百合子「ふむふむ……色々な分岐ルートがあるんだあ……まるでゲームの世界みたい」
百合子「パワースポットでもあるなんて……ハッ、これは物語が始まりそうな予感っ!」
ガチャッ
P「お疲れさまでーす」
百合子「あっ、プロデューサーさん。お疲れさまですっ」
P「おっ、今日は百合子だけか。何を読んでたんだ?」
百合子「観光ガイド本です。今から出かけられる場所を探していて……」
七尾百合子(15) Vi
http://i.imgur.com/9xXGiZI.jpg
http://i.imgur.com/fa9M0SY.jpg
百合子「ええと……プロデューサーさんのお仕事が、今日なら忙しくないって聞いたんです」
P「ん? 確かに仕事は一段落したけど」
百合子「それで、良かったら一緒にお出かけできないかなあ……なんて」
P「えっ、俺と!?」
百合子「は、はい……」
P(わざわざ俺と出かける計画を立ててくれてたのか……)
百合子「だ、ダメでしょうか……」
P(なにこの子、めちゃくちゃ可愛い)
百合子「本当ですかっ!? すっごく嬉しいです!」
P「で、どこへ行く予定なんだ?」
百合子「ここなんてどうかな、と思っていたところなんですけど……」
P「おー、高尾山か。有名な登山スポットだよな」
百合子「行ったことありますか?」
P「俺はないな。まあ、東京で生活してるから名前はよく聞くけど」
百合子「私も行ったことはないんですけど、麗花さんがいい所だって言ってました」
百合子「ええ、この本によると気軽に登れる山だそうです」
P「ほー、結構楽しそうだなあ」
百合子「そうですよね! ねっ、連れてってください!」
P「体力を使うけど平気か? 仕事や学校で疲れてるだろ?」
百合子「全く問題ないですっ。日々のレッスンで鍛えてますからね!」
P「よし、そういうことなら出かけるか」
百合子「わーいっ、プロデューサーさんとお出かけ~」
百合子「ここが終焉の地……ついに辿り着いたのね……」
P「いや、京王線の終着駅ってだけだから」
百合子「もうっ、乗ってくれたっていいじゃないですか」
P「俺が乗ったらツッコミ役がいなくなるだろ」
百合子「二人で妄想の世界に浸れたら楽しいと思うんだけどなあ……」
P「周りから見たら痛すぎる!」
百合子(あっ、でも私の妄想に流されないクールなプロデューサーさんも素敵かも……)
P「さ、時間もないし行くぞー」
百合子「そうみたいですね。お土産屋さんがたくさん並んでますよ」
P「観光地って感じだなー。」
百合子「人も結構いますね、もう下山してきた人なのかなあ」
P「ニュースで見たんだけど、紅葉の季節はものすごく賑わうみたいだぞ」
百合子「そうなんですか?」
P「うん、それはもうライブの物販みたいに」
百合子「そ、それは大変そうです……」
P「今はまだ寒い季節だし人出は少ない方みたいだ」
百合子「私はこのくらいの方が落ち着けていいなあ」
P「えーと……ケーブルカー乗り場だってさ」
百合子「あっちはリフト乗り場みたいです。なぜ登山に来てリフト……?」
P「スキーリフトみたいなものか」
百合子「へぇー、山の中腹まで行けるんだあ」
P「普通の登山道もあるけど、どうする?」
百合子「……ここはあえて厳しい道です! 歩いて登りましょう!」
P「そうだよな。登山に来たんだし」
P「おー、高い木がびっしり生えてる。良い森林浴になりそう」
百合子「空気が澄んでいて気持ちいいですっ」
P「楽しそうなのはいいけど、はしゃぎすぎると後で疲れが来るぞー」
百合子「わかってますよっ」
P「もっとゆっくり行こう」
百合子「ええ、でも思ったより道は整備されてますし、歩きやすいです」
P「そうだな、幅は車が通れるくらい……って、本当に車が下りてきたぞ!?」
百合子「山頂にもお店があるって本に書いてありましたよ。荷物を運んでるんじゃないですか?」
P「へえー、本当に観光地なんだな」
P「大学のサークルかな。いいなあ、楽しそうで」
百合子「サークル……私には未知の世界ですっ。部活みたいなものですよね?」
P「うーん、部活よりゆるい集まりって感じかな。例外はあるけど」
百合子「なんだか面白そうですっ」
P「大学生になった百合子かー。きっと美人になってるだろうな」
百合子「ええっ!? もう……からかわないでくださいよっ」
P(本気なんだけどなあ……)
P「そうなんだ」
百合子「とは言っても、小説の中でしか知らないんですけどね」
P「きっと楽しいよ。高校までに比べて自由度も高いし」
百合子「でも、まだずっと先の話かあ……」
P「へー、ずっと先って感じるのか。若い頃って体感時間が長いもんなあ」
百合子「いやいや、プロデューサーさんもまだまだ若いじゃないですか」
P「それでも中学、高校時代と今じゃ全然違うんだよ……百合子も大人になったらわかるよ……」
百合子「もうっ、そうやって一人だけ大人ぶってー」
P「ごめんごめん」
P「おー、かなり人が集まってるな」
百合子「そうですね、ケーブルカーの降り場がこの近くみたいです」
P「ということは……今、ちょうど山の中腹あたりか」
百合子「思っていたより時間がかかりませんでしたね」
P「麓から頂上まで、長く見積もっても二時間かからないってところだな」
百合子「すごい景色だなあ……天空の城から見下ろした世界ってこんな感じなんでしょうね!」
P「ふふっ、そうかもな」
P(楽しそうな百合子を見てると、来て良かったって思えるなあ……)
P「どちらへ行くか、百合子が選んでいいぞ?」
百合子「分岐ルートってドキドキしますね! まさに緑の迷宮……」
P「ほとんどの人はまっすぐ進むみたいだ。薬王院ってお寺がある方だな」
百合子「むむっ……どちらへ進むべきか……」
P「もう片方のルートは人がほとんどいないみたいだけど?」
百合子「決めましたっ! ここはあえて人のいない方ですっ!」
P「よし、じゃあそっちに行こう」
P「うわっ、すぐ横が崖じゃないか」
百合子「……もっとくっつかないと危ないですよ」
P「そうだな。ちょっと失礼」
百合子(わわっ……プロデューサーさんがすぐ近くに……!)
P「これ以上道が狭くなったら縦に並んで進もうな」
百合子「はーい」
P「全く人がいないんだなあ。みんな薬王院の方へ行くのか」
百合子「高尾山の目玉はそっちですからね。お寺には天狗像がいくつかあるそうですよ」
P「へえー、面白そうじゃん」
百合子「私も天狗信仰って興味あります!」
百合子「えっと……人が多い場所ってあまり得意じゃなくて」
P「あー、なるほどね」
百合子(プロデューサーさんと二人っきりになりたかったから、なんて言えない……)
P「どうしたんだ? 急に黙り込んじゃって」
百合子「い、いえ……。あの、好きな人との距離が近いと緊張しますよね?」
P「そりゃそうだろ」
百合子「えっと、私が言いたいことって……伝わっちゃってたりします?」
P「言いたいこと……? あっ、お腹でも空いたのか?」
百合子「どうしてそーなるんですかっ!」
P「だって事務所で会ってからから何も食べてないし」
百合子(ど、鈍感すぎる……!!)
百合子「うわあ、吊り橋ですか!? これで谷を渡るんですねっ!」
P「結構高いなー」
百合子「記念写真撮りましょうよ、プロデューサーさん」
P「ああ、いいよ。じゃ、スマホ貸して」
百合子「はーい……って、何言ってるんですか! 二人で写るんですよっ」
P「俺も? まあ、ここなら人もいないしな」
百合子「もっと寄ってくれないと入らないですよ。……はい、オッケーです!」
P(これもいい思い出か)
百合子「えへへっ、後でプロデューサーさんにも送りますね」
P「ああ、頼むよ。ありがとう」
P「おっ、景色が開けたぞ。これはついに……」
百合子「頂上に着いたんですねっ。やったーっ!!」
P「頑張って歩いた分だけ達成感があるな~。いい気分だ」
百合子「見てください、あっちに富士山が見えるんですって」
P「ここから見えるのか!? すごいな」
百合子「あー、風が気持ちいい……」
P「ベンチがあるし座って休もう。飲み物でも買ってくるよ」
百合子「ありがとうございますっ。あの、そう言えば……」
P「うん、どうした?」
P「ええっ!? わざわざ作ってきてくれたのか?」
百合子「はいっ。良かったら一緒に食べましょう」
P「うわー、嬉しいな。それに、前に作ってくれた時より腕が上がってるみたいだ」
百合子「えへへ、具材にも凝ってみました」
P「じゃあ、遠慮なくいただきます!」
百合子「私も、いただきまーすっ」
P「これはハムチーズか。……うん、おいしいよ!」
百合子「そんなに喜んでくれるなんて……。たくさん食べてくださいね」
P「おう、ありがとう」
百合子「もうっ、言い過ぎですよ~。でも、また作ってきますね」
P「ああ、楽しみにしてる」
百合子「それにしても、お腹が一杯になったら和んじゃいますよねー……」
P「風が気持ちいいなあ」
百合子「もう少しゆっくりしていきましょうか。私、何だか眠くて」
P「うん、一度休んじゃうとまた歩くのって面倒なんだよなあ」
百合子「あ、それわかります。あと十分はこのままでいたいかも……」
P「そう言えば、今何時だっけ?」
百合子「時計ありますよ。どうぞ」
P「おっ、ありがと……って、もうこんな時間!? そろそろ下山しないと!」
P「そりゃそうだけど、余裕は持っておいた方がいいだろ」
百合子「確かにそうですね……。麗花さんも早めに下山するのが大事って話してました」
P「登山道に明かりなんてないもんな」
百合子「ちゃんと装備があれば別なんですけどね」
P「じゃ、そろそろ行こう。忘れ物ないよな?」
百合子「ええ、大丈夫ですっ。ところで、下りはこっちのコースにしませんか?」
P「まだ通ってない道があるんだな。よし、そうするか」
百合子「うわー、こっちのコースも坂は急ですねー」
P「うん。下りって意外と足腰に来るんだよなあ……」
百合子「ゆっくり進めばいいですよ」
P「そうだな。景色でも楽しみながら」
百合子「あっ、見てください! あの枝の先、鳥がとまってますよっ」
P「本当だ。すごく綺麗な色してる」
百合子「そうですね。それにとっても可愛い……。何ていう名前なんだろう」
P「うーん、俺も野鳥には詳しくないからなあ」
P「おいおい、危ないからあんまり身を乗り出すなよ。転ぶぞ」
百合子「うーん、もう少しで……きゃっ!」
P「あっ、危ない!」
ドターンッ!
P「いたた……。大丈夫か、百合子?」
百合子「は、はい……。あ、あの……そ、そこは触っちゃダメですっ……!」
P「えっ?」
P(気がついたら、俺の右手が百合子の胸のあたりに――)
百合子「ぷ、プロデューサーさん……ダメっ……」
P「うわあっ、ご、ごめん!」
百合子「い、いえ……事故なんで……」
P「それより百合子、怪我はなかったか?」
百合子「は、はいっ。問題ないです」
P「それなら良かったよ。じゃあ、進もうか」
百合子「そうですね。――っ!」
P「ん? どうかしたのか?」
百合子「な、なんでもないです! さあ、行きましょう!」
P「なあ百合子、もう少し早く歩けないか?」
百合子「す、すいませんっ。ちょっと疲れちゃって」
P「そうは言っても、さっきから遅すぎるぞ」
百合子「ですよね……」
P「ペースを合わせたいところだけど、このままじゃ日が落ちちゃうからさ」
百合子「ううっ、ごめんなさい」
P「…………んっ?」
百合子「どうしたんですか? そんなに私を見つめて」
P「百合子、ちょっと足を見せなさい」
P「いいから、見せなさい!」
百合子「ひうっ! は、はい……」
百合子(うう……プロデューサーさんが怒ってる……)
P「うーん、腫れてはないみたいだな。でも、痛いんだろ?」
百合子「……はい」
P「さっき転んだ時だな?」
百合子「だけど、大丈夫ですっ! ゆっくり歩けばそんなに痛くは――」
P「怪我をしたならそう言わなきゃダメだろ!」
百合子「ひいっ……! ご、ごめんなさいっ……ごめんなさい……!」
P(まずい……ちょっと強く言いすぎたかな)
百合子「い、いえ……私も、黙っててごめんなさい」
P「いや、もういいんだ。どのくらい痛む?」
百合子「えっと、平らな場所を歩くには問題ないんですけど……」
P「この山道を下るのは無理か……」
P(幸い軽い怪我みたいだし、麓にさえ着ければ安心なんだけどな)
百合子「ううっ、このままじゃ日が暮れちゃいます……」
P「仕方ないな。ほら、乗ってくれ」
百合子「えっ?」
百合子「で、でもっ。悪いですよ……」
P「そんなこと言ってる場合じゃないだろ。もう日が暮れるぞ」
百合子「それはそうですけど……」
P「ほら、早く」
百合子「じゃ、じゃあ……。し、失礼しますっ」
P「よっ、と。しっかり掴まっててくれよ?」
百合子「は、はひっ」
百合子(私、プロデューサーさんに抱きついちゃってる……は、恥ずかしすぎる……)
百合子「プロデューサーさん、重くないですか?」
P「うん、むしろ軽すぎるくらいだよ。華奢で心配になるぞ」
百合子「そんなことないですよ、シアターの皆はもっとスタイルいいですし」
P「いやいや、スタイルがいいのは百合子だってそうだろ」
百合子「お世辞でも褒めてくれると嬉しいです……えへへ」
P「全くお世辞じゃないんだけどね……」
P(今も、背中に胸が当たってて気が気じゃないし)
P「そうなのか?」
百合子「プロデューサーさんって本の中の王子様みたいです!」
P「王子様ねえ……。そう言えば前に、お姫様抱っこされて階段をのぼるのが憧れって言ってたよな」
百合子「あっ、覚えててくれたんですか!?」
P「うん、あれは百合子の誕生日だった」
百合子「実際にはおんぶされて高尾山を下っているなんて」
P「ははは、ロマンスの欠片もないよな……」
百合子「そんなことないですっ、プロデューサーさんと一緒なら!」
P「それ、前にも言ってくれたよな。どういう意味かは分からないけど」
百合子「どういう意味か、知りたいですか……?」
P「ん? まあ、そうだな」
百合子「つ、つまり……私、プロデューサーさんのことが――――」
P「あっ! 明かりが見えるぞ!」
百合子「……へっ?」
P「もう少しで山の麓みたいだ。よかった~、どうにか日が落ちる前に辿り着けるな!」
百合子「あっ……。は、はいっ……!」
百合子(わ、私ったら勢いで何を言おうとしてたの!? は、恥ずかしすぎる……!)
P「よーし、到着だ。百合子、下ろすぞ」
百合子「はいっ、平地ならちゃんと歩けます」
P「よっと……。ふぅ、遅い時間になっちゃったなー」
百合子「すいません、ずっと背負ってもらっちゃって……」
P「それはもういいって。ところで、さっきは何を言おうとしてたんだ?」
百合子「えっ? 何のことですか?」
P「『私、プロデューサーさんのことが――』って。俺がそこで話を遮っちゃったからさ」
百合子「うわーっ! そ、そのことはもういいんですっ! 忘れてくださいーっ!!」
P「そ、そうなのか……?」
P(急に顔を真っ赤にして取り乱すなんて、どうしたんだろう……?)
P「俺も、色々あったけどすごく楽しかったよ」
百合子「私、改めて感じました。プロデューサーさんはすっごく頼りになる人だなあ、って」
P「そ、そうか……?」
百合子「お仕事でもプライベートでもそれは同じなんです」
P「そんなに頼ってもらえるなら、俺も嬉しいよ」
百合子「これからも、私が転びそうになった時は助けてくれますか……?」
P「もちろんだよ。俺は百合子のプロデューサーだからな」
百合子「えへへっ、これからもよろしくお願いします。プロデューサーさんっ!」
おわり
☆過去作
【ミリマスSS】百合子「耳をすませば」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1446205360/
【ミリマスSS】P「星のカービィSDXです」このみ「懐かしいわね」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447411397/
【ミリマスSS】このみ「マリオカート?」P「SFC版です」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454672425/
乙でした
ヤマノススメみたいなのかと思った
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