P「おはようございまーす、と」
千早「プロデューサー。おはようございます」
P「おっ。今日も早いな千早……って、どうかしたのか?
何か難しい顔をしてるみたいだけど」
千早「あ……いえ、なんでもありません。気にしないでください」
P「なんでもないってことはないだろ?
悩みがあるなら言ってくれ。俺はプロデューサーなんだからさ」
千早「……その、大したことではないんです。
ただ、ファンレターを読んでいて少し……」
千早の悪口が書かれていて、それを見てしまったのか!?」
千早「い、いえ、そんなことはありません。というか、
ファンレターと言っているのになぜアンチレターの話になるんですか」
P「そ、そうか、そうだよな。でもだとしたら何を考えていたんだ?」
千早「……私の歌について、ファンの皆さんは褒めてくださっているんです。
でも、そのほとんどがバラードについてのものばかりで……」
P「ああ……確かに千早のバラードはプロデューサーの俺から見ても最高だしな。
ファンの中にも胸を打たれる人は多いだろう」
千早「はい。それはとても喜ばしいことだとわかってはいるのですが……。
バラードばかりを褒められて、それで本当に最高の歌い手と言えるのでしょうか?」
例えば明るいポップな曲なんかも評価されたいと。そういうことなんだな?」
千早「流石はプロデューサーですね……その通りです」
P「よし、わかった。じゃあなんとかしてみよう」
千早「! 本当ですか! でもそんなに簡単に……?」
P「千早の要求に最大限答えるのが俺の仕事だよ。
一週間ほど時間をもらえるか? きっと力になってやるからさ」
千早「ありがとうございます、プロデューサー……!」
P「待たせたな千早! お前のためにこいつを準備してきたぞ!」
千早「! これは……CD、ですか?」
P「ああ。お前のために明るい歌を作ってもらったんだ」
千早「えっ? わ、私のためにわざわざ、ですか?」
P「とあるお笑いタレントに協力してもらってな。
俺もまだ聞いてはいないが、お笑いタレントが作った歌だ。
きっと底抜けに明るいはずだぞ!」
千早「なるほど……。その歌を歌いこなすことができれば、
歌い手として大きく成長できる……そういうことですね」
P「そういうことだ。というわけで早速聴いてみよう!」
(底抜けに明るいイントロ)
P「おお……流石だな。思ったとおりイントロから底抜けに明るいぞ」
千早「そうですね。気になるのは歌詞の方ですが……」
アルプス一万尺 子槍のう~えで ハイジがペータにヤられてる~♪
らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪
P「……ん?」
いえ、歌詞から言えば『アルプス一万尺』のアレンジですね。
確かにとてもコミカルな曲調で、歌い方も……」
P「え? あ、あぁうん」
アルプス一万尺 子槍のう~えで ユキちゃんがおじいさんにヤられてる~♪
らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪
千早「でも、この歌詞は一体……?
ハイジというのはひょっとすると、アルプスの少女ハイジのことでしょうか?
見たことはありませんが、確かペーターという人物も登場しますよね?」
P「あ、あぁ、確かにそうだな」
らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪
千早「だとすると、テーマはアルプスの少女ハイジ……。
では『やられてる』というのは一体、何を?
最後まで聞けばわかるのかしら……」
P「……」
アルプス一万尺 子槍のう~えで クララがロッテンマイヤーにヤられてる~♪
らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪
アルプス一万尺 子槍のう~えで チネッテがセバスチャンにヤられてる~♪
らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪
らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪
らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪
千早「……終わってしまったわ。結局、何をやっているのかは明かされないまま……。
プロデューサー、作詞者の方から何か聞いてはいませんか?」
P「い、いや、すまん。俺は何も……」
千早「そうですか……。どうやら、一筋縄ではいきそうにないですね」
P「……」
P(くっ……まさかこんな歌をよこされるとは完全に想定外だ……!)
ハイジたちは一体何を『やられてる』んだ? さっぱりわからん!)
千早「……プロデューサー? どうしたんですか、急に黙り込んで」
P「えっ? あ、あぁすまん、この歌詞の意味を考えててな……」
千早「やはり、『やられてる』という部分ですか?」
P「ああ。それに改めて考えてみれば、
アルプス一万尺の『子槍』ってのもよく知らないんだよな、俺」
千早「子槍というのは、日本アルプスの一部、槍ヶ岳にある岩のことだそうですよ」
P「! 知っているのか千早!」
P「つまりアルプス一万尺のアルプスとは、日本アルプスのことだったんだな……。
となると、アルプスの少女ハイジとは別に関係ないってことか」
千早「そうなりなすね。でも、そこはあくまで共通のイメージを持つものということで、
そう深く考える必要はないかと。それよりもやはり問題は、
登場人物たちが子槍の上で『何をしていたか』、という点ではないでしょうか」
P「ああ、そうだな……。
ハイジやペーターは、一体何をしていたのか……」
千早「まずは、アルプスの少女ハイジを全話視聴する必要がありそうですね。
原作があるなら原作も……。漫画やドラマなんかはあるのかしら……」
一応全てに目を通しておいた方が……」
P「お、おい千早。あまり無理はするなよ?
歌の中で明かされていないということは、
聞き手の想像に任せるということでもあるんだし、無理に正解を導く必要は……」
千早「聞き手としてならそれでいいでしょうけど、私は歌い手です。
自分なりの解釈をはっきりさせておかなければ、
中身のない歌になってしまいます。私はそんな歌、歌いたくありません」
P「千早……。そうだな、訂正しよう。
お前の納得のいくまでやってみろ。必要なものは俺が揃えてやるから!」
千早「はい……! ありがとうございます、プロデューサー!」
春香「それで、アニメと小説全部見たんだ……。すごいね、千早ちゃん」
千早「でもやっぱり何を『やられてる』のかは分からなかったわ。
名作ではあったのだけど……」
春香「……ねぇ千早ちゃん。もし良かったら、私にも協力させてくれないかな?」
千早「えっ?」
春香「千早ちゃん、最近あんまり寝てないでしょ?
でも無理しちゃダメだよって言っても、きっと頑張り続けちゃうだろうから……」
千早「春香……」
えへへ……ダメ、かな?」
千早「……いいの? あなたも最近は仕事も増えてきて忙しいでしょう?」
春香「千早ちゃんほどじゃないよ。それじゃ、決まりだね!
私も千早ちゃんと一緒に歌について考えるよ!」
千早「ありがとう、春香……。
じゃあ早速聞いてもらってもいいかしら? すぐに準備するわね」
春香「うん!」
千早「……という歌なんだけど。どうかしら?」
春香「なんていうか、すごく明るい歌だね!」
千早「……いえ、歌の感想じゃなくて……。
歌詞に登場した人物たちが何をしていたのか、春香はわかった?」
春香「えっ? あ、あぁそっか。えーっと……」
千早「……やっぱり、わからないわよね」
春香「ご、ごめんね」
自分の無力さに落ち込んでしまうかも知れないから」
春香「うーん……。でも本当に何なんだろうね。
子槍とかは千早ちゃんに教えてもらったからわかったけど、
ハイジたちはそんなところで何をして……」
亜美「この世界は、殺(や)るか殺(や)られるか……」
真美「うおぉーーー! タマ取ったらぁーーーーーっ!」
春香「わあっ!? あ、亜美、真美!?」
亜美「んっふっふ~。びっくりした?」
真美「ドッキリ大成功~!」
亜美「なんか歌が流れてた時から!
ハイジがペーターにやられてる~、って」
春香「結構初めの方だ! だったら挨拶してくれれば良かったのに……」
真美「いや~、面白そうな歌だったから聞き入っちゃって。
ところでそれ何の歌? もしかして、次のライブで歌う新曲!?」
亜美「ほんと!? わーい、めっちゃ楽しみー!」
春香「ち、違うよ、そうじゃなくて……」
千早「実はかくかくしかじかで……」
更にアマゾンの奥地で見た謎の人影の正体とは!?」
亜美「ハイジたちに恐ろしい魔の手が忍び寄る!
そして事件は迷宮入りしたのであった……」
千早「……アマゾンや魔の手は関係ないし、迷宮入りしてもらったら困るのだけど」
春香「もう、亜美、真美! 千早ちゃんは真剣に悩んでるんだからふざけないの!」
亜美「うあうあー! はるるんが怒ったー!」
真美「千早お姉ちゃんのこととなるとはるるんも真剣だからねぇ……」
真美「んっふっふ~。まぁそういうことにしといてあげるよ」
春香「ちょっと、信じてないでしょ! 別に千早ちゃんだからとかそんなんじゃ……」
亜美「そんなことより千早お姉ちゃん」
春香「流された!?」
千早「? どうかしたの、亜美」
亜美「んっふっふ~。千早お姉ちゃんのお悩み、
この美少女名探偵亜美&真美がまるっと解決してしんぜよう!」
ハイジたちが何をやってたのか!」
亜美「モチのロンよ!」
真美「はるるん、千早お姉ちゃん……。
さっき真美たちが登場したときの言葉を、よーく思い出してごらんなせい」
千早「えっと……確か、『この世界は殺るか殺られるか』。
『タマ取ったらぁー』……そう言っていたわよね?」
亜美「その通り! つまりハイジたちは……
一歩踏み違えれば体を貫く、無数の槍の上で命の奪い合い!
『子槍・デスマッチ』をしていたんだよ!」
春香「な、なんだってーーーー!?」
大体、子槍っていうのは槍じゃなくて岩のことだし!」
亜美「えっ、そうなの? はるるんものしりー! すごーい!」
春香「え、えっへん! そうでしょ! ……じゃなくて、
子槍もだけどそれ以上に命の奪い合いっていうのも明らかにおかしいよね!」
千早「よく考えて、亜美、真美。こんな明るい曲調で、
しかも最後は『みんなでやってて楽しい』と言っているのよ?
命の奪い合いなんて残虐なテーマなはずはないでしょう?」
真美「……確かに言われてみれば……」
真美「せっかく千早お姉ちゃんのこと、助けてあげられると思ってたのに……」
亜美「ごめんね、千早お姉ちゃん……」
春香(……二人とも真面目に考えてたんだ……)
千早「いいのよ。手伝ってくれようとする気持ちはとても嬉しいもの。
だから、その……もう一度、今度は一緒に考えましょう?」
亜美真美「「千早お姉ちゃん……!」」
千早「とは言っても、何か手がかりがないことには先に進みそうにないわね……」
真美「あっ、はいはーい! 真美に名案があるであります!」
亜美「なにっ!? 言ってみたまえ真美くん!」
真美「歌の終わりの方にさ、ヒツジが出てきたっしょ?
でも真美たちはヒツジのこととかよく分かんないから、
いおりんに聞いてみるっていうのはどーでしょうか!」
真美「でしょでしょ~! ねぇねぇどうかな千早お姉ちゃん!
いおりんもうすぐ来るはずだし、ヒツジのこと聞いてみようよ!」
千早「えっと……ちょっと待って、真美。
この歌にヒツジは出てこないわ。
ユキちゃんのことを言ってるのなら、ヒツジじゃなくてヤギよ」
春香「それに、ヒツジと伊織の関係もよく分からないんだけど……」
真美「ふえっ、ユキちゃん?
違うよ、真美が言ってるのはセバスチャンのことだよ」
真美「セバスチャンってヒツジのことでしょ? だよね、亜美?」
亜美「うん。セバスチャンと言えばヒツジ! 日本の常識だよね~」
春香「……それ、ヒツジじゃなくて執事じゃない?」
亜美真美「「えっ?」」
千早「あ……そういうことだったのね。
ヒツジと、執事を間違え……ぷっ、ふふっ……!
ふふっ、シツジ……ふ、ふふふっ、ヒツジのセバスチャン……ふふっ……!」
亜美「しかも千早お姉ちゃんに笑われた~!」
千早「ご、ごめんなさい……ふふっ……!」
春香「ち、千早ちゃん大丈夫?」
千早「え、えぇ……もう大丈夫。
少し意表を突かれてしまったけれど‥…
でも、水瀬さんの意見を聞くというのは確かにいいアイデアかも知れないわ」
亜美真美「「本当!?」」
想像はできても私たちにはそれが限界。
クララ、ロッテンマイヤー、チネッテ、セバスチャン……。
彼らのことを理解するために、水瀬さんの意見はきっと役に立つはずよ」
亜美「よーっし! そうと決まれば早速いおりんに電話を……」
ガチャッ
やよい「おはようございまーっす!」
伊織「おはよう。……って、あんたたち何してるの? 一箇所に集まって」
真美「いおりんナーイス! 流石、空気が読めるねぇ!」
亜美「うんうん、執事のことを分かっているだけはある!」
伊織「いや、空気を読むも何も全然話が見えないんだけど……」
やよい「? みんなで伊織ちゃんの話をしてたんですかー?」
千早「実は、かくかくしかじかで……」
色々聞いてみようっていう話になったんですね!」
伊織「ふーん……。ま、そういうことなら協力してあげてもいいわ。
私も忙しいんだけど真剣に悩んでるみたいだし……仕方なくよ、仕方なく!」
千早「あ……そうよね、水瀬さんも忙しいのだし……。
だったら、今の話は気にしないで。
私の勝手な事情に付き合わせるわけにはいかないから」
伊織「え!? そ、そんな、遠慮しなくてもいいのよ?」
千早「いえ、いいの。水瀬さんは、自分のことを優先して」
伊織「あーもう! あんたってそういうとこ相変わらずよね!
余計なことは考えなくていいから協力させなさーい!」
春香(あははっ……ほんと、相変わらずだよね伊織)
亜美(うんうん、まったくまったく)
真美(これぞまさにいおりんって感じですなぁ)
伊織「ちょっとあんたたち! 何にやにやしてるのよ!」
春香「な、なんでもないよ! なんでも!」
あんまり役には立てないかも知れないですけど、
普段お世話になってるお礼がしたいなーって!」
千早「高槻さん……ありがとう。それに水瀬さんも、本当にいいの?」
伊織「いいって言ってるでしょ! 大体、執事の居る生活を生かした意見を
言えるなんてこの伊織ちゃん以外には居ないものね。にひひっ!」
千早「……ありがとう、水瀬さん」
春香「よーし、じゃあ早速二人にも聞いてもらおう!
ミュージックスタート!」
千早「……という歌なの」
伊織「……千早、あんた本当にこんな歌を歌いたいの?
なんかよく分からないっていうか、ふざけてるようにしか聞こえないんだけど。
声もちょっと亜美真美っぽい感じだし」
亜美「あれっ? 今さらっとヒドイこと言われなかった?」
真美「おのれいおりん」
やよい「でも本当に明るい歌ですね! 私、この歌けっこー好きかもです!」
ふざけて聞こえるというのもわかるわ。
でも、だからこそ私はこの歌を歌いたいの……」
伊織「まぁあんたがそう言うなら別にいいんだけど……。
で、問題は歌詞の『やられてる』が何をやられてるのか、ってとこだったわよね」
やよい「伊織ちゃん、何か分かった?」
伊織「そうね。一つだけはっきり分かったことがあるわ」
春香「えっ、本当!?」
伊織「えぇ。この歌の歌詞を考えるのに、
私がお金持ちってことは別に役に立たないってことがね」
真美「そりゃないよいおりん……」
伊織「だってそうでしょ!? クララだのロッテンマイヤーだの、
名前しか出てきてないのに私の生活や体験をどう役立てろっていうのよ!」
亜美「うあうあー! 逆ギレだー!」
伊織「だいたい金持ちキャラ以外も色々やられてるんじゃない!
ユキちゃんとかヨーゼフに至っては人間ですらないじゃないの!
だったら響に聞いた方がまだマシよ!」
やよい「えっと……つまり、響さんと伊織ちゃんが揃えば謎が解けるかもってこと?」
伊織「え? いやそういう意味じゃ……」
響「はいさーい!」
貴音「おはようございます。今日もよき日和ですね」
亜美「噂をすれば!」
真美「ひびきんナーイス!」
響「えっ? な、なに?」
貴音「はて……? 何やらあったようですね。響が何か?」
千早「その、実はかくかくしかじかで……」
動物のことを考えるのは得意分野だぞ!
アルプスの少女ハイジも見たことあるし!」
伊織「本当にそれで分かればいいんだけどね……。
あんまり自信満々だと多分後悔するわよ」
貴音「なんと、あの伊織がそこまで言うとは。
どうやら余程の難題のようですね……。
響、これは心してかからねばなりませんよ」
響「そ、そうか。よーっし、それじゃあ気合入れていくぞ!
早速その明るい歌っていうのをかけてみて! 自分、頑張って考えるから!」
春香「うん! それじゃ、行くよ! ミュージックスタート!」
千早「……という歌なの。どうかしら……?」
響「ちょっと待ってね! 今考えるから……!」
真美「おおっ! ひびきんがいつにもまして真剣な様子!」
響「確かユキちゃんはヤギで……ヨーゼフはセントバーナード……」
やよい「な、なんだか本当の探偵さんみたいです。
こっちまでドキドキしてきたかも……!」
響「おじいさんっていうのは確か……。……そう、いぬ美もあの時……。
そうか、わかったぞ! 謎はすべて解けた!」
響「もちろん本当さー! 自分、嘘なんかつかないぞ!」
やよい「響さん、聞かせてください!
ユキちゃんやヨーゼフは何をされてたんですか!?」
響「ふっふっふ……。それはずばり!
ユキちゃんは毛並みの手入れで、ヨーゼフは餌をつまみ食いされてたんだ!」
千早「……いえ、それは少し違う気が……」
響「えっ?」
それぞれ同じと考えるのが自然のはず。
それは『ヨーゼフ“も”おじいさんに』という歌詞からわかるわ。
ユキちゃんが毛並みの手入れで
ヨーゼフが餌のつまみ食いというのは、歌詞に合っていない……」
響「うっ……た、確かに言われてみれば……」
千早「そもそも、毛並みの手入れはまだしも餌のつまみ食いというのは
明らかに歌のテーマに反するわ。つまみ食いをされて楽しいわけがないし、
それが原因でいぬ美とよく喧嘩をしている我那覇さんは、
そのことを分かっているはずよね……?」
響「い、いや、それはなんていうか……喧嘩するほど仲がいいって言うし……」
アニメを視聴しているならわかるはず。
さっき我那覇さんはアニメを見たと言っていたけれど、
流し見をしていたか、昔のことでよく覚えていないのでは……?」
響「……」
千早「仮にテーマに合わせて多少人物の性格を改変していたのだとしても、
そのテーマが楽しい歌である以上は、つまみ食いという行為は……」
響「……うっ、ぐすっ……」
春香「あわわわわっ! 千早ちゃんストップ! ストーップ!」
亜美「ひびきんが泣いてる! それ以上やめて!」
千早「え……あっ! わ、私もしかして、思ったことをそのまま口に……!」
真美「よしよし、泣いちゃダメだよひびきん」
やよい「ほら、千早さんも謝ってくれてますから……」
千早「ご、ごめんなさい、我那覇さん……。
せっかく一生懸命考えてくれたのに、頭ごなしに否定するようなことを……」
響「ぇぐっ……いいんだ。
自分の……ひぐっ、自分の考えが、足りなかったんだから……」
伊織「まったく……だから言ったのよ」
響「うん……。ごめん、泣いたりして……」
千早「こちらこそごめんなさい……」
伊織「はいはい、もうキリがないから謝るのはそこまでにしときなさい。
それよりどうするの? またふりだしに戻っちゃったわよ」
真美「ねぇねぇ、そう言ういおりんはなんか分かんないのー?」
伊織「えっ?」
真美「ひびきんは間違ってたけど頑張ってユキちゃんとヨーゼフのこと考えてくれたんだよ?」
亜美「そーだよ。これじゃあひびきんとユキちゃんとヨーゼフが浮かばれないっしょー?」
響はともかくなんでユキちゃんとヨーゼフにまで気を使わなきゃいけないのよ!」
やよい「あう……でも確かに、ユキちゃんとヨーゼフ可哀想かも……」
伊織「やよい!? 騙されないで! 全然関係ないわよユキちゃんとヨーゼフは!」
千早「高槻さんはとても純粋なのね……」
伊織「純粋過ぎよ! あのね、やよい! 今はユキちゃんがどうとかはどうでもいいの!
ユキちゃんなんかより優先しなきゃいけないことが……」
雪歩「……あ、あの、私、何かしちゃいましたか……?」
伊織「え!?」
真「……ついさっき来たばっかりだよ。
そしたら伊織の声が外まで聞こえてきて……」
雪歩「ゆ、雪歩はどうでもいいとか、あんなダメダメな雪歩はほっとけとか……。
ひんそーでちんちくりんでグズでのろまな雪歩は穴掘って埋まってればいいとか……」
真「どういうことだよ伊織! 雪歩が何をしたって言うんだ!」
伊織「何もしてないわよ! あんたたちの耳がおかしいだけよ!」
雪歩「ひうっ! ダメダメな雪歩は耳までダメダメだとか……!」
亜美「うあうあー! ゆきぴょん完全にネガティブモードだよー!」
千早「ち、違うのよ萩原さん! 実はかくかくしかじかで……!」
ごめんなさい、あんなダメダメな勘違いしちゃって……」
春香「い、いいよいいよ、気にしないで!」
伊織「だいたい、こういう時に雪歩を止めるのはあんたの役目でしょ、真!
なんであんたまで一緒になって勘違いしてるのよ!」
真「い、いや、ごめん。ボクは『ユキ』しか聞こえなかったんだけど、
雪歩がああ言ってたからつい……。
そ、それより歌っていうのを聞かせてよ! ボクたちも一緒に考えるからさ!」
伊織「また強引に話を逸らしたわね……。
ま、いいわ。確かに真なんかに文句言ってる時間も勿体無いし」
真「ぐっ……言い返せない。悪いのはこっちだからなぁ……」
春香「よし、じゃあミュージックスタート!」
千早「……という歌よ。どうかしら……?」
真「う、うーん。『やられてる』、か……。
しかも『みんなでやってて楽しい』となると……これは確かに難問だなぁ」
雪歩「……シャブ……」
やよい「えっ? 雪歩さん、今なんて?」
雪歩「あっ!? う、ううん! しゃぶしゃぶ!
山の上って寒いから、しゃぶしゃぶをすればみんな楽しいよね!」
千早「確かに、山頂でのしゃぶしゃぶは美味しいかも知れないわね。
でも、この歌詞がしゃぶしゃぶを表しているかと言われれば……」
雪歩「そ、そうだよね! アルプスの少女ハイジだもんね! そんなはずないもんね!」
真「みんなでやってて楽しい……。ゲームとかスポーツとか、かな?
いや、でもそれじゃあ『やられてる』なんて表現にはならないよね……」
千早「そう、そこが問題なの。楽しいことは色々あると思うのだけど、
動作の主体と受け手の双方で成り立つような、
そんな行為で『楽しい』となるとなかなか分からなくて……」
貴音「……一つ、よろしいでしょうか?
実は少し前の千早と響とのやり取りを聞いていて、思い付いたことがあるのですが」
響「え? 自分と千早の……?」
亜美「なになに、教えてお姫ちん!」
真美「お姫ちんならいい意見が出そうな気がする!」
ただここは一つ……根本に立ち返ってみてはいかがかと」
亜美「コンポンにたちかえる?」
貴音「はい。先ほど千早が『ゆきちゃんとよーぜふの受けた行為は同じ』
と言っていたように、言葉一つ取ってみても考える手がかりはあるはず。
ですから、例えば『やる』という日本語の持つ意味を、
今一度考え直してみるというのはいかがでしょうか?」
春香「お……おぉーー! それ、いいかも知れません!」
雪歩「さすが四条さんですぅ!」
伊織「なんかやっとまともな意見が出たって感じね」
千早「日本語から考え直す……盲点だったわ。
やってみる価値は十分以上ですね……!」
やよい「うっうー! 貴音さんすごいですー!」
貴音「ふふっ……ありがとうございます。
ですがお礼は、問題の解決を見てからですよ」
春香「そ、そうですね! じゃあ私、国語辞典持ってきます!
確か何冊か置いてあったはず!」
亜美「じゃあ亜美たちはスマホで調べてみるよ!」
真美「ゴーグル先生に聞いてみよー!」
雪歩「わー、春香ちゃん力持ち!」
伊織「じゃ、早速調べてみましょ。えーっと、『やる』、『やる』……」
千早「あったわ。『遣る』……そうよね、漢字で書けば……」
真「うわ。け、結構たくさん書いてあるなぁ……」
やよい「えっと、えっと……うう~、見つかりません~……」
伊織「貸しなさい、やよい。……ほら、あったわ。漢字は読める?」
貴音「では響もいんたーねっとで調べてみては?
俗語のようなものは、そちらの方が見つけやすいかも知れませんよ」
千早「なるほど……。ただ一言『やる』と言っても、本当に色々あるんですね。
国語辞典だけでもかなりの量があったのに、その上俗語となると……。
これまでも歌詞を考えることはありましたが、
こうして辞書に触れてみると、歌詞というものの奥深さが改めて分かります」
伊織「それはいいんだけど、肝心の『やられてる行為』はこれで分かるの?」
千早「そうね……。なんだか考えれば考えるほど、
難しさが分かっていくような気もするけれど、でも……」
亜美真美「「うあうあー!」」
春香「わあっ!? ど、どうしたの、いきなり大きな声出して……!」
亜美「エ、エッチな意味! 『やる』にエッチな意味があった!」
伊織「なっ……!?」
春香「……わ、わ~、ほんとだ……」
真「し、知らなかった。まさかこんな……」
雪歩「真ちゃんダメぇ! そんなの見ないでぇ~!」
伊織「やよい、あんたもダメよ! こっちに来なさい!」
やよい「う、うん。でも、あの歌って楽しいことをやってるんだよね?
エッチなことって楽しいのかな……?」
響「そんなはずないさー! エッチなことはエッチなだけだぞ!」
真美「もしかしたら楽しいのかもしんないよ!」
春香「え、えぇ~……?」
真美「だ、だから、このページを開いてみれば、
もうちょっとその辺のことがわかるかも……ごくり」
雪歩「だ、ダメだよ真美ちゃん!
それ絶対18歳未満お断りのページだよぉ!」
真美「ちょっとだけだから! さきっちょだけだから!」
雪歩「真美ちゃんやめてぇ~! ダメぇ~!」
それに忘れちゃったの?
亜美たちのスマホってそういうの見れないようになってんじゃん!」
真美「はっ……うあうあー! そうだったー!」
雪歩「ほっ、良かったぁ……」
真美「じゃあゆきぴょん代わりに見てよーっ!」
雪歩「う゛ぇええええええ!?」
亜美「その手があったか!」
真美「ちょっと見てくれるだけでいいから! 何もしないから!」
雪歩「ひぃ~~~ん! た、助けてぇ真ちゃ~~~ん!」
真「こ、こら亜美! 真美! 雪歩が嫌がってるだろ!
それに雪歩もまだ17歳じゃないか! そういうサイトは見れないよ!」
亜美「ぐぬぬ、そうだった……!」
真美「じゃあお姫ちん!」
貴音「?」
真美「……は、なんかいろんな意味でやめといた方がいいような気がする!」
亜美「くっ、お姫ちん以外はみんな17歳より下! もはやこれまでか……!」
ガチャッ
あずさ「おはようございます~」
亜美真美「キタ━(゚∀゚)━!」
あずさ「あら~? みんな集まってどうかしたの? 今日何かあったかしら~」
亜美「あずさお姉ちゃん、こっち来て! そんでこれ見て!」
伊織「だ、ダメよあずさ! 逃げて!」
あずさ「? 逃げてって、どうして……」
真美「あずさお姉ちゃん、これ検索してみて! あずさお姉ちゃんのスマホで!」
あずさ「え? これって……え? えぇ~っ!?」
春香「ほ、ほら、もう二人共! あずささんが困ってるでしょ! こっち来なさい!」
あずさ「あ、あらあら……」
千早「すみませんあずささん、困惑させてしまって。
実はかくかくしかじかで……」
春香「ついでに歌も流しちゃう!」ポチッ
でも、歌とエッチなことは関係ないんじゃないかしら……」
響「だからそう言ったんだけど、亜美と真美がどうしてもって……」
真美「そんなの分かんないじゃん!
エッチなこと何も知らないくせに知ったようなこと言わないで!」
響「べ、別に知らなくていいでしょ!」
亜美「でもでも、あずさお姉ちゃんは大人だし、せくちーだし、きっとわかるよね!
あずさ「ええっ!? そ、そんなことないわよ~。
私も、エッチなことなんて全然……」
真美「エッチなこととは全然関係ない人生を!?
まったくこれっぽっちも関わることなく!?」
あずさ「えっ、あの……。そ、それは……で、でも……」
伊織「いい加減にしなさぁーーーーいっ!
亜美も真美も、それからあずさも! もうこの話題はおしまいよ!
何回も言ってるけど、そんな汚らわしい歌のわけないでしょ!」
亜美「えー、でもー……」
伊織「でももヘチマもない!」
『みんなでやってて楽しい』という歌詞とは矛盾します」
やよい「どーきん……? どーきんって何ですか?」
貴音「共に寝ること……。転じて、男女が子を成す行為を……」
伊織「ちょっと! そんなの説明しなくていいわよ!」
やよい「? 男の人と女の人が一緒に寝たら子供ができるんですか?」
伊織「いいから!」
真「と、とにかく、『やる』の意味がそういうことっていうのは、
ちょっと考えづらいんじゃないかな……」
アルプスの少女ハイジに対する冒涜よ……考えられないわ」
雪歩「そ、そうですぅ! フケツですぅ!」
やよい「……あの……赤ちゃんを生むのって、そんなにダメなことなんですか……?」
春香「え? やよい……?」
やよい「私、妹や弟がいっぱい居て……。つい最近も、弟が一人生まれたんです!
親戚の人たちも、おめでとーって言ってくれました。
私も、お母さんのお腹が大きくなって、ここに私の弟が居るんだーって思ったら、
なんだかすっごく嬉しくて、幸せな気分になって……」
あずさ「やよいちゃん……」
どんな風に関係があるのかはわかりませんけど、
でも、赤ちゃんを作ってる時のお父さんとお母さんは、
すごく楽しかったんじゃないかって思うんです!
だって、新しい家族が増えるのってすごく幸せなことですよね? だから……!」
伊織「……そう、ね。私たちが間違ってたのかも知れないわ……」
真「そうだよ……子作りはイヤラシイことなんかじゃないんだ!
すごく幸せで、嬉しいことなんだよ……!」
響「そうか、いつの間にか穢れてたのは自分たちの方だったんだな……」
雪歩「で、でも、それだと、『みんなでやってて楽しい』っていうのは……」
貴音「……子を授かる行為を神聖なものであると捉え、
ある種の儀式として集団で行う……。
そういったことも、あるいはあるのかも知れません」
幸せな未来を思う歌……。確かに、これ以上の明るい歌はないのかも……」
真美「そうだったんだね……。真美、なんだか感動しちった」
亜美「エッチなことがどうとかって騒いでた自分が恥ずかちいよ……」
春香「……あれ? でもちょっと待って」
雪歩「? どうしたの、はるかちゃん」
春香「いや、思い出したんだけど……。
ユキちゃんとヨーゼフは、おじいさんにやられてたんだよね?」
一同「……あっ」
千早「……ダメね。やっと正解が見つかったと思ったけれど……」
やよい「人と動物は結婚できませんよね? じゃあ子供は……」
伊織「できるわけないでしょ!」
雪歩「……はふぅ」バタリ
真「ああっ!? ゆ、雪歩が急に倒れた!」
貴音「恐らく、想像してしまったのでしょう。犬との……」
春香「わあーっ! い、言わないで! 想像しちゃうから言わないでください!」
雪歩「うぅ、うぐぐ……!」
あずさ「ゆ、雪歩ちゃん……?」
雪雪雪歩歩歩「「「あばばばば……犬が……犬と人……あばばばば……」」」ガクガクガクガク
真美「めっちゃ振動してる!」
響「振動っていうか痙攣じゃないか!?」
真「な、何か分からないけど危ない気がする……!
ボク、雪歩を病院に連れて行ってくるよ!」
響「じ、自分も付いていくぞ! 二人で運び出そう!」
春香「わ、わかった! 雪歩をよろしくね二人共!」
ガチャッバタン!
貴音「生誕を祝う歌というのが最も有力な説かと思ったのですが……。
歌詞に動物が混ざっている以上、その可能性も消えてしまいました」
あずさ「あ、あの~、ごめんなさい。
私もそろそろお仕事の時間だから行かなくちゃ……」
亜美「あっ、ほんとだ! もうこんな時間!」
伊織「悪いわね、千早……。私たちはそろそろ失礼させてもらうわ」
あずさ「ごめんなさい。私なんて来たばっかりで、何の役に立てないままなのに……」
千早「い、いえ、そんな! 気にしないでください」
伊織「そうね。何の役にも立ててないのは私たちも全員同じだし」
伊織「悔しいけど事実だもの……。それじゃ、もう行くわね。
また時間のある時に一緒に考えましょ」
亜美「じゃあねみんな! っていうか真美ももうすぐレッスンじゃないの?
早く行かないと先生に怒られちゃうっぽいよ~」
真美「うあうあー、そうだった! 今日は遅刻できないんだー!
やよいっち、先に行ってるね!」
やよい「待って真美! 私もすぐ行くからー! あの、千早さん!
レッスン終わったら戻ってきますね! じゃあ行ってきまーっす!」
ガチャッバタン
春香「……み、みんなすごい勢いで出て行っちゃったね」
春香「えっ? ああ、本当だ!
ご、ごめんね千早ちゃん! 私と貴音さんももう行かなきゃ!」
千早「えぇ、行ってらっしゃい」
貴音「……千早。繰り返しになりますが、
行き詰まった時には一度根本に立ち返ってみると良いですよ。
これは日本語についてのみではありません」
千早「四条さん……。はい、アドバイスありがとうございます」
貴音「……では。参りましょう、春香」
春香「あ、はい! じゃあね、千早ちゃん。行ってきます!」
ガチャッバタン
千早(みんな、色々と協力してくれた……。今の時間では答えは出なかったけれど、
それでも何かヒントになるようなことはあったはず。
みんなの協力を無駄にしないために、私一人で少しでも……)
ガチャッ
P「おっ、千早。今一人なのか? さっき何人かとすれ違ったんだけど」
千早「! プロデューサー……」
P「な、なんだなんだ、そんなに思いつめた顔して。
やっぱりまだ例の歌の件が解決してないのか?」
それでもやっぱり、なかなか……」
P「そうか…‥。でも、明るい歌について考えるのに
そんな怒ったような顔をしてちゃ、ひらめくものもひらめかないぞ」
千早「それは……そうかも知れませんけど」
P「と、いうわけでだ。ほら、ちょっとした息抜きにこれでも読むといい」
千早「これは……ファンレター、ですか?」
P「ああ。チェック済みのやつがまた何通か置いてあったからな。
ファンの声援を見れば気分も明るくなるだろ?」
千早「……お気遣い、ありがとうございます。では早速読ませていただきます」
P「ああ。俺はこっちで仕事してるから読み終わったら声をかけてくれ」
千早「……」
P「……」
千早「……あの、プロデューサー」
P「! 早いな、もう読み終わったのか?」
千早「あ、いえ、まだです。ただ、その……。
本当にファンの方たちの声は励みになるなと、そう言いたくて、つい……」
P「……そうか。千早にそう言ってもらえるときっとファンの人たちも喜ぶよ」
そのファンレターをチェックしたのは音無さんだし、俺は内容知らないんだよな。
千早、ちょっと読んでみてくれないか? 今手に持ってるやつだけでいいからさ」
千早「えっ? はい、わかりました。えっと……
『先日のライブ、最高でした。やっぱりライブってすごくいいですね!』」
P「うんうん」
千早「『千早ちゃんの歌ってる姿』……す、『すごく可愛かったです!』」
P「わかる」
千早「……あ、あの、プロデューサー? まだ続けるんですか?
なんだか自画自賛しているようで、少し恥ずかしい気も……」
千早「はあ……。『ステージで歌う千早ちゃんはとても楽しそうで、
自然と僕まで笑顔になって一緒に歌ってしまいました』……」
P「わかるわかる」
千早「……楽しそうで、自然と、自分まで笑顔に……」
P「……ん? 千早?」
千早「っ……! プロデューサー! 私、わかりました!」
P「うわっ!? な、何が? 何が分かったって?」
P「えっ……ほ、本当か千早! でもどうして急に……」
千早「今のファンレターです! いえ、今のものに限りません。
これも、これにも、今まで頂いた手紙すべてに答えはあったんです!
動作の主体も受け手も、『みんなでやってて楽しい』こととは何だったのか!」
P「はっ……そ、そうか! つまりハイジたちが歌の中でやっていたことは……」
1.セックスか!
2.ライブか!
3.SMか!
千早「そうです、セック……え!?
な、何を言ってるんですか、プロデューサー!?」
P「あ、あれ、違ったか? セックスは楽しいって本で読んだんだけど……」
千早「ち、違います! 確かに、子供を作ることは素晴らしいことですし、
もしかしたら楽しいのかも知れません。
でもどうして今の会話の流れで、セッ……そ、そっちの方に話が行くんですか!」
P「あぁ、そうだよな……。何を言ってるんだ俺は……。
でもそれじゃあ、ハイジたちがやっていたことっていうのは結局なんだったんだ?」
千早「それは……ライブです! 彼らは子槍の上で歌を歌っていたんです!」
『アルペン踊りをさあ踊りましょ』であることからも違和感はない!」
千早「そうです、彼らはみんなで歌っていたんです。
歌い手も聞き手も楽しくなる歌を……!」
P「ああ……ついに自分の力で答えを出したんだな。やったな、千早……!」
千早「はい! やりました、プロデューサー……!」
美希「ふわぁ……あふぅ。何がやったのー……?」
P&千早「美希!?」
美希「んー……朝からずっとだよ」
千早「えっ!? じゃあ、私や春香が来たときからずっと……?」
美希「うん。そのあとにもみんな集まってきて、なんだか賑やかだったのー」
千早「お、起きてたなら声をかけてくれれば良かったのに……」
美希「起きてたわけじゃないよ。半分は起きてたけど、半分は寝てたの」
P「そんなイルカみたいな……」
あ、もしかして、明るい歌の歌詞に出てくる人たちが何をやってるか分かったから
これで明るい歌をちゃんと歌えるーって喜んでたとか?」
P「やっぱり起きてたんじゃねぇか!」
千早「え、えぇ、そうね。あなたの言うとおりよ」
美希「そっか。千早さん、おめでとうなの☆
でもミキ的には、別に歌詞の意味なんて分からなくても、
千早さんならすぐに明るい歌も歌えてたって思うな」
千早「え……?」
悩んでる時だって暗い顔じゃなかったし、声も表情も明るかったから、
みんなと一緒に居る時の気分になればいつでも明るい歌を歌えるはずなの!」
千早「……!」
美希「っていうか今だって、時々ミキよりも明るいカンジで……あふぅ。
起きてすぐ色々喋っちゃったから、なんかまた眠くなってきちゃったの。
というわけで、ミキもう寝るね。おやすみなさいなのー……」
P「……本当に寝てしまった。いやしかし、すごいな美希のやつ……」
千早「はい……。大切なことに、気付かされてしまいました」
P「そうか……!」
千早「私には、応援してくれるファンが居る。
力になってくれる、765プロの仲間達が居る……。
そのことに気付いた以上、明るい歌を歌えないなんてことはあり得ません!」
P「ああ、その通りだ!」
千早「私、歌いたいです! このあとみんなが帰ってきたら早速……!」
P「そうだな、聞かせてやれ! 如月千早のスペシャルミニライブの開催だ!」
・
・
(底抜けに明るいイントロ)
千早「アルプス一万尺 子槍のう~えで ハイジがペータに演られてる~♪」
仲間達「らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪」
千早「アルプス一万尺 子槍のう~えで ユキちゃんがおじいさんに演られてる~♪」
仲間達「らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪
千早「アルプス一万尺 子槍のう~えで ヨーゼフもおじいさんに演られてる~♪」
仲間達「らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪」
仲間達「らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪」
千早「アルプス一万尺 子槍のう~えで チネッテがセバスチャンに演られてる~♪」
仲間達「らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪」
千早「アルプス一万尺 子槍のう~えで みんなで演ってて楽しいな~♪」
仲間達「らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪
らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪」
春香「すっ……すごぉーい千早ちゃん!」
亜美「亜美、こんなに楽しい歌初めてだよー!」
響「なんか、体が勝手に動いちゃったぞ!」
真「うんうん! ボクなんてステップ踏んじゃってたよ!」
雪歩「わ、私も、自然にコーラスに参加しちゃってました……!」
真美「真美も超ノリノリになっちゃったっぽいよ!」
美希「さすが千早さんなの!」
千早「水瀬さん……。えぇ、遅くなってしまってごめんなさい。
それから四条さん。四条さんのアドバイスの意味も、ようやくわかりました……」
貴音「ふふっ……ですが、私の助言などなくとも
自力で答えに至ったようですね。見事です、千早」
やよい「千早さん、もう一回歌ってくださーいっ!」
あずさ「アンコールっ♪ アンコールぅっ♪」
\アンコール! アンコール!/
千早「みんな……。あの、プロデューサー!」
P「……あぁ。行ってこい! 思う存分、想いを届けてくるんだ!」
千早「はい!」
みんなも一緒に歌いましょう!」
アルプス一万尺 子槍のう~えで ハイジがペータに演られてる~♪
らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~♪
アルプス一万尺 子槍のう~えで ユキちゃんがおじいさんに演られてる~♪
らーららら らららら らーららら ららら♪
らーららら らららら ららららら~……
小鳥&律子(……これってセックスの歌なんじゃ……)
おしまい
乙
それをネタにした動画「明るい歌を歌って欲しかった・・・」シリーズの
「千早に明るい歌を歌って欲しかった・・・」です
付き合ってくれた人ありがとう、お疲れ様でした
やっぱセックスだよな
けどこーゆーの大好き
つ
0 件のコメント :
コメントを投稿