※百合注意です。苦手な人はブラウザバックで
「……好きよ。どうしたのよいきなり?」
「……ほんと?」
「ええ、ほんと」
「そっかぁー、ふぅーん」
夕食後、居間でのんびりテレビを見ていた時のこと、テーブルを挟んで頬杖ついた美希が私に話しかけてきた。
長い髪を人差し指にクルクルと巻いては解き、芸人の内輪ネタで盛り上がる画面をつまらなそうに見やりながら。
『ふぅーん』と呟いた後の会話はない。
そう返されたら何を言ったらいいのかしら……って感じ。
私は美希の横顔を見ながら真意を探ろうとする。この四日間ほど、美希はこれに似た問いかけを繰り返している。
オールスターライブが終わって久しぶりにちょっと長いオフに入ったばかり、逆算するとちょうど楽日からずっと……こんな様子だ。
正確に言うと反省会という名の打ち上げ会をみんなでしてから今日ここに至るまで……だ。
だけど私にはたった一つ解ることがあるのよ、それは美希の態度が『ブラフ』だという事、本当に不機嫌ならうちに来ないし、泊まらないでしょうから。
着の身着のままやってきて、朝も昼も夜も勝手に冷蔵庫開けて自分と私の分を作ってペロリと平らげたかと思うと昼寝をしてゴロゴロ、おやつの時間に勝手に漁ってこれまたペロリと平らげてゴロゴロといった感じだ。
美希は私の恋人で、常に居れて嬉しいし楽しい。それは間違いないわ。
どんなに忙しくても私と逢う時間を作ってくれて、からかったりワガママを言いつつも甘えてきて甘えさせてくれる。
そんな幸せな日々は私にとってこれ以上無い程に心が休まる、しかし……前述の通りな態度をされると心配な反面イラッとする、それが本音。
それがイラつく原因なのだ、だけど私はそんな美希に強く出れない……それはこいつがワガママに近い態度をするのには理由があると思っているからだ。
質問をした後の美希は憂鬱そうで、悲しそうで寂しそうで、先の会話以外は上の空。
「……悩み事、この間からずっと変よあんた」
意を決して聞いてみる、コイツだって子供じゃない……いつまでも不貞腐れてられないくらいわかってるでしょうに。
「………アノ日」
「それはこの前来たって言ってたでしょ、もうさすがに終わってるでしょ」
「……はぁ~、じゃあ……カゼ」
そんな風に美希は溜息を混じりの見え透いた嘘ばかり言う、月のモノなら前回からの周期的にまだ先だし、風邪なら私の家に来ないでしょうが。
『勝手にしなさい』と放って二、三分も経つと美希がポツリとそう呟く。
「最近、でこちゃんが冷たいから」
美希は強くハッキリ、そう言った。
正直……面食らった、まったく身に覚えが無い。私は普段と変わらず接しているつもりだったから。
「だからミキも、さ……でこちゃんに冷たくしちゃおう、って思ったの」
テーブルに頬をペタンと貼り付けて途切れ途切れに呟く。
「あー私の態度や接し方が冷たいと思ったのね?」
そう聞き返してみても美希は反応を返さない。『当たり前なの、当然なの』と言わんばかりに……。
「……エッチしてくれないし、キスだってしてくんない。……ミキが甘えても前みたいにドキドキしてくれないの」
と言われたら、前言撤回。美希の言う通り。
確かにそれ以来していない。
キスは……リハの時にやった以来だったかしら、 だが甘えてうんねんは間違いなく『身に覚えが無い』
「その、何よ。ソレとキスの事に関しては悪かったわよ、けど最後のヤツは身に覚えが無いわ、こう見えても、結構いつもドキドキしてるわよ」
「ウソだぁ……この前だってそうだったし、ジュースを口移しであげようとしたら速攻で嫌がったクセに……」
つまり美希の言う『ドキドキしてくれない』はそういう事らしい。
打ち上げの亜美からのサプライズ……美希に一緒にストローで飲むかそれとも『口移し』にするかと聞かれた。
『ストローに決まってんでしょ、バカなこと言わないではやくよこしなさいよ』
と私は返事してハート型ストローで仲良くジュースを飲む道を選んだ、美希的には不本意だったらしく……かなり気に食わなかったみたい。
「本気に決まってるの。ミキはでこちゃんへはいつも全力全開なの」
そう言ってプイッと顔を背ける、いじける。
あの時は終始気にしてないフリをしてた、でも内心ではかなり傷付いて怒り心頭だったんだから、そう遠回しに伝えてきている。
場の空気を壊したくないから解散まで我慢していた、と言いたいのだ。頬を膨らませてみてさえいる。
「今ね、そんなあんたが可愛くてドキドキしているわよ……本気で」
歳相応とは言わないが少し幼い、いじらしくて可愛いドキドキする。
「ふぅーんそうやって誤魔化すんだぁ? やっぱり冷たいの。でこちゃん。ミキに飽きたんだね、冷めちゃったんだね……遊びだったんだね」
でも本当は嬉しいのが丸わかり、口元がニヤついてるわよ?
「飽きてないし、冷めてないし、遊びじゃないわよ、毎日いっつもいっつもあんたにはドキドキしっぱなしよ」
「んふふっ…うふふっ♪」
美希は私の言葉に満足したのか機嫌を治し満面の笑みを浮かべてテーブル越しに顔を近付けてきた。
「ミキね、正直者のでこちゃん大好きだよっ」
と、鼻を人差し指でツンツンと軽く突いてニコニコ、これには私もおもわず笑みが零れる。
さっきまでのイライラは吹っ飛んで胸の中が暖かくなる、こうして戯れるのはいつ振りかしら。
美希を抱かなかったのは言ってみれば自惚れ、いつでも出来る、この子は私から離れていかないと高を括っていた部分があって手を出さないままズルズルと……。
肉体的な繋がりより精神的な繋がりしか見えてなくて疎かになっていた。
ああ、だから美希はそれもひっくるめて『冷たい』と言っていたのかしら?
論より証拠ね。
美希の頬を両手で撫で、額同士を重ねてみる。
「あ……DVなの。可愛い彼女に頭突きした」
軽口を言って美希は嬉しがる、愛らしい反応に私は夢中になる。
次に鼻先でつっつき逢ってみたり擦り合わせてみたり……美希の頬が徐々に桜色に染まっていき上目遣いで見詰めて……。
頬へ手をあてがったまま人差し指を伸ばして耳を撫で、掛かった髪を耳の裏へ渡して再び撫でる。すると美希も私の頬を撫でてくれる。
「伊織ぃ……っ、この前は出来なかったけど、してみる? 口移し……」
しばらくそうして戯れあっていると美希はうわずった声で提案した。
「あんたがしたいなら」
「伊織はしたくないの?」
すぐに返された言葉はそんな感じでここで返す言葉は決まってる、言わないとまた不機嫌になるんでしょうね。
「したいわよ」
即答したのは私も久々の触れ合いに喜んだから……。
と嬉しそうに美希がどこからかアメを取り出す、青紫色の小さな小さな可愛らしい包み。
「何味?」
「ブルーベリーヨーグルト、最近ハマってるの」
美希はアメを口に含んでコロコロと音を発てながらしゃぶり、四つん這いで俺の横に並んで座る。
肩をピッタリ寄せチラリと上目遣いで見詰めて私の頬をそっと持ち、自分の方へ向かせる。
「ほら、あ~ん」
私は美希に顔を近付けて待ち受ける、思わず唇を舌なめずりしてしまった。
美希が私との距離を縮めてくるジワジワ焦らすように……、鼻先が触れたら僅かに顔をかしげて今度は唇へ。
甘ったるいブルーベリーとヨーグルトの香りが鼻をくすぐり、爽やかな美希の匂いに顔が熱を帯びていく。
唇が触れる寸前で美希はパッと私から離れる、呆気に取られた姿が面白かったからかクスクスと笑っている。
「……なによ」
「えぇ~? だって伊織の顔すっごくやらしくなってるの。がっつかれてミキの唇が傷付いたらヤ、なの」
人差し指で私の唇を左右に擦って美希は新しい悪戯を思い付いたかのような笑みを浮かべる。
ニヤリと不敵に笑い私の頭を左腕で引き寄せて右手で顎を掴むんだほんの少し乱暴に、今から何をされるのか想像がつかない。
「動いちゃダメだよ、伊織?んっ……」
再び美希の唇が私に近付いてきて僅かに覗いた舌がチロチロと蠢く、甘ったるい飴の匂いと甘酸っぱい美希の香りが濃ゆくなっていく。
そして唇にそっと触れた舌先が唾液の軌跡を残して伝い酔わせる、暖かく甘い吐息で狂わせる。
美希は甘く唇に吸い付き、甘える子犬のように舐め回して俺を潤していく、もどかしいくらいゆっくりと。
美希は私から目を逸さない、ジッと挑戦的な上目遣いで見詰め……時折『ご褒美』と言わんばかりに優しく口付ける、一瞬だけ舌を潜らせてくる。
それを受入れようとすると彼女はサッと引いて唾液を含ませた唇で啄む。
目で訴え掛けても彼女は悪戯っぽく微笑むだけ。わざとらしく犬歯で甘噛みしてみたり舌先でチロチロと舐めて焦らす。
堪らず美希を胸の中へ抱き寄せるとピタッと身体を寄せてきて一言。
「ミキね、とっても幸せなの」
頬をほんのり桜色に染めた美希は強く唇を重ねて舌と共に飴を私の口内に潜らせる。
濃厚な甘味は美希の熱で増してとても淫美で絡める舌は背筋をゾクゾク震わせる程に情熱的だった。
私以外知る必要も無いし、私以外が知ってはいけないものだもの。
だから何があったかは秘密。
まぁ一つだけ言えることは、美希は私のものってことだけね。
それでもいい作品だった
乙
なんで『俺』になってんだよー
間違いが1度じゃないから笑ってしまった
でも良かったよ、乙
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