百合注意です
最初の頃は普通の一軒家に住みたいとか、今までの私たちがそれぞれ住んでいた部屋のどちらかに移りたいとかいろいろあったけど、今ではここでの生活にこの上ない愛着を感じるようになった。
ここで二人の本格的な同棲生活が始まったのは二年前、最初の頃はどうだったのかしら。最初は気の迷いだったのかもしれないけど、過去があって私たちは今にある。
このみさんがお祝いに、とくれた私たちそれぞれの誕生年のワイン。
このみさんがそれぞれ私たちに贈ってくれた、3本ずつ同じ銘柄、同じ年度のもの。
私にはあの人の誕生年のワイン、あの人には私の誕生年のものを。
このみ「まずは一人で楽しみなさい。そして二本目は二人で開けてちょうだい。最後のはそうね、あなたたちがずっと幸せでいられるように、いつの日かにね」
私は待ちきれなくなって、もう片方のペアのグラス、それに自分のグラスをあてせることによって音を鳴らした。
みんなから、私はすぐ酔っちゃうって言われているからちょこっとだけね。
あの人の生まれ年のワインを私のグラスに注ぎ込む、私のグラスはどんどん満たされていく。
口からのどを通り、そしてわたしの奥底へと……
ゴーンゴーンゴーン
世間から見れば女性同士の結婚、受け入れてもらえるかどうかわからなかったけど、婚約発表。そして挙式へ。世間は受け入れてくれたけど社会の制度は受けいれてはくれない。だから籍を入れることはできない形だけの結婚式。
いろいろなことを思い返す。そう、これが私たちの歩いてきた道そのものなんだ。
そして、同時に祭壇で向かい合い、二人でお互いにお互いのブーケをめくる。
「綺麗だよ、奈緒ちゃん」
ウエディングケーキへの入刀、私たちの式では本物のケーキでやりたいって、そういって作ってもらった本物の特大のケーキ。
それを前にしてあなたは満面の笑みを振りまく。
そして食事の時もあなたはその場にいる誰よりも素敵で輝く笑顔を。
あなたは本当はもてなしをする側だけど、そんなあなたを見て笑顔はみんなを幸せにするわ。
私もそんなあなたを見ていると本当に幸せよ。
みんながそれぞれ曲を贈ってくれて、そこはまるで小さいライブ会場かのよう。
きらびやかなステージにきらきらさせた瞳を食いつけになるあなた。
海美ちゃんとジュリアちゃんと翼ちゃんと瑞希ちゃん達が私達に贈ってくれた二曲。
「恋愛ロードランナー」「アイル」
海美ちゃんはこう言ってたっけ。
二人の恋愛ロードはこれからもずっとなんだよ!!
進むのは一人じゃなくて二人だよ!ってね。
そして瑞希ちゃんはこう教えてくれたわ。
アイルにはウエディングロードっていう意味もあるんだって。
私が迷ったら奈緒が、奈緒が迷ったら私が。そんなことをずっと、ずっと……
一緒に、そして何度も何度も繰り返しながら進むんだ、先へ……!
鐘の音と共に声を各々から掛けられる。
事務所のみんな、私たちの家族、それにお仕事で知り合った人たち、そしてほかにも数多くの人たちに祝福してもらいながら。
グラスにもう一口をつける
私達は立場上忙しいから、結婚式当日の夜、その日は結ばれて初めての夜とはならない。
お互いそのことは理解していたし、仕方ないことだと思っているから問題とはならなかったけどね。
式の翌日の今日の夜、そう今夜、ふたりでの初めての夜。
グラス越しに見る街並みは大分霞んできた、このあと一雨降りそうだわ。
飲みかけの一杯を飲み干して、片暇つぶしにいろんなことを考えながら二人の家を見渡す。
雨が降りだす。
大丈夫かな?帰ってくるのが遅くならないといいな。
しばし空になったグラスを見つめていた。
むぅ……なんか悔しいわね、私はお酒に弱いらしいから。一人の時は一杯でやめときなさいって言われて今まではそうしていたけど。もう一杯だけ。
窓をのぞき込むと、火照った自分の顔が映りこむ。
雨はしとしとと降っていた。
扉を開き体を冷やそうとベランダに出た、すると先ほどまで聞こえなかった雨音や町の雑音が耳に飛び込んでくる。
道路を走る車の音や、それに救急車のサイレンの音かな。
規則のない音は集中を妨げ、私の意識を遠い、遠い場所へと引きこんでいく─────────
もともとアルコールが弱いこともあって、意識は朦朧としていく。
少しすると、アルコールのおかげかどうしてか体が温まっていく。
意識の限界、まどろみの中で。
「大好きだよ…………奈緒ちゃん……」
ガシャバナーは許してはいけない
乙です
田中琴葉
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横山奈緒
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>>3
馬場このみ
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