真美「会場の兄ちゃん姉ちゃーん! 盛り上がってるかーい!?」
伊織「ちょーっと声が小さい気がするわね? そんなんじゃまだまだ、足りないわよっ?」
やよい「もっともーっと、元気な声でいきましょーっ!!」
律子「…………」
P「……またむつかしい顔してんね。白髪増えるよ?」
律子「んなっ……。言うに事欠いて、いきなり、なんてこと言うんですか!」
P「いや、眉間にしわ寄ってたからさ。考え事?」
律子「考え事というほどではないですが……」
律子「今日は、オーディションでなくて普通のライブイベントですが。みんな、最近心なしか気持ちが乗ってるように見えるなぁ、と」
律子「前回の高校生組の、サイネリアさんとの僅差での敗戦……それと」
律子「貴音の、あの超然とした演技。あれが、何かの引き金になったんでしょうか」
P「……かもね」
・貴音「大物喰い?」の続き
【重要】・千早「ジャイアント・キリングを起こす72の方法…」までとは別のひと
・この話だけでも読めるようになっているはず……?
・ジャイキリ本編、アイマスrelations、ノイエブルー、スプラッシュレッドを読んでいるとなお楽しめるかも
律子「え? え、ええ、まぁ……」
ずいっ
亜美「やっと出番だね! 亜美も→まちくたびれちゃったよ!」
亜美「前回の魔王エンジェルのときも亜美出番無かったし……。なんか兄ちゃん、えこひ→きしてない?」
P「してないしてない。ほら、早くしないと次の曲のスタンバイ始まるぞ」
亜美「はーい」
P「……。お前もだよ、行ってこい」
美希「えー、ミキも? ミキ、今日は休日気分でいたのになぁ」
律子(ジュピターと引き分け、魔王エンジェルに勝ち、サイネリアさんに負けたとはいえ互角の勝負をし……)
律子(このプロデューサーが、やってきてから)
律子(事務所の雰囲気も少しずつよくなってきて、確実にいい方向へ向かっているのは間違いない)
律子(……なのに、どうして)
律子(こんなに胸騒ぎがするんだろう……)
真美「あ、やよいっち。おはよ→」
やよい「真美! おっはよーっ!」
伊織「あら、おはよう2人とも。今日も元気いっぱいね」
やよい「えへへ、そうかな? 伊織ちゃんも、おはよーっ! 昨日のライブ、楽しかったね!」
伊織「ええ。盛り上がりも上々だったし、まあ合格って感じかしら」
伊織「ねぇ真美? ……って」
真美「…………?」きょろきょろ
伊織「どうしたのよ真美。落ち着かないわね」
真美「えー、……っと。亜美、どこにいるの?」
伊織「亜美? 今日はまだ来てないと思うけど?」
やよい「真美、一緒じゃなかったの?」
真美「うん。亜美、今日はなんか用事があるからって、早くうちを出てったんだよね。だから先に着いてるんだと思ったんだけど……」
伊織「……? 変な話ね。でも、荷物は確かに無いわよ」
やよい「?? じゃあ、亜美は」
やよい「どこへ行ったんだろう……?」
亜美「…………」
石川「来たわね」
まなみ「お久しぶりです、亜美ちゃん」
石川「知ってると思うけど、私が876プロの社長、石川実よ」
亜美「は、初めまして」
亜美「765プロの、双海亜美、です……」
真「え」
雪歩「ば」
響「876プロからオファー!? 亜美が!?」
小鳥「……え。もしかして、誰も知らなかった……?」ちらっ
やよい「」ふるふるふる
小鳥「あ、あはは。じゃあ、聞かなかったことにして……? こういうのは本人の口からじゃないと」
伊織「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!! じゃあ亜美は今日、876プロの人と会ってるってこと!?」
小鳥「私の口からは、ちょっと……」
伊織「そこまで言ったんだから答えなさいよ! 会って話を聞くってことは、その気があるからってことでしょ!?」
小鳥「ま、まあまあ……」
わいわい
やいのやいの
真美「…………」
あずさ「……真美、ちゃん?」
真美「……え。あ。……ううん、真美はなんにも」
かちゃり
律子「はいはーい、みんな揃ってるわねー。あと五分したらスタジオへ移動してレッスン始めるわよー」
やよい「律子さん!」
伊織「律子! そんなことより、あんたなら何か知ってるでしょ!? 私たちにも詳しく聞かせなさいよ!」
律子「へ?」
律子「……小鳥さん、もしかして」じと
小鳥「ご、ごめんなさい、律子さん、喋っちゃいました……」
律子「…………そうですか」
律子「……仕方ない、わね」
小鳥「うぅ、ごめんなさいぃ……」
やよい「!!」
律子「確かに876プロから、亜美をプロダクション移籍させないかっていう話が来てるわ」
響「ほ……本当なの? 本当に亜美、移籍しちゃうの?」
真美「…………」
律子「慌てないの。……小鳥さん、いったいどういう話し方したんですか」
響「で、でも……」
律子「あくまで今回のことは、話が来たっていうだけ」
律子「IUの予選を進んでいく中で、876プロとしても、戦力補強と話題作りを兼ねたプロデュース作戦の一環ってところかしらね」
美希「! 魔王エンジェルと、同じ……」
律子「そう。あの魔王エンジェルですら、IUを勝ち抜くために佐野美心というメンバー追加を行ったし」
律子「佐野さんの知名度もあるとはいえ、そのニュース性はかなりのものだった」
律子「まして、876プロの中学生部門は現状日高さんのソロユニット」
律子「技術面でも精神面でも、亜美とのデュオユニットを作るっていうのは私の目から見ても的確な狙いだと思うわ」
律子「だから慌てないの。亜美が大きな戦力っていうのは、当然私たちの方も同じでしょ」
雪歩「は、はい」
律子「これまで、ずっとこのメンバーでレッスンだって積んできてる。亜美抜きのフォーメーションなんて、そう多いものじゃない」
律子「誰がどう見たって、亜美はうちのプロダクションに必要なアイドル」
律子「それは、今雪歩が心配しているみたいに、765プロの全員が思っていることのはずよ。……違う?」
雪歩「!」
真「って、ことは……」
響「……はぁーっ。なーんだ……」
あずさ「良かったわね。真美ちゃん」ぽん
真美「う、うん。そう、だね……」
響「でも、なんかいいなあ亜美。そんなオファーが来るってことは、評価されてる証拠だもんな」
律子「あら、響の方がウチを出たいのかしら? 移籍先なら探してあげるけど……」
真「! そっか……。響がいなくなると、ボクらも寂しくなるね……」
響「だ、誰もそんなこと言ってないだろ! 真も悪乗りするなー!!」
雪歩「あ、あはは……」
千早「ちょっと、いいかしら」
律子「?」
千早「……だったら、何で亜美は、今日876プロの人と会っているの?」
律子「!」
千早「おかしく、ないかしら」
千早「本当に律子が言うように思っているのなら、話が来た時点で律子たちが断ってくれればいい話でしょう?」
律子「……千早」
千早「他のプロダクションの人と話をしてきてもいいだなんて、私だったら」
千早「……自分のプロダクションは本当に自分を必要としているのか、って。そんな考えになってしまいそうだけれど」
春香「……!」
律子「……はは。あなたの言う通りね、千早」
律子「正直なことを言わせてもらえば、私だって会ってほしくはないわ」
律子「でもこれはプロダクションの問題であると同時に、亜美個人の話でもある。亜美にだって、話を聞く権利はあるでしょ?」
千早「……。……何か、らしくないわね、律子。まるで、自分の意見ではないみたい」
千早「もしかしてそれは」
千早「あのプロデューサーの、考えなんじゃない?」
春香「!!」
律子「結論はともかくとして、移籍や合同ライブ、期間限定ユニットのような大きな話が来たら、できるだけ全部個人個人に伝える」
律子「相手側の話も、あなたたちが聞きたいと言えば許可する」
律子「これはあのプロデューサーが、このプロダクションに就任するときに出してきた条件の一つなの」
千早「……。…………」
律子「まあ、そういうことだから。知りたければ今度亜美に直接聞いてみなさい」
律子「それよりだいぶ時間押してしまってるんだから、いい加減レッスン始めるわよ! はい、準備準備!」
真「……どう、思う?」
千早「? 亜美……というか、プロデューサーのこと?」
真「……うん。まさか、本当に移籍してしまうことはないと思うけど……」
千早「……そうね。確かに律子の言うように、あちらの立場からすれば多大なメリットのある話だとは思うけれど」
真「こっちは、デメリットばかりだもんね。メリットがあるとすれば……」
響「……話題性と、契約金とか?」
伊織「……はっ。今更この貧乏プロダクションがお金に釣られるわけないでしょ」
伊織「それに、律子がああして移籍なんてありえないって言ってるんだから。心配することないんじゃない」
響「……」
やよい「……でも」
やよい「千早さんも言ってましたけど」
やよい「私だったらやっぱり、話を聞きに行く前に、「行かないで』って言ってほしいかなぁ」
伊織「……!」
一同「…………」
律子「あのひとなら、また会議室に籠っているみたいですよ。何か調べものがあるみたいで」
小鳥「高校生組は、次の相手が相手ですもんね……。毎日ああして籠っていますけど、大丈夫なんでしょうか」
律子「まあ……。寝てるのかもしれませんし」
小鳥「あはは……。確かに、あそこで寝泊まりするのが当たり前みたいになっちゃってますもんね」
~会議室~
P「……」
P「…………」
亜美「……え。みんな、知ってたの?」
響「知ってたの、じゃないぞー!! ぴよ子は口軽いんだからな!!」
小鳥「ご、ごめんなさい、亜美ちゃん……」
やよい「みんな、心配してたんだからね?」
亜美「ちぇ→。もう、後から言ってびっくりさせようと思ってたのに、台無しじゃんかー!」
真「あはは、残念だったね、亜美」
響「……で、どうだったのさ876プロは。いろんな話聞いてきたんでしょ?」
亜美「……うん。ケーヤクの話とか、よくわかんないことも多かったけど」
亜美「もし亜美が876プロに行ったら、愛ぴょんとユニットを組んでIUを目指してもらうって」
亜美「そんで、今からデュオを組むことになるわけだから、レッスンや仕事の量はソーゾーをゼッするものになるわ……。とかも言われたかな?」
亜美「……でも、亜美はやっぱり765プロのアイドルだから。愛ぴょんには悪いけど、やっぱり移籍なんて、あんまし考えられないかな」
伊織「……!」
響「はー……っ。何だよ亜美、驚かせるんじゃないぞ、もーっ!!」がしっ
亜美「あだだだ、ちょ、ひびきん! 痛いって! 首しまってるから!」
響「うりゃうりゃうりゃっ」ぐりぐりぐり
亜美「もーっ! だから黙ってたのに!」
響「ぴよ子のせいだぞ、この人騒がせーっ!」
小鳥「あはは……」
真美「…………」
亜美「……あ」
亜美「……ゴメンね、亜美。相談、しようかなってすっごくすっごく迷ったんだけど……」
真美「……ううん、いいよ亜美。……双子だからってなんでもかんでも話してたら、気持ち悪いっしょ?」
亜美「そ、そだよね! うんうん。もう亜美たちも一人前のオトナですからな→」
ぬっ
P「…………」
亜美「あれ、兄ちゃん?」
P「……双海。今日のレッスン終わったら、ちょっといいか?」
亜美「……へ?」
真美「…………!」
石川「まなみ。……今回の件、どう思う?」
まなみ「え。……っと。双海亜美ちゃんのことですか?」
石川「ええ」
まなみ「そう……ですね。叶いさえすれば、愛ちゃんにとっては願ってもない話だと思います」
まなみ「年齢の都合上、絵理ちゃんや涼さんとユニットを組めなかった愛ちゃんは、ソロで出場するしかなかった」
まなみ「良くも悪くも調子に波のある愛ちゃんですから……。それを補ってくれる存在はとても大きいものではないでしょうか」
石川「そうね。……じゃあ、向こうはこの話、受けると思う?」
まなみ「普通に考えたら……ありません、よね。亜美ちゃんが移籍したら、765プロの中学生組は大きな戦力ダウンです」
まなみ「……けど」
石川「けど?」
まなみ「……あのプロデューサーは、舞さんと同じで、行動の読めない。……その、変人、と聞いていますから。
まなみ「一体この一件をどう捉えているのか……」
春香「(……真と響ちゃんの調子がよさそうだから、Daは大丈夫)」
──Double appeal!!──Vo.↑Vi.↑
真「(……春香、ナイス調整!)」Da.↑
響「(流石だなぁ)」Da.↑
千早「(あとは、亜美と真美のどちらが思い出アピールを使ってくるか……?)」Vo.↑
伊織「(これなら、Daは捨てた方がいいのかしら……?)」
美希「(えいっ)」
──Triple appeal!!── Vo.↑ Da.↑ Vi.↑
伊織「(って、ちょっ……!)」
亜美「(さぁさぁ真美、どーんと、行っちゃっ)」
真美「(…………!)」きっ
──真美(Vi.) 思い出アピール SUCCESS!!──
亜美「(…………え)」
美希「(! ……ふーん?)」
伊織「(……ナイスっ)」
やよい「(すごいよ、真美!)」
亜美「(……あれ)」
雪歩「(……!)」
雪歩「(私も、負けない……!)」
──雪歩(Vi.) 思い出アピール SUCCESS!!──
亜美「(……真美って)
亜美「(こんな顔、してたっけ……)」
真「いやー、いい勝負だったね。危なかったよ」
響「最後の真美のアピール、すごかったな! みんな調子良さそうで、自分たちもうかうかしてられないぞ!」
真美「ふふん、油断してたっしょ! 真美のことを見くびってもらっては困りますな!」
真美「ね、亜美?」
亜美「…………」
真美「……亜美?」
亜美「……そ、そだよ! うちの真美をなめてもらっちゃ困るってもんですな→!」
雪歩「ほんとう、すごいコンビネーションだったよね……。春香ちゃんのダブルアピールが無かったら危なかった、かなぁ」
伊織「あのとき、アイツがDaを捨ててくれてたら……」
美希「……ふわぁふ」
伊織「……なんて言っても仕方ない、か。次はもう少しうまくやってみせるんだから、見てなさいよね!」
やよい「わ、私も、次はもーっと頑張りますーっ!」
P「…………」
P「……さて。高校生組の次のオーディションだけど」
P「その前に、話があるやつがいるってさ」
響「え?」
伊織「……。……」
やよい「伊織、ちゃん……?」
真「まさか、次のオーディションの相手の」
春香「……『雪月花』のこと?」
伊織「……ええ」
響「え、雪歩、知ってるの?」
雪歩「……うん。私、好きだったから。素敵な歌詞と、透明感のある歌声で……。そこまで有名になる前に、引退したって聞いてたけど」
伊織「……。多分、雪歩の知っているその雪月花で合ってるわ。もしかしたら他にも知っている人も居るんじゃないかと思う」
春香「…………」
伊織「……雪月花」
伊織「『魔王エンジェル』東豪寺麗華のかつての目標であり」
『リーダーの雪さんが自分で歌詞を書いててね、それでそれで、月さんも花さんもすごく素敵で……!』
『はいはい。その話は何回も聞いたってば』
伊織「憧れであり」
『聞いてよ伊織! 私たち幸運エンジェルが、あの雪月花とTV出演が決まったの! ふふん、一足お先に行っちゃうわね!』
『うるっさいわね! 私だってすぐに追いついて見せるんだから!』
伊織「そして……」
伊織「全てを変えてしまった原因」
『どうして……。私は、あなたの書いた詞に憧れて、ここまで……』
麗華「……みんなが憧れるアイドルなんて単なる虚像」
麗華「私たちがIUの頂点に立ってそれを証明する」
ともみ「……ん」
りん「……そだね」
麗華「……目指すのは、アイドルの支配者」
麗華「そのために『魔王エンジェル』は、ある」
美心「…………」
ともみ『麗華はもっと、自信持っていいと思う』
麗華『え? どうしたのよ、いきなり』
ともみ『……いや。今回の出演が決まってふと思ったんだ』
ともみ『家の力に頼らず、その歳で自立して自分の力だけで大変な芸能活動をやってきてさ』
ともみ『……ついに、夢の一つを叶えるところまできたんだから』
ともみ『もっと、自信を持っていいと思う』
麗華『ともみ……』
りん『そうそう、麗華ん家の権力だけで好き勝手にできないこともないのに』
りん『自分たちでバイトしたお金しか使わないしケチだしさー! 衣装とかもっと欲しいのにー!』
麗華『でも、そういうのってアンフェアじゃない?』
麗華『自分の力だけで苦労して手に入れた物が本当の力になるんだって』
麗華『私は……この人たちの歌から教わったから……』
りん『うは! 恥ずかしいセリフ禁止!』
ともみ『……ふふ』
麗華『……え』
麗華『なぜですか!? 番組の出演をキャンセルしてほしいって、それって……どういう……』
こつ、こつ、こつ
月『だーかーらー、わかんないかなぁ』
麗華『……あなたたちは、雪月花の……!』
花『まーぶっちゃけ、アンタらちょっと目障りなんだよね』
花『最近人気出ちゃってるみたいじゃない?』
月『ライバルには早めに消えてほしいわけよ』
りん『な……!』
雪『だからね……。雪の味方のエラーイ人にちょっとお願いしたの』
麗華『そんな……。そんなこと、どうして……』
麗華『私は……。あなたの書いた詞に憧れて、ここまで……』
花『はあ? どういう意味?』
花『は! 馬鹿だねー、そんなのコイツが自分で書くわけないじゃん! だいたいコイツ歌詞の意味もわかってないっつーの』
雪『やめてよ、それじゃアタシがまるで馬鹿みたいじゃない?』にやにや
ともみ『……!』
雪『ごめんなさいね……。でも、アイドルってこういうものでしょう?』
雪『利用できるものはなんでも利用して、ファンのお馬鹿で可哀想な人たちをどれだけ躍らせて儲けられるかってね』
花『ははっ』
月『ふふ』
あははははははっ……!
麗華『…………』
『……』
『ああ……』
『そう……』
『そういうルールで……やって、いいんだ』
真「……そんな、ことが」
雪歩「だから、表舞台にぱったり姿を現さなくなったんだね……」
伊織「……ええ。麗華の逆鱗に触れた雪月花は、それきり表立ってアイドル活動を行うことはなくなった」
伊織「だから私も、この世界から姿を消したものだと思っていたのだけど……」
律子「どうやら、細々と活動を続けていた、ってことみたいね。決して光の当たらない、陰の中で」
響「そ……それなら、どうして今になって……!?」
律子「IU……でしょうね。あれほどの大きな大会を勝ち上がっているとなれば、東豪寺グループも手を出しにくいんでしょう」
律子「決裂した直後であればどんな小さなオーディションでも潰していたのかもしれないけれど……」
律子「数年が経ってほとぼりが冷めた今、チェックが甘くなっていたという側面もあるのかしらね」
千早「!」
春香「プロデューサー、さん?」
P「おかしいとは思ってたんだ。このオーディション、一組だけアイドル歴も実績も段違いのグループが混ざってたから」
律子「目立たないよう、大きいオーディションを避けていた……。そういう、ことですか?」
P「だろーね」
P「そんで、もうひとつ。雪月花ってユニットは、このIUが始まってから、ほとんどのオーディションで1位を獲れていない」
伊織「……!」
P「アピールが噛み合わなかったり、最後にまくられたり、先行されたまま逃げ切られたり……」
P「要因は様々だろうけど、いわゆる『絶不調』ってやつだ」
雪歩「……。それも、やっぱり……」
P「IU3回戦も近づいてきた今、お前たちにとっては乗り越えなきゃいけないただの壁だ。そいつを忘れんなよ」
P「格上を倒せるまたとない機会だ。自分の名前を売ってやるくらいのつもりで、思いっきりやってこい」
伊織「……そうね。こればっかりはアンタに同意だわ」
伊織「別に、意識することなんてない。いつも通りのオーディションのライバル。……だけれど」
伊織「あんな過去があった以上」
伊織「彼女たちがアイドルを続けている背景には、きっと並々ならぬものがある。それだけは、知っておいていた方がいい。……そう、思ったの」
雪歩「…………」
ざわざわざわざわ
がやがやがやがや
真「す、すごい人だね……。これ、みんなジュピターのファン?」
律子「みたいね。まさか隣の会場で、突如ジュピターの新曲披露だなんて……」
響「あはは……。改めて、力の差を感じるな」
千早「それと、資金力の差、かしら?」
真「千早、それ笑えないよ……」
貴音「(力の差に、資金力の差……。勿論、それもあるのでしょうが)」
貴音「(このタイミングでの、この折衝は。もしかして、黒井社長の……?)」
春香「ま、そんなこと気にしてても仕方ないよ。みんな、準備しよう?」
響「そうだな。これだけ混雑してると、早めに準備しておいた方が良さそうだぞ」
真「うん、そうだね。行こっか、雪歩。……あれ」
響「?」
真「雪歩は……?」
雪歩「すぅーっ、はぁーっ」
雪歩「(……よ、よし)」
雪歩「…………あ、あの」
雪「ん? アタシ?」
雪歩「は、はい。あの……。雪月花の、雪さん、ですよね」
雪「……驚いた。アタシのことを知ってて、話しかけて来る人がいるとはね……」
雪「それも、オーディション相手のアイドルから」
雪歩「…………! 私のこと、知って……」
雪「そりゃまぁ、対戦相手くらいはね。……で?」
雪歩「私、その……。ファン、でしたから。貴方たちの」
雪「ふぅん。そりゃ、光栄ね。……でも」
雪「『でした』なんでしょう?」
雪歩「! え、あ、いや、その……」
雪「いいのよ。それが当然ってものだから。もう慣れたわ」
雪歩「ご、ごめんなさい……」
雪歩「……あ、あの」
雪歩「アイドル、続けていたんですね……?」
雪「見りゃ分かるでしょ。アンタ、アタシのこと馬鹿にしにきたわけ」
雪歩「ひぅぅっ……! そ、そうじゃ、なくて……」びくっ
雪「……はぁ。やり辛いわね」
雪「何。アンタみたいなのがアタシのところへ来るってことは」
雪「……アタシがアイドルを続けている理由でも聞きにきたとか?」
雪歩「…………っ」
雪歩「は、い」
雪「ふぅん。理由、ねぇ……」
雪「……………………」
雪「分からないわよ、そんなの」
雪歩「……え」
雪「分からないのよ。何もかも」
雪「その様子だと、私たちに何があったのかは知っているんでしょう?」
雪歩「…………」こくん
雪「……あの日、アタシたちは全てを失ったと思っていたから」
『あ、あの東豪寺グループの方だなんて知らなくて!』
『この業界で仕事をさせてもらえなかったら、アタシたち……!』
『黙れ』
『お前らが夢を語るな。恋を歌うな。くだらない偽物がアイドルを騙るな』
雪「それでも」ちらっ
雪歩「……?」びくっ
『ファン、でしたから。貴方たちの』
雪「…………」
雪「……どうやら、『何らかの何か』はこの手には残っていたらしくて」
雪「そして―――」
『楽しかったよ、雪月花。……でも』
『今度はもっと、決めた自分の意思を貫いているキミたちと歌いたいかな』
『トップオブトップの座まで。……アタシは一足先に、行ってるよ』
雪「―――あの日出会った閃光が、なんだったのか」
雪「それを探すために、アタシたちはアイドルを続けているのかもしれないわね」
雪歩「……!」
雪歩「ご、ごめんなさい……」
雪「いーのよ、謝らなくて。アタシが勝手に喋っただけなんだし」
雪「どーもアンタには、聞き上手な才能があるのかしら?」
雪歩「そ、そうでしょうか……?」
雪「知らない。適当に言っただけだし。……で、聞きたいことはこれで満足」
雪歩「は、はいっ。あの、ありがとうございました……!」
雪「ははっ。お礼なら言葉より、今日のオーディションで負けてくれれば嬉しいけど」
雪歩「え、いや、それは……!」
雪「じょーだん。そんなことできるタイプじゃなさそうだしね」
雪「んじゃ、またね。負けても文句言わないでよね」
P「いやー、ビックリした」
P「客席中ジュピター一色なんだもんよ。普通怯むよなー」
P「お前ら見たー?」
春香「…………」
伊織「見たも何も、いっつもこうよ。ジュピターと同じイベントのときはね。ってゆーか、遅刻よアンタ」
律子「ライブバトルオーディション……。普通の舞台裏でのオーディションとは違う点、ですね」
伊織「ま、そんなわけで完全アウェーだから。気が弱いとちょっと大変なのよね」
雪歩「…………ぅ」
P「俺が見た? って聞いたのはさ」
P「ジュピターのファンじゃなくて、ウチのファンのことだよ」
P「ジュピターのファンで埋め尽くされた会場の中で、怯むことなくお前らの応援に来てたよ」
P「……まー、ほとんどかき消されてはいたけど。それでも何か届くもんはあるよな」
P「……だろ?」
春香「……当たり前です」
P「今日の相手はほとんどが同ランク。その中で雪月花はランク的には格上だ」
P「相手が大人気ユニットだろうと、実力のかけ離れた相手だろうと、お前たちにはファンがいる」
P「低迷した時も、芽が出ないときも、CDを買い、ファンレターを書き、支えてくれたファンが」
P「忘れんな。俺たちはいつだってチャレンジャーだ」
P「挑戦しない奴はチャレンジャーとは言えねえ。勝利ってのは挑戦の先にあるもんだ」
P「果敢に挑んでオーディションの勝利をもぎ取ってこい!」
一同「はいっ!!!」
雪歩「(確かに、昔テレビやラジオで見ていたのとは違う感じだったけど)」
雪歩「(思ったより、普通の人だった……? 伊織ちゃんの話だと、もっと……)」
雪歩「(……いや、今はそんなこと、どうだっていい)」
雪歩「(勝つんだ。あの雪さんに)」
春香「……いくよ、みんな」
765プロ、ファイトーっ!
おーっ!!
流行
① Vi.★★★★★②Da.★★★③Vo.★★
:参加ユニット:
No.1…雪月花 RankB ImageLv.11
No.2…765Angels RankD ILv.10
No.3…暖色排除委員会 RankD ILv.9
No.4…プラズマ女子 RankD ILv.7
No.5…うなっじ~ズ RankE ILv.7
No.6…スロウンメイデン RankE ILv.6
響「(さてと、始まったわけだけど……)」Da.appeal +86p
花「(…………)」
──Double appeal!!── Da.+45pt Vo.+45pt
千早「(……! いきなり、ダブルアピール……)」Vo.appeal +91p
雪歩「(Da.と、Vo.……。雪月花のこの、感じ……。まさか)」Vi.appeal +86p
春香「(本当に、ミーティングでプロデューサーさんの言っていた通り……?)」Vi.appeal +82p
P『さて、考えてみよう』
P『雪月花はここのところ上手くいってない』
P『最後の最後で逆転されたり、追いつけるはずのオーディションを落としたり』
P『波に乗り切れないときのモワーッとした心境……。お前らならよっぽどわかるよな』
伊織『ぬ……。引っかかる言い方するわね……!』
P『はっ。雪月花だって、同じ人間だってことだよ』
P『しんどい状況から脱出したい……。一秒だって早くね』
P『少しでも楽になりたい。そう思ってる相手が何よりもまず欲しがるものは何か……』
雪歩『……』
響『……』
P『天海』
春香『……。……』
春香『……主導権』
P『その通り』
春香「(ここで、来る!)」
雪「(…………)」
──雪 思い出アピール Success!!──
Vi. +218p Da. +120p Vo. +121p
P「……よし」
P「準備できてんな、天海、菊地?」
春香「(……はい)」
真「(いくよ、春香!!)」
──春香 思い出アピール Success!!──
Vi. +205p Da. +120p Vo. +119p
──真 思い出アピール Success!!──
Vi. +115p Da. +221p Vo. +118p
月「(……な)」Vi.appeal +88p
花「(嘘……!?)」Da.appeal +82p
雪「(完全に、読まれていた……!?)」Vo.appeal +81p
雪「(……そうよね。アタシたちのこと知ってたわけだし、対策されるのは当然か)」Vi.appeal +89p
花「(どうすんの。今日も、2位狙い……?)」
月「(あんまり派手には動きたくないよねぇ)」Da.appeal +79p
響「(ptも、落ちてる……。自分たちのペースだ)」Da.appeal +89p
雪歩「(雪さん……?)」Vi.appeal +87p
雪「(……仕方ない。この審査は、ここまでよ)」Vi.appeal +90p
月「(……了解)」Vo.appeal +83p
Vi. 1位…765Angels (575p) 2位…雪月花(481p) 3位…プラズマ女子(451p)
Da. 1位…765Angels (516p) 2位…暖色排除委員会(408p) 3位…雪月花(326p)
Vo. 1位…765Angels (420p) 2位…雪月花(330p) 3位…うなっじ~ズ(320p)
総合:現在1位(★×10)
雪歩「(★10個……!)
春香「(プロデューサーさんの、言う通りだ)」
真「(雪月花は、絶不調……。おまけに、先手を取られても積極的に追いかけては来ていない)」
響「(これなら、確かに……?)」
P「雪月花が本調子じゃないのは、今日も続いているみたいだね」
P「ま、原因が原因だけにそう簡単に解決するもんじゃないとは思うけど」
P「勝負だかんね。そこを突いて、俺たちも勝たせてもらう」
小鳥「(プロデューサーさんは、本当にすごい)」
小鳥「(雪さんが開幕にボムを使うこと、そのptをフォローするために花さんがダブルアピールをすることまで読んでみせたし)」
小鳥「(その出鼻を挫いて思い出ボムを使えば、二の足を踏んで反撃しては来ないことも予想の通りだった)」
小鳥「(…………)」ごくり
小鳥「(相手のスキを見つけ出し、そして駄目な理由もつらつら言えてしまう……)」
小鳥「(この、人……)」
小鳥「(絶対昔、いじめっ子だったわね……)」どぉぉぉん
P「……なに?」
小鳥「い、いえ、別に……」
P「……!」
千早「何、このざわめき……?」
雪歩「ぅ、あ……」
伊織「っ……!」
P「へぇ」
律子「……!」
かつん、かつん
麗華「…………」
花「……ふん」
雪「『魔王』のお出ましというわけかしら?」
律子「(東豪寺麗華……。どうしてここに)」
伊織「(春香たちと雪月花が対戦することを知って、見に来たの……!?)」
麗華「……」
かつん
雪「……あのとき以来かしら? 随分久しぶりね」
麗華「……」
かつん
雪「長かったわ、ここまで。もう一度、お前の前に立つことができるこの日まで」
麗華「……」
かつん
雪「見てなさい。アタシたちは魔王エンジェルを倒して、ふたた」
すうっ―――
雪「(……は?)」
麗華「……」
かつん、かつん、かつん……
伊織「……な」
響「(う、わ……)」
雪歩「(……か)」
雪歩「(完全な、無視……!)」
P「……ん?」
麗華「……この前は、世話になったわね」
P「わざわざ挨拶に来たんだ?」
麗華「ええ。もう二度とあんな敗戦はしない。それだけ伝えに来たわ」
P「まあ、新メンバーも増えたみたいだし? 次やるときが楽しみだね」
麗華「言ってなさい。あの『才能』がウチにある限り、万に一つも次の負けはない」
P「才能、ねぇ……。まあ、いいけど」
P「それより」
P「あっちは、いいの?」
麗華「あっち? ……何を言っているのかわからないわね」
麗華「私が用があるのは、アイドルとしての好敵手だけよ」
麗華「アイドルですらないただの亡霊に、かける言葉なんてない」
P「……ふぅん」
真「(……東豪寺さんとプロデューサー、何話してたんだろう)」
雪歩「(喧嘩とか、しなければいいけど……)」
雪歩「(……。……。……!!?)」
「ふざ、けるな」
ぞくっ!!!
雪歩「(な、に。これ……!)」ぞぞぞっ
雪「花」
花「……うん」
雪「……月」
月「……ええ」
雪「叩き、潰す」
雪歩「(さっきのプレッシャー……。気のせいじゃない、よね)」Vi.appeal +87p
千早「(ここからが本番、かしら……? いや、でも、もう★10個も差がある)」Vo.appeal +93p
春香「(……よほどのことが無ければ、逆転なんてことは。でも、一応……)」
──Double appeal!!── Da.+42pt Vo.+42pt
真「(……? 春香……?)」Da.appeal +88p
花「(……雪)」Da.appeal +91p
月「(……アレ、行こうよ)」Vo.appeal +92p
雪「(……)Da.appeal +91p
雪「(…………)」
雪「(無視だろうと、罵倒だろうと、それなりの歓迎をされるのは仕方ない)」
雪「(……でも)」
ぞくっ!!!
雪歩「(ま、た、この寒気……!)」
花「(……っ!)」
──Double appeal!!── Vi.+46pt Da.+46pt
月「(……雪っ!)」
──Double appeal!!── Vi.+49pt Vo.+49pt
雪「(あのときのアタシたちと同じことをしておきながら、のうのうとアイドルを続けているお前たちが)」
雪「(……。アタシたちのこの3年を、何も知らないお前たちが)」
雪「(自分のことを棚に上げて、アタシたちのことを『もはやアイドルですらない』なんてなじるのは)」
雪「(我慢が、ならないっ……!!)」
──雪 思い出アピール Success!!──
Vi. +302p Da. +155p Vo. +156p
真「(……は)」
千早「(……な)」
小鳥「!!」
律子「な、なんですか、あの思い出アピール……」
律子「私たちの思い出アピールと、レベルが違う……」
小鳥「……雪、ちゃん」
P「……ま」
P「これが本来の実力なのかね」
P「(……あるいは)」
P「(それ以上かもしんないけど)」
響「(……ぐっ。マズいよ、このままじゃ……)」Da.appeal +84p
雪歩「(すご、い……)」Vi.appeal +82p
千早「(春香、どうする……?)」Vo.appeal +90p
春香「(……! 真、Daを……!)」Da.appeal +85p
真「(! オッケー!)」
──真 思い出アピール Success!!──
Vi. +119p Da. +212p Vo. +120p
花「(無駄、無駄)」Vo.appeal +91p
月「(……久しぶりに見たな。雪の本気)」Da.appeal +90p
雪「(……さあ。どうなるかしら?)」Vi.appeal +92p
Vi. 1位…雪月花(489p) 2位…うなっじ~ズ(445p) 3位…プラズマ女子(422p)
Da. 1位…765Angels (511p) 2位…雪月花(473p) 3位…プラズマ女子(398p)
Vo. 1位…雪月花(388p) 2位…765Angels (345p) 3位…スロウンメイデン(301p)
総合:現在1位(★×13)
春香「(なんとか、Daは……)」
雪歩「(春香ちゃんのおかげだ……。最初のダブルアピールと)」
真「(ボクへの指示がなかったら、完封されてた……。でも)」
響「(向こうは、まだボムを1つ残してる……!)」
花「……ま、久しぶりの割にはうまくいった方かな?」
月「そうね。ただ、Daは……」
雪「天海さんにやられた、ってところかしら。まあ、それくらいはやってもらわないとね」
花「ははっ」
雪「じゃあ、最後の審査に行きましょうか」
雪「……全開でやるわよ」
花「おうっ」
月「うん」
律子「ぷ、プロデューサー! 全然指示とか出してませんでしたけど、大丈夫なんですか!?」
P「ん? んー……。じゃあ、律子なら何て言うの?」
律子「へ? え、えっと……」
P「雪月花はミーティングの想定以上に実力を発揮してきてるから、それに負けないようがんばれー、ってか?」
律子「うぐ……」
P「ま、この局面。相手を揺さぶったりって考え方が無いでも無いけど」
P「あいつらは今振り回されてばかりで、全然持ち味を生かせてねえ。ただ、それも天海がフォローしてくれたおかげで少し落ち着いてきた」
P「あいつらが自分の力を発揮してくれれば、もう一度俺たちの時間が来るよ」
律子「…………!」
律子「(小細工を弄して勝ちに行くよりも、各々の個性を貫くことを選んだ……?)」
小鳥「……そう、ですよね。私たちはチャレンジャーなんですもん」
律子「!」
小鳥「個性豊かな子たちが、それぞれの魅力を生かして化学反応を起こすのが、765プロの長所です」
小鳥「そこを見失っていちゃ、勝てるものも勝てない……。ですよね、プロデューサーさん?」
P「…………」にっ
P「まあそれにウチ、突然作戦を変えて最後だけうまく逃げ切るとか、そんな器用なことできるレベルじゃないしね」
小鳥「あ、あはは……」
──Double appeal!!── Vi.+48pt Vo.+48pt
月「(……いくよ!)」
──Double appeal!!── Vi.+49pt Vo.+50pt
雪「(…………!)」
──雪 思い出アピール Success!!──
Vi. +288p Da. +141p Vo. +139p
春香「(……っ。いきなり……!!)」
雪歩「(すごい、雪さんの思い出アピール。びりびり、する……。心臓を掴んで、揺さぶられる、みたい……)」
千早「(殺気とすら感じられる、集中力)」Vo.appeal +92p
春香「(……これが)」Vi.appeal +87p
響「(魔王エンジェルの、ルーツ……)」Da.appeal +91p
真「(伊織の話と、全然違うっ……!)」Da.appeal +88p
雪歩「(一体何が、この人たちをここまで駆り立てるの……!?)」
花「(あの野郎が随分とご執心みたいな、765プロ)」Da.appeal +93p
月「(貴方たちを倒して)」Da.appeal +90p
雪「(私たちは、もっと上へ行く……!!)」
──Triple appeal!!── Vi.+41pt Da.+40pt Vo.+41pt
千早「(くっ……)」
雪歩「(やられっぱなしだ……。ずっとこの人に、好きに揺さぶられてる……)」
雪歩「(雪月花の、雪さん)」
雪歩「(この人は、すごい)」
雪歩「(技術も、そして、精神面も……。もともと私なんかが敵う相手じゃないのかもしれない)」
雪歩「(また、負けたら、私のせい……?)」
P「確かに今は崖っぷちの状態かもしれねえ」
P「こういう瀬戸際の状況でこそ、自分を信じろ」
P「ここまで色んな強敵とぶつかってきた……。お前の武器は何だ、萩原」
雪歩「(でも)」
雪歩「(どうせ敵わないのなら、なおさらだ……)」
雪歩「(当たって砕けて当然なら、私の持てる力全てをぶつけてやる……!)」
──Triple appeal!!── Vi.+40pt Da.+38pt Vo.+39pt
真「(! 雪歩の、この感じは……)」Vo.appeal +87p
春香「(私たちに、もうボムはない……。雪歩に、かける)」
──Double appeal!!── Da.+41pt Vo.+42pt
花「(まだ、諦めてない……?)」Da.appeal +92p
月「(へぇ)」Da.appeal +93p
千早「(私の、役割は……。あとは、萩原さん)」Vo.appeal +93p
雪歩「(…………!!)」
雪歩「(すぐそこに、『勝ち』があるんだ)」
雪歩「(私の、全部で……!!)」
──Triple appeal!!──
亜美「ねえ、真美」
真美「ん?」
亜美「ゆきぴょんたち、すごいね」
真美「……うん」
亜美「……ほんと、すごい」
真美「……亜美だって、すごいよ」
亜美「……え?」
真美「ううん。なんでもない」
Vi. 1位…雪月花(518p) 2位… スロウンメイデン(441p) 3位…うなっじ~ズ(403p)
Da. 1位…雪月花 (456p) 2位…プラズマ女子(374p) 3位…765Angels (301p)
Vo. 1位…765Angels (396p) 2位…雪月花 (371p) 3位…暖色排除委員会(301p)
総合:現在1位(★×15)
律子「こ、れは……」
千早「15対、15……」
P「引き分け、か」
雪「どーも。天海さん」
春香「……雪、さん」
雪「アンタにやられたわね。いい勝負だった、って言っていいのかしら?」
春香「……わかりません。こちらには課題の残るオーディションでしたし」
雪「……硬いわねぇ。ふふ、決着をつけるのは次当たることがあればってところかしらね」
春香「……ええ」
雪「それじゃあ、またね」
春香「(よく、言いますよ……。目が全く笑ってないじゃないですか)」
春香「(まるでどうやっても勝てたオーディションを、引き分けに終わらせてあげた……。そんな顔)」
春香「(確かに、そうだ……。10-0からの引き分け)」
雪歩「……」
響「……」
千早「……」
真「……っ」
春香「(皆の顔を見ても、わかる)」
春香「(私たちがしたのは、そういうオーディションだった……。内容的には、完敗なんだ)」
律子「実力の差を、見せつけられた形になりましたね」
P「……ん。まぁ、それが半分かな」
律子「……え。……半分?」
P「…………」
雪歩「(……今回は、大きなミスをしなかった)」
雪歩「(私にできることは、全てできたオーディションだったように、思うけど)」
雪歩「(まったく、嬉しくない……)」
雪歩「(全然、ダメダメだ。技術も、体力も、集中力も)」
雪歩「(結果的には、引き分けだったのかもしれないけど)」
雪歩「(私、まだまだだ……)」
雪歩「(このままじゃ、だめだ。もっともっと、みんなのために貢献できないと……)」
きゅっ
伊織「あれが、今の雪月花……」
やよい「……スゴかったね。あのアピール」
P「……あいつらとも、いずれIUでぶつかるわけか」
伊織「勝算、あるわけ?」
P「……ない」
伊織「!?」
P「……ことも、ない」
伊織「な……によ、それ! またアンタは紛らわしい言い方を……」
P「そもそもいつ当たるのかも分かんないわけだし、そんなこと今から考えたってしょうがないだろー」
伊織「そりゃ、そうだけど……」
P「ま」
P「今日のアイツらを見て」
やよい「……?」
P「俺もいろいろ忙しくしなきゃいけないかなって感じはするけどさ」
伊織「は……?」
P「さしあたっては、帰ってからだな、うん」
~数日後、事務所~
P「…………」
小鳥「…………」
律子「…………」
真美「…………」つかつかつか
P「……双海?」
真美「…………」
ぐぃぃぃっ
P「あだだだだっ、ちょっ、耳引っ張んなって、いだだっ」
小鳥「……真美、ちゃん?」
真美「どうして」
P「…………」
真美「…………どうしてッ!!」
真美「どうして真美のプリン食べちゃったのさ!!」
P「双海が自分で言ったんじゃん。『亜美のこと説得してくれたら、プリンあげてもいーよ』って」
真美「言ったけど!! 結局兄ちゃん、何にもしてないんでしょ! 亜美から聞いたんだからね!」
亜美「ま、まあまあ……。ほら、亜美の半分あげるから、ね?」
P「ほら、双海妹もこう言ってるんだし。いいじゃないか」
真美「むー! 納得いかーん!」
小鳥「とはいえ、良かったですね。亜美ちゃんが移籍、みたいなことにならなくて」
律子「そう、ですね……。一安心、と言っていいのかは分かりませんが」
小鳥「今のあの二人を見てると、離れ離れになるところなんて想像できませんもんね」
真美「むー……」
亜美「はい、真美。いーよ、先に食べて」
真美「亜美……。ほんとに、食べていいの? 悪徳兄ちゃん星人のせいなんだから、亜美の分貰わなくても」
亜美「しょーがないよ。兄ちゃんもまだまだ子供だから、ここはオトナな亜美たちがジョーホしてあげないと」
真美「……そだね。それならしょーがないっ!」
あははははっ
P「聞こえてるからなー。お前らは合宿の筋トレメニュー、倍にしてやるぞー」
亜美「えー!! それは横暴だよー!!」
真美「もとはと言えば兄ちゃんが悪いのにー!! 職権濫用ー!!」
ぶーぶー
伊織「はいはい。子供のケンカね……」
あずさ「合宿、するんですか?」
P「あれ。言ってなかったっけ」
貴音「わたくしは初耳ですが……」ちら
雪歩「」ぶんぶんぶん
伊織「……こう言ってるけど?」
P「……特に高校生組は前回のオーディションで分かっただろうけど。ここらでもうワンランク実力の底上げが必要だと思ってな」
千早「……」
春香「相変わらず、嫌な言い方しますね……」
P「そんなわけで、これからちょっと忙しくなるからな。しっかり体力つけとくよーに」
真「は、はい……」
真美「……ねえ、亜美」
亜美「?? プリンのことならもうい」
真美「……すごく迷ってたっしょ? 本当は」
亜美「え」
真美「……」
亜美「……うん」
真美「分かるよ。……亜美のことだもん」
亜美「……そっか」
真美「……」
亜美「……兄ちゃんがね。こう言ったんだ」
亜美『兄ちゃん。話ってやっぱり、移籍の……?』
P『……』
P『双海さ』
亜美『?』
P『この前、えこひいきがどうとか言ってたけど』
P『本当のところ、してるかしてないかで言ったら、してるよ』
亜美『……え!?』
P『双海亜美と双海真美じゃあ、似ているようで求められることもやってほしいことも全然違う』
P『この前の魔王エンジェルのときは、真美の方が適役だと思ったからそうしたんだ』
P『これがどういうことか分かるか?』
亜美『……ううん』
P『チームのために、お前の力が必要になるときも来るってことだ』
P『お前に今実力が無いからって後回しにしているわけじゃない』
P『これからやるために……中学生組が爆発するために、俺は双海亜美にはいろんなことを期待してるんだ』
P『そのために、違うことをしてもらってる。お前らは決して、2人でひとつなんかじゃない』
亜美『……!』
P『……だから。俺はお前と一緒にIUを勝ち抜いていきたいと思ってるし……。俺はもっとお前の能力を引き出せるとも思ってる』
P『でもお前がもし、今すぐ新しい環境に身を置きたいって言うなら。それはもうお前の問題だよ』
P『どちらにせよ大事なのは、お前が自分に正直でいること』
P『それを踏まえたうえで決めろ。じゃなきゃ、アイドルを楽しめないぜ?』
亜美『たの、しむ……』
P『……ま、話はそんだけ。後は双海が自分で決めることだ』
亜美『……』
亜美『…………』
亜美『……………………』
亜美「兄ちゃんにも、見透かされてたんだよね。亜美が迷ってること」
真美「……」
亜美「876プロに行って、新しい環境で。愛ぴょんと一緒に、大変だけど、新しいことにチャレンジして……」
亜美「……そんで、サイコーの舞台で、真美と対決する」
真美「!」
亜美「それも、すっごく面白そうだなって思ってたんだけど」
亜美「……やっぱり」
亜美「一番になったときには、隣に真美がいてほしーかんね!」にかっ
真美「亜美……。うん」
亜美「それにね。亜美、どっちかじゃなくって、『両方』選んじゃうことにしたんだ!」
真美「……へ? 両方?」
亜美「そ、両方。……だってさ」
亜美「IU優勝するようなすっごいアイドルになれば、愛ぴょんと一緒にステージに立つ夢だってすぐに叶えられちゃうと思うんだよね!」
真美「!!」
亜美「そのためにも亜美、絶対ゼッタイ一番になってやるかんね!」
真美「……あははっ。いいね、それ!」
亜美「でしょでしょ? 亜美ってやっぱり天才だと思うんだよね→!」
真美「ということは、その血を引いている真美も天才ってことになりますな?」
亜美「モチのロン! 当然っしょ!」
真美「よーし! 真美も頑張る! そんで目指すは」
がしっ
亜美&真美「「トップアイドル!!!」」
つづかない
P「おっさんはさ……俺にどうしてほしいの?」
高木「んん?」
P「オーディションを勝たせてほしい? 765プロが有名になればいい?」
P「ライブに客が入るようになればいい? トップアイドルを輩出すればいい?」
高木「君……」
P「言っとくけど、俺は神様じゃないから」
P「俺一人じゃ無理だよ、そんなん」
小鳥「そろそろ話しておかないといけないタイミングなのかもしれません」
小鳥「私と高木社長……。黒井社長。そして、舞さん」
小鳥「あの時の私たちに、何が起こったのかを」
小鳥「どうして私が今、この765プロに居るのかを」
小鳥『私は大丈夫ですよ。今が大事なとき、ですもんね』
高木『……すまない』
小鳥『大丈夫ですって。それに、私』
小鳥『歌ってさえいれば、すごく元気になれるんですから!』
高木『音無くん……。いや、やはりこのままではいけない。なんとかして、無理にでもスケジュールの調整を……』
小鳥『いいです、いいです』
小鳥『高木さんに、任せます』
舞『……あと、15分か。……待ってるわよ、小鳥』
黒井『何をしている、馬鹿め! 今日がどれだけ大切な日か分かっていないのか貴様は!』
高木『音無くんがまだ会場入りしていない? なぜ……?』
高木『……っ。どうして、ここにこれが……!』
小鳥『あ、れ』
小鳥『わたし、わからなくなっちゃった……』
小鳥『歌うのって、こんなに、辛かったっけ……』
小鳥『高木、さん……』
To be continued…?
876プロの思わぬ再登場を祝して
公式での新展開期待しています
タイトルはジャイキリアニメのOPから
お付き合いいただいた方がもしいればありがとうございました
html依頼出してきます
書くの久しぶりなんじゃない?
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