにオープンした、新しい雑貨屋の記事が書かれている。
大きなチェーン店というわけではなく個人経営のお店のようだが、雑誌に取り上げられた以上これからしばらくは混みあう事だろう。
「ほんと!? わっほ~い! ホントはさっき見た時に気になってたんだ」
「私も気になってたんよ~。ホンマは暇な時に行こうと思ってたんやけど、美奈子と一緒に行きたくてなぁ」
「……奈緒ちゃんの天然ジゴロ~」
「え、なんで!?」
奈緒の言葉にほんのり顔を赤らめる美奈子だったが、奈緒本人には、そうなるような言葉を言った自覚はないようだった。
天然ジゴロという美奈子の言葉も頷けるというものである。
平日昼間の街は閑散とはしていないが賑やかというほどでもなく、どこか穏やかな雰囲気に包まれていた。
「ええ天気やなぁ、お散歩日和や」
「そうだね~、歩いたらちょっと暑いくらいかも」
そう呟く美奈子の視線は、隣を歩く奈緒の手へ。
少しだけの間躊躇するように自分の手を揺らしてから、意を決してその手をぎゅっと握る。
緊張のせいか暑さのせいか、その手のひらはしっとりとしていた。
「美奈子は積極的やなぁ」
手を握られた側の奈緒は動じる様子もなく、にやにやと意地悪な笑みを浮かべている。
今度こそは負けない、とばかりに何ともないような顔をしている美奈子だが、その耳がほんのり赤くなっていることを奈緒は見逃していない。
するり、と美奈子の握られた手から自分の手を滑らせ抜き取る奈緒。
そして美奈子に寂し気な表情すらさせないうちに、指を絡めてもう一度手をつなぎ直す。
スムーズな手際に、思わずされるがまま繫ぎ方を変えてしまった美奈子がその意味に気付いた時には、すでに耳だけでなく頬まで赤く染まっていた。
すなわち、いわゆる恋人繫ぎというやつである。
「奈緒ちゃん、こういうこと手馴れてない?」
すっかり手の平で転がされっぱなしの美奈子が、未だ赤さの残る頬を膨らませながら奈緒を睨むように見つめる。
無論、そんな状態で睨んだところでむしろかわいくしか見えないのではあるが。
「そんなことないわ。彼氏もできたことあらへん、正真正銘の乙女やで」
「こんな意地悪な乙女いないよ~」
雑貨屋はといえば、雑誌の効果もあるのだろう、平日にしては十分多いといえる客が訪れていた。
「うひゃ~、やっぱりお客さんおるなぁ」
「離れないようにしないとねっ!」
そう言って笑いながら握る手の力を少しだけ強める美奈子。
さすがにそこまでしないといけない程の人口密度でもないのだが、このくらいの仕返しが出来る程度には、余裕が出てきたという事だろう。
しばらくの間店内の商品をあれやこれやと見て回る二人。幸いにして、変装した二人には誰も気づく事は無い。
すると、とあるコーナーの前で二人の足が止まる。
『各種髪飾り ヘアピン・ヘアゴム・リボン・シュシュ等々取り揃えております』
手作りなのだろう、温かみのある文字と絵で彩られたその看板の下には、確かに様々なデザインの髪飾りが並べられていた。
どちらから、ということもなく繋いだ手をほどいた二人は、並べられた髪飾りを眺め、手に取り、次々と物色し始める。
そして、やがてその手が止まるのもまた、不思議なことに同時のタイミングであった。
「決まったみたいやな!」
「うん、私はバッチリ!」
せーの、と小さく二人で呟いて、お互いに選んだものを見せ合う。
美奈子の手に握られていたのは、紫色のリボン。奈緒の手に握られていたのは、薄い青のシュシュ。
「ほな、会計してくるわ」
感想も言わないままそれだけを言って、奈緒が美奈子の手からリボンを取ってレジへと向かう。
「え!? 自分で払うよ!」
「意地悪したお詫びと、普段の感謝の気持ちや。ここは私に甘えて、先に入口で待っとって~」
問答無用で人の間をすり抜けてレジへと向かっていった奈緒を見送りながら、美奈子は苦笑いを浮かべてため息をつく。
「ずるいなぁ、もう」
しかしそう呟きながら一足先に店の入口へと向かう美奈子の顔には、なんとも嬉しそうな、へにゃっとした笑みが浮かんでいた。
遅れて入口へと戻ってきた奈緒が、それぞれの髪飾りが入った二つの袋を美奈子に手渡す。
「私が選んでたんは美奈子へのプレゼントや! 美奈子は髪結ぶのリボン派みたいやから、たまにはシュシュもええんちゃうかな~って」
「えっ! 私が選んだのも奈緒ちゃんへのプレゼントだよ!? 奈緒ちゃんがシュシュ派だから、私と同じリボンを送りたいな~って」
「えっ、ホンマ!? なんや~、そんなとこまで一緒の考えやったんか」
お詫びもかねて一方的にプレゼントを送ろうとしていた目論見が崩れたからか、奈緒はちょっとバツが悪そうに、美奈子に手渡した袋のうち一つを受け取る。
しかし嬉しさを隠しきれないその表情には、奈緒には珍しく赤みがさしていた。
「なあなあ美奈子~、私リボン使ったことあらへんから帰ったら手伝ってや~」
その赤くなった顔をごまかすように、そう言って美奈子の腕に抱きつく奈緒。
これなら珍しく自分が主導権を握れるかな、と帰った後のことを想像して、来るまでとは違った笑みがこぼれる美奈子だった。
「奈緒ちゃん2月生まれでしょ? だから、誕生石のアメジストの色にしたの」
「は~……さすが美奈子、女子力高いわぁ……」
アメジスト、2月の誕生石。その別名は、愛の守護石。
そこまで美奈子が知っていたのかどうかは、本人のみぞ知る。
お読みいただきありがとうございます。
願わくば、今後も宜しくお願いいたします。
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